震災復興の司令塔なのに、原発事故の避難者たちが置かれた複雑な状況を分か…[続きを読む]
また震災復興関連。そして天下りがらみ。官民癒着の根深さがあらわになった…
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また震災復興関連。そして天下りがらみ。官民癒着の根深さがあらわになった。
農林水産省・東北農政局が発注した農業土木工事を舞台にした談合疑惑で、公正取引委員会がゼネコンなど31社と、発注元である東北農政局への立ち入り検査に踏み切った。
津波をかぶった農地の除塩やがれきの撤去、区画整理。検査の対象になった工事は、東日本大震災からの復興や復旧に関連するものが中心だ。
財政難のなか、復興事業には巨額の国費が投じられてきた。これまでも、高速道路の復旧や園芸ハウスの再建にからむ談合が明るみに出ている。談合があれば健全な競争が働かず、工事金額は高止まりする。その分、税金がむだに費やされる。被災者だけでなく、復興を願う納税者全体を裏切る行為だ。
加えて深刻なのは、農水省からの天下り役人が、このなれ合いに少なからぬ役割を果たしていたとみられることだ。
朝日新聞の取材では、立ち入り検査を受けたゼネコンの多くに、農水OBが在籍している。彼ら天下り組が中心になって、受注調整を担っていた疑いが浮かんでいる。ゼネコンへの再就職を仲介したのは、複数の農水OBだったという。
だれもが、最近発覚した文部科学省の天下り問題を思い出すだろう。文科省の場合もOBがあっせんにあたっていた。
ある建設会社の幹部は、取材に「OBを引きうけたところでないと、規模が大きな工事は受注が難しい」という趣旨の話をしている。事実とすれば、天下りの受け入れが企業の実益とじかに結びついていることになる。まさに絵に描いたような官民癒着ではないか。
天下りを媒介に官民がなれ合う構造は、文科省と農水省だけとは思えない。役所でしてきた仕事と関係が深い企業への再就職は、腐敗を招きやすい。何度もそう指摘されながら一向に改まらない。各府省庁の実態調査を急ぎ、再就職のあり方をもう一度見直すべきだ。
農政局の元幹部が「震災前に農政局から天の声が出ていたことは否定しない」と話しているのも気になる。今は、受注調整や価格決定に「官」は関わっていないといえるのだろうか。
きのうの衆院農水委員会で、現職職員の関与を聞かれた山本有二農水相は「違法なことが絶対にないよう、監督管理していきたい」と答弁した。公取委に協力するのは当然として、農水省自らも実態の解明に向け、調査を尽くさなければならない。
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