米中両大国が新たな関係を探り合う起点となろう。習近平(シーチンピン)国家主席が訪米し、トランプ大統領と6、7日に会談する。

 中国批判を重ねる米政権の発足で一時は緊張感も漂ったが、両首脳の顔合わせが早々に実現することを評価したい。

 現状を守ろうとする覇権国に新興国が挑む対立の構図が、今の米中関係である。歴史上繰り返された衝突が回避できるかを世界は注視し続けている。

 ところが最近の米国からは逆に現状変更を図るような動きが目立つ。伝統的な自由貿易推進の看板を下ろし、国際合意である温暖化防止に背を向ける。

 一方の習主席は年初の国際会議で「開かれた世界と共に発展する中国」を唱え、グローバル化の現実を受け入れるべきだと訴えて喝采を浴びた。

 もちろん、対立の根本にある安全保障においては、海洋進出を強める中国こそが現状変更を企てる側である。南シナ海の岩礁を埋め立て、軍事拠点化する動きは、国際法廷で否定されてもやめようとしない。

 経済についても、中国は実際には対外開放が不十分だ。最近は外貨取引が唐突に制限され、各国を不安にさせている。中国はグローバル化の利用者であっても、まだ守り手ではない。

 そんな中で米国がめざすべきは、国際ルールの枠内に中国を導くことだ。自国第一主義を叫んで自ら既存の秩序を壊すことは、米国の正当性を捨て去ることに等しい。

 あくまで法の支配という原則のもとで両国が共に国際協調の支え手となることを望みたい。

 首脳会談の焦点は通商問題と北朝鮮である。

 トランプ氏は対中貿易赤字を問題視する。確かに米国の赤字の半分に近いが、相当部分は米企業が中国で生産し、輸入したものだ。不公正な問題を正すのは当然としても、グローバル経済下で赤字を一方的に相手の責任にする議論は不毛だ。

 核とミサイル開発をやめない北朝鮮について、米側は平壌の後ろ盾である中国に不満を示している。トランプ氏は「中国が解決しないなら、我々がやる」と強硬策も示唆する。

 だが、これも実際には、米中いずれかが単独で解決できる問題ではなく、日韓・ロシアを含む周辺各国の協働がなければ朝鮮半島の非核化は実現しない。北朝鮮問題はむしろ米中の協力テーマとすべきものだ。

 分野を問わず、世界の安定は米中の関与なしには語れない。その重責を自覚しつつ建設的な対話を進めてもらいたい。