5日に亡くなった詩人の大岡信さんを悼む声が、親交のあった多くの人々から寄せられた。

 歌人で朝日歌壇選者の永田和宏さんの話 私は「折々のうた」は「現代の万葉集」だと思っている。新聞の1面で連日、詩歌を紹介したコラムは、一般の人々が毎朝詩歌を読む習慣をつくり、日本の文化を変えた。詩歌を一部の専門家のものから一般の人々に返してくれた功績は大きい。

 大岡さんは私や亡くなった妻、河野裕子の短歌も「折々のうた」に取り上げてくれた。それは歌人としてすごくうれしく、誇りだった。また若山牧水賞を私や河野が受賞した時も温かい講評をいただいた。ワインが大好きだった大岡さんの姿が懐かしく思い出される。

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 歌人で朝日歌壇選者の馬場あき子さんの話 長いつきあいでした。短歌の世界から業績を挙げると、「折々のうた」を何年も続けたこと。外国で詩人たちと「連詩」をし、世界に通じることを言葉で紹介したこと。昭和30年代に塚本邦雄さんと論争し、短歌の前衛的な面が展開したこと。国文学者として、近代で否定されていた紀貫之を再評価したこと。大岡信ことば館を通じて、言葉で世界やいろいろなジャンルがつながるという志、いわば「詩人の魂」を示してくれました。

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 詩人の白石かずこさんの話 日本文学の神髄を究め、日本の詩壇にとって最も重要な人だった。大岡さんのおかげで日本の詩が国外にも知られた。とてもありがたいと思っています。

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 作曲家の一柳慧(とし)さん 音楽に同化させやすい柔らかい言葉を書く人で、コーラスやオペラまでたくさんの歌に詩をいただいた。付き合い始めた1960年代は、音楽や文学、美術界の人たちが垣根を意識せず活動した時代で、初めは美術評論家として知った。幅広く国際的な視点を持った人で、前衛的な美術や音楽、日本の古いうた、西洋の文学まで、大岡さんの中では区別がなかった。連歌や連句を国際的にした「連詩」には非常に影響を受け、私の音楽をいい意味で日本的に展開させてくれた。分野を越えて若い人に活躍の場を与え、骨身を惜しまず支援するお兄さんのような存在だったと思う。

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