「タダでウェブサイト作ります。開設後の管理や運営もすべてお任せください」――。こんな勧誘を受けて、素直に信じる人、逆に何か裏があるのではないかと疑う人はどのくらいいるのだろうか。
ある被害者のケース―広告料収入はクレジットの月払いと同額だった
東京・港区のゴルフスタジアムという会社が提供する、「ごるスタ」というウェブサイトの作成・運営管理サービスに絡み、1000人を超えるゴルフ練習場のレッスンプロが、多額の借財を背負わされ、破産の危機に瀕している。
■広告収入でソフト購入代金を相殺?
うたい文句は冒頭のとおり。ゴルフ練習場やショップ、レッスンプロに、タダでウェブサイトを作成する、と言って持ちかけ、実際ちゃんとしたウェブサイトを作る。ただ、最終的に契約書を取り交わす段階になると、「ソフトを買う形を取らせてほしい。ついては信販会社とクレジット契約も結んでほしい」と言い出す。
当然、「話が違うじゃないか」ということになるのだが、そこで持ち出してくるのが広告契約だ。作成したウェブサイトに載せる広告を取ってきてくれるというのだ。ゴルフスタジアムが広告営業もしてくれて、掲載料を支払ってくれる。その額は、クレジットの1カ月の支払額と同額。広告が取れないときは、ゴルフスタジアム自身が広告主になり、広告料を負担してくれる。
ゴルフスタジアムから入金される広告料を、そのまま信販会社に支払えば、顧客の持ち出しはゼロ。確かにタダでウェブサイトを作り、管理運営してもらえている状態になる。
だが、ひとたび広告料の入金が止まれば、顧客は信販会社への支払いができなくなる。それが現実となったのが今年2月下旬である。
ゴルフスタジアムからの入金が止まったという情報は、LINEを通じ、瞬く間に全国の「ごるスタ」ユーザーに拡散した。
被害は全国に広がっており、被害者は主にレッスンプロ。しかも1000人を超えている。そして1人当たりのクレジット残高が少ない人で300万円、多い人だと900万円台であることが、瞬く間に判明。3月26日には被害者団体が立ち上がっている。
ゴルフ場問題のエキスパートである西村國彦弁護士が世話役となり、被害者の有志が世話人会を発足させ、被害の実態調査に乗り出している。一方で、信販会社への支払いを止めるように呼びかけている。
契約書を見るかぎり、クレジット契約と広告契約はリンクしておらず、広告料が入らなければ、クレジットの支払いも免除されるようにはなっていない。
加えて、顧客が信販会社と結んでいるクレジット契約は、なぜか「ごるスタ」のウェブサイト作成サービスの対価を分割払いする契約ではなく、「モーションアナライザー3」というパッケージソフトの購入代金を分割払いする契約になっている。
信販会社は「モーションアナライザー3」の代金を一括でゴルフスタジアムに支払い、顧客からは長期の分割払いで回収する形になっている。顧客が広告料の未入金を理由にクレジットの支払いを怠れば、信販会社はゴルフスタジアムに先払いしてしまった代金を回収できなくなる。
■契約者増の陰に独特の人間関係
そもそも「モーションアナライザー3」のパッケージは数千円で買える映画のDVDとさほど変わらないような外見だ。
その、同じソフトに300万円だの500万円だの、900万円だのといった、顧客ごとに異なる値段がつけられ、クレジットの契約対象になっているのだ。
なぜ同じパッケージソフトに異なる値段がつくのか。筆者の取材に応じたゴルフスタジアム社の堀新(ほり あらた)代表は「お客様ごとにサービスが異なるから」だと説明する。
だが、信販会社の申し込み契約を素直に読めば、クレジットの対象はサービスではなく「モーションアナライザー3」というパッケージソフト、つまりモノである。
しかも、顧客は「モーションアナライザー3」を購入したという自覚も、そのために数百万円にも上るクレジット契約を結んだという自覚もない。認識しているのは、タダで「ごるスタ」のウェブサイト作成サービスを受けられるという点だけだ。
ただ、営業マンが言葉巧みに誘導したとはいえ、大の大人がクレジットの契約書に署名・捺印までしておきながら、その自覚がないというのはにわかには信じがたい、というのがごく普通の感覚だろう。
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