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英国のEU離脱の主因は、国家の「老化」である

歴史上のどんな強国も、衰亡の歴史を繰り返す

2017年4月6日(木)

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イギリス、いよいよEU脱退へ

 去年の6月、イギリスが欧州連合(EU)からの離脱の是非を問う国民投票を行った結果、民意は「EU離脱」を選択し、世界中で大きく報道されました。この結果により、すでに事が成ったかのように離脱派の人たちが熱狂して喜ぶ映像が全世界に流されたものです。

 しかし、離脱派が勝ったといっても、離脱:残留=52:48という僅差。その上、残留派が多い若者層の投票率が低かったことから、全国民で見るとおそらく残留派の方が多いだろうということ。また、そもそも国民投票の結果は「法的拘束力」を持たないこと。さらには、「イギリス政府は本当に、EUを離脱してやっていく自信と方策と手腕があるのか?」という疑念があって、以前に「まだまだこの先、ほんとうに離脱するのかどうかは未知数」という旨の記事を書きました。(日経BPネット 2016年6月28日配信記事「離脱しないかも? 英国のEU離脱を歴史視点で完全理解」)

 ところが先日(3月29日)、イギリス政府はEUに離脱の意思を通知し、いよいよ本格的に「EU離脱」へ向けて舵を切りはじめたようです。

3月29日、イギリス政府がEUに離脱の意思を通知すると、一方のEUは、離脱交渉指針の基本原則として以下の項目を挙げた。①「離脱後はEU加盟国と同等の権利や恩恵は受けられない」、②「単一市場へ特定の産業分野だけ参加を認める手法はとらない」、③「27カ国が統一した立場で交渉に臨む。イギリスとの個別交渉はしない」 (画像:PIXTA)

身勝手なイギリス

 しかし、イギリスがこれまで望んできた条件をみると思わず苦笑してしまいます。

移民(難民)は受け容れないけど、できればEUとの経済協定はこのまま存続したい。

 なんと都合のよい!

EU加盟国である以上、法的に移民(難民)の受け入れを拒否できないから、たとえ脱退してでも拒絶する。でも、EU加盟国としての経済的利得は捨てたくない。

 もちろん、こんな身勝手なイギリスの「EU離脱条件」が通るわけはありません。

 EUがそんなことを許したら、他の加盟国も一斉に脱退、EUはその瞬間に崩壊してしまうことは火を見るより明らかだからです。建国以来、海千山千の国際外交の舞台を渡り歩いてきたイギリスともあろうものが、そんなことも分からないとは考えにくく、これはやはり、イギリス政府にはハナから離脱の意思がなく、わざと無理難題の条件を突きつけて、あえて“破談”に持っていき、「一応、“民意(国民投票の結果)”に沿って努力はしてみたけど、やっぱりダメでした」という“国民向けアピール”のための方便ではないかと勘繰りたくなるほどです。いずれにせよ、英国とEUの交渉に対する考えの溝は深く、困難な交渉となるのは必至です。

「神野正史の「人生を豊かにする世界史講座」」のバックナンバー

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「英国のEU離脱の主因は、国家の「老化」である」の著者

神野 正史

神野 正史(じんの・まさふみ)

予備校世界史トップ講師

予備校世界史トップ講師、世界史ドットコム主宰、歴史エヴァンジェリスト。誰にでも分かるように立体的に、世界の歴史を視覚化する真摯な講義は、毎年受講生から支持されている。近年はテレビや講演会でも活躍。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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