グルービジョンズ
ピチカート・ファイブ、スチャダラパー等の映像制作で有名なデザイナー・ユニット、groovisions。
インターネットではかっこいいSHOCK WAVEを使ったサイトで人気の彼らが、この2月から東京に拠点を移した。
祝・東京進出という事で、自称チャッピー(groovisionsの代表作である女の子の着せ替え人形キャラクター)の友達のわたし(AKO)と、groovisionsをアートという点から攻めてみたいというchibashiがインタビューをしました。
chibashi:まず最初に。この間、東京での初活動というか、展覧会をやりましたよね。いかがでしたか?
はら(groovisions):面白かったですよ。
アコ:ロケット(会場となった表参道にあるギャラリー)はどうでした?
イトウ(groovisions):良かったですよ。
はら:良かったですね。ほとんどぶっつけ本番だったんで、色々トラブルはあったけど・・・
イトウ:でも他のギャラリーに比べたらやりやすい方じゃない?
はら:そうだね。人とか場所とかそういう環境がすごく良かった。
イトウ:そこそこ人も集まったしね。
chibashi:グッズの販売もしてたって聞きましたけど。
イトウ:してました。
chibashi:今後、groovisionsグッズの販売ってあるんですか?
アコ:なかなか手に入れられなくなりますよね、そういえば。イベントもそんなにやらなくなっちゃうし。
イトウ:そうだね。
chibashi:イベントって?
アコ:2ヵ月に1回くらい、京都のメトロっていうクラブでgroovisionsがイベントをやってたんですよ。あちこちからDJを呼んで、groovisionsの映像作品を大きなスクリーンで映してっていう。結構いろんな所から人が集まって面白かった。
chibashi:じゃ、今まではメトロでやっていたイベントで販売してたんですか?
アコ:そうそう。小さいものはポストカードとかワッペンとか。大きなものだとライトボックスとか(笑)。10万円でしたっけ?あのライトボックス。
はら:ホントは15万円(笑)。
アコ:今まで買った人っているんですか?
イトウ:それがねー、2台売れてるんですよ(笑)
はら:いや、3台だよ。
アコ:ええ!?すごい!
chibashi:ポストカードとライトボックスの中間にはどんなものがあるんですか?
アコ:Tシャツもあるし・・・ボタンダウンシャツもありましたよね。
イトウ:そうだね。
chibashi:シャツっていうのはシャツ自体を作ったんですか?
イトウ:そうです。
アコ:すごく可愛いんですよ。3サイズあるんですけど、採寸の時にgroovisionsの若手メンバーのサイズを図ったらしくて、タグの所にS・M・Lじゃなくて「サワダ」「ヤマノ」「スミオカ」って、採寸のモデルになった人の名前が書いてあるの(笑)。
イトウ:そうそう(笑)
アコ:現在のgroovisionsのメンバーは、イトウさん、斎藤さん、はらさん。それから若手メンバーの、ヤマノさん、サワダさん、スミオカさんですよね。その他にも何人か出たり入ったりしてるって聞いてますけど、今はこの6人?
イトウ:そうですね。
chibashi:ベースを京都から東京に移したのはどうしてなんですか?
イトウ:東京はアレなんですよ。もともと東京での仕事が多かったんで往復がしんどくなって・・・っていうのが一番大きな理由です。
アコ:groovisionsってもともとはグルーブクエストっていうユニットだったんですよね?
イトウ:うん、そうなんだけど、ややこしいんですよ。最初はグルーブクエストっていうDJチームからはじまって・・・。
アコ:え?最初はDJチームだったんですか?
イトウ:そうなんですよ。でもそれは僕ではなくて、他の人が中心だったんだけど。
chibashi:じゃ、groovisionsっていうのは?
はら:それは最初小西さんの命名で・・
イトウ:groovisions BYグルーブクエストっていう名前を小西さんが使いだして。それでいつのまにかケツが取れたっていう。
はら:最初は斎藤さんとイトウさんの2人だけで。ピチカートのツアーの時の映像を作ってたんですよね。
イトウ:そうだね。
アコ:斎藤さんとイトウさんってどうやって知り合ったんですか?
イトウ:クラブです(笑)
アコ:クラブ(笑)。やっぱりメトロで?
イトウ:サウンドインポッシブルの田中知之さんっていう人が主催のイベントで。
アコ:田中さんって京都の人なんですよね、そういえば。
イトウ:そうそう。彼と松山さんと僕でクラブでイベントをやってたりして、それで映画に詳しいことで有名だった斎藤さんを呼ぼうっていう話になって。その時に田中さんに斎藤さんを紹介してもらったんです。
chibashi:田中さんっていうのはどういう方なんですか?
イトウ:サウンドインポッシブルとかファンタスティックプラスティックマシーンとか音楽ユニットをやってる人。
アコ:DJもやってるけど、リミックスとかもやってますよね?
イトウさん達と仲のいい松山さんっていう人と2人で京都で活動していた人です。今は東京で小西さんのイベントでDJやったりしてますよね。
ちなみにその松山さんというのは、メトロでやってたgroovisionsのイベントには欠かせない素晴らしい超モンドDJなんですよ。みんな、踊るに踊れないし笑っていいのかいけないのか分からなくて、フロアに何とも言えない緊張感がただようっていう(笑)。
イトウ:(笑)。
chibashi:その頃作っていた映像ってどんな感じだったんですか?
イトウ:今と一緒ですよ。
chibashi:じゃ、ディレクターとかガシガシ使って?
イトウ:そうです。
chibashi:イトウさんがマックを使いだしたのは?
イトウ:90年くらいから。最初はプラスの前のダイナマックとかそういうのを使ってました。ムービーをやりだしたのは91年くらいから。IIfx使って。
chibashi:その時ディレクターってもうあったんですか?
イトウ:ありましたよ。その頃はバージョン3.0くらい。
アコ:その時動画を扱えるソフトってディレクターしかなかったとか?
イトウ:ですね。クイックタイムがまだなかったから。
アコ:ディレクターを一番最初に触ったときって感動しますよね。ああ、動く!みたいな(笑)
イトウ:したした(笑)!
はら:簡単だしね。
chibashi:グラフィックはやっぱりフォトショップで作っているんですか?
イトウ:いや、イラストレータの方がメインです。フォトショップって重いじゃないですか。
アコ:うん、groovisionsの作品って本当にイラストレータが上手いなーていう感じ。
イトウ:イラストレータは楽だからね。部品に分けられるから、パーツとパーツを組み合わせて色々なものが作れるでしょ。でも僕らって全然コンピュータ詳しくないんですよ(笑)
はら:詳しくない(笑)。
イトウ:分かるところと分からないところの差が激しくありますね。目的に合わせて必要だったら調べるし、分からなかったら諦める(笑)。
「いーや、やめとこう」とか(笑)。
はら:みんなマニュアル読まないから、それぞれやり方が違うしね。
chibashi:このインタビューの事前にアコさんと打ち合わせをしたんですけど、その時にgroovisionsはだらっとしている要に見えても実はコンセプチャルなんじゃないかっていう話が出て・・・
イトウ:そんなことないっすよ(笑)
アコ:ピチカートの新しいCDのブックレットのパラパラ漫画にしてもそうなんですけど、本来静止しているグラフィックが動かすっていうgroovisionsの手法っていうかコンセプトって一貫してあると思うんですけど。
イトウ:うーん・・・。逆にいったら、訴えかけたい事ってなにもないんですよ、一切。形式だけこだわりたいんであって。
はら:さっきの話にもどるけど、フォトショップよりも楽だからイラストレータを使っている。そうなるとやっぱりどうしてもああいうグラフィックになっちゃう。無理してフォトショップですごい絵を作るんだったら、やっぱりイラストレータでっていう。(笑)
アコ:1つの作品を作っていく段階で「ここのパーツは僕が作るからあとはやって」みたいな共同作業っていうのはあるんですか?
イトウ:ありますね。コンピュータ使うと、「コンピュータ=自分の世界」って自己投影しがちなんだけど、パーツとか小さいユニットごとで考えていくと、割と共同作業がしやすいっていうか。共通のフォーマットの上で好きなものを作っていくっていう、それが面白いと思う。
だから、ばーんと核があってそれを出したいから何かをやるんではなくて、あんまりそういうのがないからとにかくいろいろなパーツを組み合わせて、そこで何か出来たらいいなと。楽でいいし、合理的だしね(笑)。
はら:僕たちって中心がないんですよね。
イトウ:ただ好き嫌いはあるけどね。
アコ:好き嫌いの面でもメンバー全員が一緒の感覚なんですか?
イトウ:それはそうでもないですね。
はら:とくに若いメンバーはそれぞれ違ってるみたいだね。
イトウ:うん。
chibashi:制作の前にブレストってするんですか?
イトウ:やるときとやらないときがある。ただ、インターネットに進出していくときは、ものすごくミーティングをした。
アコ:ふぅ〜ん。そうだったんですか。
イトウ:キチガイみたいにやって。デモを作って反省して、とかもやった(笑)。
アコ:イトウさんが「楽しそうだからやってみよう」とかって始めたわけじゃなかったんですね(笑)。
イトウ:かなり真面目でしたよ。僕たちってこんなに真面目だっけ、と思ったくらい(笑)。
アコ:ウェブへの進出って結果的に成功したと思うんですけど、ウェブを作ってからこういうことがあったっていう具体例はありますか?
イトウ:うーん、ウェブの仕事が一時期増えたね。
アコ:ウェブって遊びでは何やっても楽しいけど、仕事でやるとこれほど面倒臭いものはないですよね。達成感もないし。
イトウ:そうだね、そうだね。なんか中途半端な気がするよね。
アコ:終わりがないんですよね、ウェブって。
やっぱり印刷とかのメディアの方が仕事として全力投球できるっていうのがあるかもしれない。
イトウ:そうだね。それはあるね。
アコ:ついでに作品ではなくて仕事の事を聞きたいんですけど、映像関係の仕事も多いんですか?
イトウ:あるけど特殊なやつばっかりだね。
はら:映画の予告編とか。
イトウ:でも基本的に映像も含めてすべてデザインっていうスタンスでやってる。
chibashi:やっぱり中心は印刷?
イトウ:完璧に印刷が中心です。でも仕事も大切だけど、どっちかっていうと、これからみんなでやっていく以上、そういう環境をどうやって維持していくかっていう方が大切ですね。
特に僕は今までの京都での生活を完全にリセットして一からやっていくわけだから、これからどうやってダラダラしつつ日銭を稼いでいくか、どうやってみんなで楽しくやっていくか、そういう方が大切(笑)。
世の中に打って出ようとか、儲けようとか全然考えてないんですけどね。
はら:儲かったら儲かったで「次に何買おう」とかね(笑)。
イトウ:ちょっとした小物買おう、とかね(笑)。
アコ:groovisionsのみんなって買い物好きですよね(笑)。そういう所が好きなんだけど。
はら:今は買う暇もないけど(笑)。
イトウ:僕らはどっちかっていうとポジティブなプラス思考の人間じゃないから。引き算が得意なんですよ。ものを作っていく上でどんどん引き算していく傾向が強いんで、だからそういう部分が人生に対する取り組みにも出てるんじゃないかなーと(笑)。
chibashi:その辺のネガティブ思考は、イトウさんが学んでいた現代美術からデザインへのシフトっていうのとは関係があるんですか?
イトウ:うーん・・・っていうか、実際食っていくのが難しいしね。でもウォーホールとかは、あれだけ有名人の絵を量産してバンバン売って、売るっていう事も含めてアートだし、笑えるじゃないですか。そういう方が共感できる。
はら:やっぱり現代美術の事とかアートの事ばっかり考えていると、どうしても視野が狭くなっちゃうじゃないですか。僕らには音楽もアートも同じなんで、現代美術の本を見ながら横で「ラブ」だの「フリー」だの歌ってるハウスを聞いてる。そういうのがないとやっぱり辛いよね。
アコ:最後にgroovisionsが影響を受けた人を具体的にお聞きしたいのですが、
イトウ:信藤さんですね。現代美術とかよりも、よっぽど過激だと思った。
でもやっぱり、本とかモノの方が大きいかな。
はら:やっぱり小西さんの影響も大きいよね。
イトウ:あるね。僕は人生で3大影響を受けたものっていうのがあって、1つはパンクで2つめがニューアカ(笑)。で、3つめが渋谷系っていう。
なんかねー、ムーブメントが好きなんですよ、僕。割と軽い人間なんでムーブメントがあるとパーンと乗ってしまう(笑)。
はら:でも、この間の引っ越しでニューアカは捨てたよね(笑)。
groovisions
http://www.groovisions.com
Text: Ako