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はてな匿名ダイアリーに、『けものフレンズ』批判、というより「『けものフレンズ』がネット上で御神輿のように持ち上げられ、バズっていく消費状況」を批判する文章がアップロードされていました。
真実などどこにもない。ウソを倒すのはまた別のウソ。
ポスト真実の時代の戦い方が、まさにここにはある。
アニオタたちがもし上記の行動を「自覚的」にやっているのだとしたら、それはいかにもオタクらしく捻くれていて、しかし少々のユーモアも感じさせる、気の利いたいたずらのようにも思える。
しかしもし無自覚的・無意識的にそれをやっているのだとしたら、それは鬱々とした大衆の暗い感情が病理的に発露してしまったかのような、なんだかこれから先が心配になってしまう「症状」だともいえる。
いやあ、エネルギーが感じられて楽しい文章ですね。はてな匿名ダイアリーという、人間の怨念や欲求が無名の地縛霊となって這い出すメディアだからこそ、このような奔流がみられるのかもしれません。
それでも、こういった文章をアカウントを明かさずに匿名で書いてしまうのは勿体ないと思いました。今、これだけ長ったらしいアニメ批判を書き綴りたくなって、実際に書き綴る人は、そんなにいないと思います。せいぜい、持論をtwitterに垂れ流して、自分でtogetterにまとめる人ぐらいではないでしょうか。
冒頭であなたは
自分のブログに書くとなんだか炎上しそうなのでここに書くことにする。
と書いていますし、『けものフレンズ』とインターネットを巡る現状を踏まえると、実際、“必要ないぐらいに”燃えたんじゃないかと思います。だから、匿名ダイアリーに書くという動機自体は理解できます。ただ、匿名ダイアリーに書くということは、怨念や欲求が人のかたちを取らず、地縛霊のような言葉が一人歩きするに過ぎないので、寂しいところもあります。
今夜は、ブログに無意義な文章を書きたくてしようがないので、あなたが20代の若者であると想定した感想と、あなたが40代の中年であると想定した感想を書き並べてみます。
20代で「アニメ評価を攪乱せよ」と書いたあなたへ
とても楽しい文章でした。
お若いのに沢山のボキャブラリーをご存じで、それらを使いこなそうと努めているように見受けられました。
のみならず、現代のアニメ作品の消費状況、特にSNS等のネットメディアがアニメ視聴者の消費動向を変化させているさまは、そのとおりだと思います。今日のインターネットは神輿となるコンテンツを常に必要としていて、2017年冬アニメでは、『けものフレンズ』がその顕著な例だった、というお考えは間違っていないと思います。
あなたの文章には過剰な表現が多く、どこか喧嘩腰で、高踏的だと私は感じました。
たとえば、「アニオタ・コミュニティ」という語彙。「アニオタコミュニティ」ではなく「アニオタ・コミュニティ」とわざわざ書くのが独特ですね。これが勘違いだったとしても、「空虚な作品」「ポスト真実」「意味不明な舞踏」「大衆の暗い感情が病理的に発露」「「症状」」といった語彙がちりばめられているのにはクラクラしまいた。
すばらしいですね!
自分の思いの丈を、こういった勢いのある文章で書いてサマになるのは、十代~二十代ぐらいまでなんですよ。あなたが2017年のアニメ消費状況を心配している愛好家だとしたら、こういう文章をブログに書けるのは今のうちです。こういう勢い過剰な文章をブログに書くと、十年後には素晴らしい思い出となるでしょう。また、こういう文章を書いて多少なりとも肯定的に評価される可能性があるのは若いうちだけなので、せっかくなら匿名ダイアリーではなく、アカウントのはっきりしたブログでやってみて欲しかったです。
また、『けものフレンズ』の消費状況をクッキリ批判することを優先させたためでしょうか、あなたは『けものフレンズ』そのものの値打ちを過小評価しているようにもみえました。が、ひょっとして、あなたが『けものフレンズ』という作品自体を気に入らないだけなら、それもそれで許容されることかもしれません。もちろん、そこはツッコミどころですし、炎上のトリガーとなるでしょう。しかし、若いアニメ愛好家が偏った批判をやって燃えたからといって、失うものは少ないでしょうし、「多少のバランスの悪さは仕方がない。だって若いんだから」とみなす人も多いのではないかと思います。
もし、2017年の私が同じような趣旨のブログ記事を書くとするなら、『けものフレンズ』を批判し過ぎず、真摯に愛好している人達を敵に回さず、「みんなとバズれるなら何でも構わないようなネットイナゴ連中」だけを焼灼するような表現を心がけるでしょう。
賢明なあなたのことですから、きっと「自分の意見をバズらせるためには一定の火力があったほうが良い」ことには気付いているのでしょう。何かを焼くのはブログ記事を書く際に重要なエッセンスです。が、今回はちょっと“薪のくべかた”がぞんざいというか、危なっかしいようにみえました。そういう意味では匿名ダイアリーを選んだのは正解です。でも、これから経験を積み重ねれば、もっと上手に、いやらしく、薪をくべられるようになると思います。
それから、あなたが好ましいと思っている言い回しや考え方は、私の目には古臭い亡霊のように感じられました。が、すばらしいですね!
2017年の二十代や三十代のほとんどは、あなたが理想視している批判や批評のたぐいに、まったく価値を見出していないと思います。まあ、1980~2000年の二十代や三十代の大半も、まったく価値を見出していなかったでしょうけれども。ともかく、あなたの文章がお手本にしている諸々の表現からは、旧くて懐かしいものを感じました。
でも、あなたが十分に若いなら、周囲の同世代とは違った考え方をこねくり回して面白い文章の書き手になれるやもしれません。あなたのご年齢、あなたの生きた21世紀と、私が古臭いと感じる諸々の表現が掛け合わさった時、どのようなキメラが生まれるのか、観てみたい気がします。あなたはまだ粗削りで、レトリックに振り回され気味ですが、この路線でしっかり人生経験を重ね、昭和生まれの人間とは似て非なる表現と考察を磨きあげた時に、どんなものが生まれるでしょうか。
断っておきますが、「面白い書き手」とは、「売れっ子」「有名な」「役に立つ」といった意味と必ずしもイコールではありません。あくまで「面白い書き手」以上でも以下でもありません。
でも、そういう書き手が今も生まれ出てくるってこと自体は、インターネットの豊饒さの一部だと思うので、これからのご活躍を祈念申し上げたい次第です。どうか、良い思春期を。
40代で「アニメ評価を攪乱せよ」と書いたあなたへ
こんなにバランスの悪い批判を匿名ダイアリーに投稿するというのは、一体どういう境遇、どういう了見なのでしょうか。
アニメに限らず、あらゆる文物がSNS上で繋がりあって御神輿として消費されている、というのはわかる話です。しかし、そのことを言い表すために『けものフレンズ』を必要以上に腐してみせなければならないのは、書き手として力量不足と言わざるを得ません。
あるいは、『けものフレンズ』が個人的に気に入らないだとか、『けものフレンズ』の長所が把握できないだとか、そういった事情があるのやもしれません。
しかし、個人的に気に入らないからといって「30~50点の作品」「空虚な作品」と言ってしまうのは、自分の好きな作品と優れた作品の区別がつかない人のやることで、ベテラン愛好家として、なにより、批判や批評をする際の愛好家としては良くないところだと思います。
まして、あなたが全く『けものフレンズ』の長所や美点を(作風を踏まえて)評価できないのだとしたら、愛好家としての感覚を疑わざるを得ません。数十年にわたってアニメを楽しみ続けてきたのに、特定の作風の作品しか評価できないのだとしたら、とんだガッカリさんですよ。
喩えるなら、高級フランス料理や和風懐石の素晴らしさに惚れこむあまり、最も優れたピッツェリアのピザや蕎麦屋の蕎麦をこき下ろすような愚行に陥っていないでしょうか。
それと、おおげさなレトリックが、せっかくの内容を空虚な響きにしてしまって残念感が漂っていました。
あなたは、
ネット上の言語ゲームというのは、往々にしてこのような「過剰」に至るのだ。
と書いていますが、あの匿名ダイアリーの文章自体、「過剰」をきわめた文章で、(あなたのおっしゃるところの)言語ゲームにズブズブになっているように見受けられました。あなただって、『けものフレンズ』の周りでオクラホマミキサーを踊る有象無象の一員になっているんですよ! なにせ、こんなに脂の乗った文章で、はてなブックマークを仰山集めてしまいましたからね。堆積したはてなブックマークをどんな気持ちで眺めているのかはわかりませんが、これであなたも共犯者です。
もし、この構図を無自覚的・無意識的にやってしまっているのだとしたら、あなたの鬱屈した感情が制御されないかたちで発露してしまったような、(あなたのおっしゃるところの)「症状」だと言わざるを得ません。
かりに、自覚的に「釣り」としてやっているんだとしても、なんだか大人気ないですね。こんなにレトリックをブイブイ言わせちゃって、若者が若気の至りでやっているなら背伸びしたユーモアだとしても、40代にもなって、こんな釣りを、はてな匿名ダイアリーなどという幽霊屋敷に公開せざるを得ないというのは、いかがなものでしょうか。
あなたがどのようなアニメを視聴し、どのようなアニメ愛好家になったのかは存じ上げませんが、相当に偏った視聴姿勢を長く続けておられたようにもみえました。世の中のアニメ評価を攪乱するより、まず、あなた自身のアニメ視聴の態度や、アニメ評価尺度を攪乱したほうがいいのではないかと思いました。
そろそろ時間切れなので、今日はこのへんで。