公開日付:2017.04.05
2016年春より資金繰りへの懸念が広がる
3月27日に東京地裁より破産手続き開始決定を受けた格安旅行業者の(株)てるみくらぶ(TSR企業コード:296263001、渋谷区、山田千賀子社長)。東京商工リサーチには、2016年春から同社の信用力に対する問い合わせが増えていた。「一部の支払いが遅延しているのではないか」など日を追うごとに照会内容が具体化し、資金繰りへの懸念が広がっていた。
こうした中、東京商工リサーチ情報本部(以下、情報本部)は3月23日、てるみくらぶに重大な異変が生じたとの一報を入手し、現地に走った。
3月23日から破産申請した27日までの現地取材をルポする。
3月23日、木曜日
経営に重大な異変が生じたと第一報が入った夕刻。情報本部内で取材体制を再確認し、てるみくらぶ本社に出向く。
【19時00分】
取材班が本社に到着。週末の若者で賑わう青山の本社ビル周辺や本社6階入口は、顧客や取引業者、マスコミの姿はない。本社受付は開いており、社員や取引先とは違った雰囲気を漂わす2名のスーツ姿の男性が受付待合席に座り、てるみくらぶの関係者を待っている。
【19時10分】
取材班が受付の呼び鈴を鳴らすとすぐに男性社員が応対。「何か変わったことがないか」と尋ねると、「特にない」と返答。責任者との面談を申し込むが、「責任者は不在」と繰り返し、コメントが取れない。その場にそぐわない先ほどのスーツ姿の男性たちの存在を除くと、社内に格別不審な点はみられない。ただ、社員は名刺を受取っても交換には応じず、足早に部屋に戻ったのが気にかかる。
【19時30分】
本社の入る別フロアからテナントの従業員が続々と帰途につく。てるみくらぶの入居する6階を路上から視認し、受付以外の事務所全体の明かりが点いていることを確認。
【19時50分】
本社ビルの関係者に聞くと、20時にビル全体の警備システムが作動するという。最終チェックのため改めて6階受付を訪問。先ほどの訪問時に受付に座っていた男性2名はそのままの姿勢で座っている。話しかけてもコメントは得られない。無口だ。てるみくらぶが応対している様子もない。そうしているうちに警備システムが稼働する時間となり、現地取材を終了する。
飛び交う情報
3月24日、金曜日
【23日深夜~24日早朝】
23日夜に、「てるみくらぶが旅行申込者に予約キャンセルの電話をかけた」、「航空券決済システムで支払いをデフォルトした」など、情報が次々に入る。
【7時10分】
てるみくらぶ本社ビル周辺、本社6階入口に顧客の姿はなく、受付のドアも閉まっている。
【7時45分】
出勤し入室しようとする従業員へ取材。「会社に来たばかりでわからない」とコメント。その直後に大きな鞄や紙袋を持った4人が入室する。
【8時00分】
出社する社員以外に目立った動きはない。てるみくらぶのホームページを確認し、社長や幹部の顔写真を再確認する。
【8時30分】
営業開始時間になり、入口ドアに「臨時休業」の紙が張り出される。その直後、山田社長と幹部が顔を出すが、取材の問いかけに応じずエレベータに乗り込んだ。
【8時35分】
取引業者が訪れる。てるみくらぶ担当者とアポイントが取れているのか受付前で待っている。
【9時00分】
幹部が取材に応じ、「航空券が発券できていないのではないか」との問いに、「今日出発のお客様で航空チケットが発券されている方もいる。ただ、情報が錯そうしており、状況確認中。特に会社として決定事項は今のところなく、正式コメントはない」と回答。「先ほど入室したのは弁護士ではないか」と尋ねると、「社内に誰が来ているのか把握していない」と返答する。
【9時00分】
従業員用入口から複数名が出入りするが、いずれもコメントは得られず。従業員用入口に施錠。
【9時30分】荷物の受け取りのみ行う。
【10時00分】
従業員の出入りはあるが、会社に目立った動きはない。
【11時30分】
取引先らしき人物が、複数名で来社。一部はアポイントを取っているようで、社内に入れる取引先もいた。
【12時00分】
3月24日に出発予定の顧客が来社。「航空会社にチケット確認したが、てるみくらぶのシステムエラーで、発券できない可能性があるとのメールが届いた」と話す。事情説明のためか、顧客を事務所内に通す。
【12時30分】
本社ビルにマスコミ、取引業者、顧客が集まり始める。約20名ほどか。取引先には、「担当があとで対応する」と答えるが、担当者が外に出てくることはなかった。この頃を境に、てるみくらぶは取引先、マスコミに本社での対面取材に一切応じなくなる。
【12時45分】
てるみくらぶの福岡支店に、東京商工リサーチ福岡支社の情報担当者が訪問。ドアに鍵がかかり、営業している様子はない。
【13時00分】
てるみくらぶ本社への電話取材に、「発券システムのトラブルで止まっていると聞いている。原因までは聞かされていない」と回答する。電話が繋がることを確認する
放置されたままの新聞
【13時30分】
てるみくらぶの名古屋支店に東京商工リサーチ名古屋支社の情報担当者が訪問。福岡と同じようにドアは閉まり、営業している様子はない。入口ドアには新聞が差し込まれたまま。朝から入室者がいないことをうかがわせている。
【13時45分】
取引先のランドオペレーターが訪問。「旅行者の送迎を受託しているが、一部発券できない状態で会社の方針を確認にきた」と話す。だが、てるみくらぶの本社では対応せず。別のランドオペレーターは「出国先で旅行客が路頭に迷う可能性もある。早く出発を止めるか決定しないといけない」と訴える。
【15時00分】
てるみくらぶの大阪サロンを東京商工リサーチ関西支社の情報担当者が確認するが、ドアが閉まり営業している様子はない。
【15時00分】
てるみくらぶ本社前。取引先やマスコミが続々と詰めかけ30名近くに膨らむ。ビル入口で待っていると、取引先の一部が従業員用入口に押しかけ「対応しろ」と押し問答に。混乱が激しくなる。
【16時00分】
てるみくらぶから電話やメールで、当日出発予定の一部申込者に「発券システムがトラブルで止まり、今晩の出発はできない」と一方的に通知したため、顧客が本社に押しかけ始める。集まった顧客にも扉を開けない。
【16時50分】
本社ビル外の非常用階段を利用して従業員が出入りしていることを確認。複数名に取材を試みたが、一切ノーコメント。本社入口には対応を待つ顧客、取引先、マスコミが集まっており、非常階段を利用するしかなくなっているようだ。
【17時20分】
情報本部ではこれまでの状況や過去の取材データから、旅行申し込みの被害者は数万人に及び社会的にも影響が大きいと判断。てるみくらぶが「臨時休業」との事実関係のみでマスコミへリリース。同時に自社サイトなどに記事をアップする。
非常階段で出入りする従業員
【18時00分】
てるみくらぶ本社。非常用階段を利用して従業員複数名が出入りする。だが、非常用出入口を通過せず外に出ている様子。本社ビル裏や隣接ビルの出入口を確認するが、本社ビルと繋がる出入口は確認できない。隣接ビルの塀を乗り越え、外に出入りしているのか。
【18時40分】
本社ビルの非常用階段に山田社長、幹部らしき複数名が到着。取材にはノーコメントで、非常用階段を6階まで登り、本社非常口の開錠を待つ。
【19時00分】
本社ビルの管理会社が6階の入り口を閉鎖。取引先やマスコミは本社ビルを離れる。その後、大きな動きはない。
(後編に続く)
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