イギリス、いよいよEU脱退へ
去年の6月、イギリスが欧州連合(EU)からの離脱の是非を問う国民投票を行った結果、民意は「EU離脱」を選択し、世界中で大きく報道されました。この結果により、すでに事が成ったかのように離脱派の人たちが熱狂して喜ぶ映像が全世界に流されたものです。
しかし、離脱派が勝ったといっても、離脱:残留=52:48という僅差。その上、残留派が多い若者層の投票率が低かったことから、全国民で見るとおそらく残留派の方が多いだろうということ。また、そもそも国民投票の結果は「法的拘束力」を持たないこと。さらには、「イギリス政府は本当に、EUを離脱してやっていく自信と方策と手腕があるのか?」という疑念があって、以前に「まだまだこの先、ほんとうに離脱するのかどうかは未知数」という旨の記事を書きました。(日経BPネット 2016年6月28日配信記事「離脱しないかも? 英国のEU離脱を歴史視点で完全理解」)
ところが先日(3月29日)、イギリス政府はEUに離脱の意思を通知し、いよいよ本格的に「EU離脱」へ向けて舵を切りはじめたようです。
身勝手なイギリス
しかし、イギリスがこれまで望んできた条件をみると思わず苦笑してしまいます。
移民(難民)は受け容れないけど、できればEUとの経済協定はこのまま存続したい。
なんと都合のよい!
EU加盟国である以上、法的に移民(難民)の受け入れを拒否できないから、たとえ脱退してでも拒絶する。でも、EU加盟国としての経済的利得は捨てたくない。
もちろん、こんな身勝手なイギリスの「EU離脱条件」が通るわけはありません。
EUがそんなことを許したら、他の加盟国も一斉に脱退、EUはその瞬間に崩壊してしまうことは火を見るより明らかだからです。建国以来、海千山千の国際外交の舞台を渡り歩いてきたイギリスともあろうものが、そんなことも分からないとは考えにくく、これはやはり、イギリス政府にはハナから離脱の意思がなく、わざと無理難題の条件を突きつけて、あえて“破談”に持っていき、「一応、“民意(国民投票の結果)”に沿って努力はしてみたけど、やっぱりダメでした」という“国民向けアピール”のための方便ではないかと勘繰りたくなるほどです。いずれにせよ、英国とEUの交渉に対する考えの溝は深く、困難な交渉となるのは必至です。