──日本の人口は減っていきますが、それでも、東京−大阪のバイパス(新幹線、リニア)は必要なのでしょうか。

 要るんじゃない? 人口は本当に減るのかい? 移民が増えることでヨーロッパだって米国だって増えている。日本人が増えなくても、日本にやって来る人は増えます。

僕にしかできない仕事があるし
ある間はやるしかない

──葛西さんは27年にわたって代表権を持つ実質的な経営者です。後進に道を譲ることはないのですか。

かさい・よしゆき/1940年生まれ。76歳。63年東京大学法学部を卒業し、日本国有鉄道へ入社。国鉄末期に、若手改革派メンバーとして、国鉄の分割民営化構想を実現する上で主導的な役割を果たした。87年4月、JR最初のポストはJR東海取締役総合企画本部長。90年副社長、95年社長、2004年会長、14年より現職。 Photo by M.K.

 僕にしかできない仕事があるし、ある間はやるしかない。鉄道経営や関連事業は、経営者がどんどん変わってもできる仕事です。でも、リニア中央新幹線の話や海外の話は、人が代わると話が止まっちゃうからね。

──JR東海にも、そうした大局観を持った経営層はいるのでは。

 民営化を知っている世代と知らない世代。つまり、霞が関型に育った人間と民間企業で育った人間は違うんですよ。僕はこれまで、国鉄時代に日本帝国の官僚として身に付けた素養を経営に応用してきた。国会対応や他の官庁のことを俯瞰的に見る「横軸型」の人間です。今のJR東海で育ってきたのは、一つの事業を深掘りする「縦軸型」の人間。将来的に鉄道がどうなるのか。JR東海が日本経済、世界経済の座標軸のどの位置に身を置くべきなのか。外から俯瞰する能力が必要な時です。

 私は、横軸型の人間は外から移入するしかないと思う。例えば経済産業省や財務省、警察庁などの人間を採用することで、横軸と縦軸の最適解を作っていけるかもしれません。