「共謀罪」きょう審議入り まず政府の変節をただせ
「共謀罪」の構成要件を改め「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案がきょう衆院本会議で審議入りする。
国際組織犯罪防止条約の締結に当たって、法案が必要不可欠なのかどうか。そこが最大の焦点であり、政府と主な野党の対立点でもある。
見解が対立するのは、政府の従来の説明に一貫性がないからだ。
条約は締結国に4年以上の懲役・禁錮の刑を定める重大犯罪について、共謀罪などの法整備を求めている。対象犯罪数は600超で、減らすことはできないと政府は説明してきた。だが、今回の法案では対象犯罪数を277と、半分以下にした。
外務省の担当者は先月の自民党法務部会で、対象犯罪を減らせないとしてきた理由について、条約を締結できないリスクを重く見たからだと釈明したという。
なぜそうした判断になったのか。国会は厳しくただすべきだ。
もともと条約は各国の事情に応じた法整備を認め、一部の内容を見送って締結もできる。また、殺人予備罪など70を超える重大犯罪で、今でも未遂以前の行為が例外的に処罰できる。ゆえに、条約は現行法で締結できるというのが野党の主張だ。
政府は根幹部分の説明が変節した経緯を真摯(しんし)に語るべきだ。過去の国会答弁との矛盾を国会がただすことが議論のスタートラインだ。
その上で、野党の主張では条約締結ができないというならば、それを証明する責任は政府にある。
対象犯罪を減らしても条約締結が可能ならば、277という対象の妥当性も当然議論すべきだ。政府が強調するテロ対策とは無縁に思える罪名も多く含まれている。
「共謀罪」法案は、捜査機関の対応次第では、国民の心の内までが監視対象になる危険性がある。その不安が払拭(ふっしょく)できるかどうかも審議の焦点だろう。
処罰の対象となる組織的犯罪集団の定義は難しい。また、計画だけでなく実行準備行為を要件とする点で、廃案になった過去の共謀罪と異なると政府は強調するが、何が準備行為かを捜査側が拡大解釈する余地はないのか。
課題は山積している。さまざまな懸念を解決する国会の責任は重い。