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医師が見た「福島のリアル」

避難中の人々の健康を損なわせる3つの要因

2017年4月6日(木)

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 前回は、私が2カ月(2017年2~3月)限定の院長を務めた福島原発近くの高野病院のお話と、先日、亡くなられた俳優の渡瀬恒彦さんが闘った「胆のうがん」に関する解説をしました。今回は、福島原発近くに移住し、高野病院で実際に診療をしてみて気づいた「避難生活の現実」を取り上げます。診察室で直接、患者さんからうかがったお話なども交えてお届けしますね。

 先日、6年にもわたった原発近くの町村への避難指示が、一部を除いてついに解除されました。これにより避難区域の面積は3分の1に縮小し、約3万人が避難解除の対象となりました。

事故のあった第一原発の近くまで車で行ってきました

避難生活でなぜ人々は死亡するのか

 いきなり過激な見出しです。避難生活でなぜ人々は死亡するのでしょうか。「死亡」とは穏やかではありませんが、これは誇張でも何でもなく、高野病院での2カ月間の診療で、私が実感したことの一つです。

 まず、そもそもなぜ避難生活で健康を害するかについて見ていきます。この点については私も、福島に行くまではきちんと理解できていませんでした。「大変だろうけど、一時的に別の場所に引っ越すだけじゃないのかな」と思っていたのです。

 避難指示は6年前、原発事故の直後に出されました。理由はもちろん、放射線量が高い地域に住むと被ばくし、健康被害が生じる可能性があるからです。

高野病院にある、線量を測る「モニタリングポスト」

 では避難指示を出された地域の住民がどこに避難したかというと、これはあまり知られていませんが、約半数は福島県内の仮説住宅に行きました。復興庁の最新データによると、県外へ避難している人は3万9218人、県内は3万7670人で、県内の94%にあたる3万5436人は仮設住宅や賃貸住宅などに住んでいます。事故直後は一時的に親戚などの家に行ったものの、避難生活が長期化したため仮設住宅に入った、というパターンが多かったようです。

 私が高野病院で診察した患者さんの中にも、仮設住宅で避難生活を送っている方が多くいました。外来通院の方も、入院中の方も……。

 そこで私が強く感じたのが、「避難生活は人を死亡させる」ということでした。以下に3つの理由を挙げ、順に見ていきます。

1. 家族の離別と地域コミュニティーの喪失
2. 医療の連続性の途絶
3. 環境変化

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「医師が見た「福島のリアル」」の著者

中山 祐次郎

中山 祐次郎(なかやま・ゆうじろう)

外科医

1980年生まれ。聖光学院高等学校を卒業後、2浪を経て、鹿児島大学医学部医学科を卒業。その後、都立駒込病院外科初期・後期研修医を修了。現在は福島県広野町の高野病院の院長として勤務。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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