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【社会】

包容社会 分断を超えて(下) 外国人排除では社会回らぬ

日本で暮らす外国人労働者との共生について語る国松孝次さん=東京都千代田区で

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◇元警察庁長官・国松孝次さん

 日本の未来への投資として、定住外国人を積極的に受け入れることを求める提言を二度、政府に提出しました。本末転倒して、働くことが主になっている「働く留学生たち」の存在によって私たちの社会が回っている現実がある。正面から見据えて議論しよう、ということです。

 現在、日本で働いている技能実習生や留学生の現状は、日本にいる間に単純労働で使い、あとはお引き取り願うという形。安い労働力、というとらえ方しかしていない。日本に定住する外国人を、生活者としてどう処遇していくのか、方針を明らかにするべきです。

 スイス大使のとき、現地で「インテグレーション(統合)」という理念に触れました。スイスの外国人法に「外国人が経済的、社会的、文化的な生活に参加することを可能にすること」とある。同化政策とも違い、「母国語はだめ」などとは言わない。

 日本にはスイスのような受け入れの理念、基本方針がありません。取り締まり当局だけが張り切ると「何をやっているんだ。かわいそうな外国人をいじめるな」という批判が出る。警察のやり方が悪いのかもしれないが、どんな人を入れて、どんな人を出すか、政府が方針を決めなければいけない。

 兵庫県の城崎温泉では、お客さんはいるが、お客さんが楽しみにしているカニを捕る漁師が足りないという。インドネシアから漁師を連れてこないと、漁が成り立たない。暑い国の生まれの人が、寒い所で働いています。

 日本人として基本的に考え方を変えないといけないのは「来させてやって、働かせてやっている」という上から目線です。外国人はプライドがあるし、相手を選ぶし、他の国も人手不足で悩んでいる。そういう国は、受け入れ態勢を整えている。上から目線でいたら、いつの間にか、外国人の方から「日本なんて行くもんか」となりますよ。

 元警察官の私が、外国人の受け入れを推進せよと言うと違和感を持たれる人もいるでしょうが、野放図に受け入れろと言っているわけではありません。コントロールされた形で受け入れる。現実問題として、外国人の働き手がいなくなったら、日本は人口減をまかなえないのだから。今のうちに覚悟を持って取り組まないと手遅れになる。外国人を排除し、日本人だけでやっていくと言っているだけでは、話は進みません。 (聞き手・大野孝志)

<くにまつ・たかじ> 1937年、浜松市生まれ。61年に警察庁入庁。刑事局長などを歴任後、94年、長官に就任。95年3月、自宅前で狙撃され、一時危篤状態になる重傷を負うが奇跡的に生還。99年にスイス大使。ドクターヘリの普及や犯罪被害者支援に尽力している。

 

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