メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

容疑者、キルギス出身 死者14人に

サンクトペテルブルクの地下鉄駅構内を歩くジャリロフ容疑者とみられる男(手前)の画像=ロイター

当局は単独犯の「自爆テロ」 イスラム過激派が関与か

 ロシア北西部のサンクトペテルブルクで3日に起きた地下鉄車両爆破事件で、スクボルツォワ露保健相は4日、乗客ら14人が死亡し、約50人が負傷したと明らかにした。ロシアの主要都市が狙われた衝撃は大きく、捜査当局は背景を明らかにしていないが、過激派組織「イスラム国」(IS)などイスラム過激派武装勢力による犯行との見方が強まっている。【モスクワ杉尾直哉】

     ロシアのペスコフ大統領報道官は4日、事件について、テロ行為との認識を示した。中央アジア・キルギスの治安当局は、容疑者が1995年にキルギス南部で生まれ、現在はロシア国籍のアクバルジョン・ジャリロフ容疑者と発表した。自爆テロとみられ、容疑者の遺体の一部が見つかった。露当局もジャリロフ容疑者の単独犯行と断定した。

     爆発は、地下鉄センナヤ広場駅と工科大学駅の間で起きたが、両駅とは別の駅でも不発の爆発物が見つかった。露当局はこの不発の爆発物についてジャリロフ容疑者の「DNAの痕跡が見つかった」と発表した。同時爆破を狙った可能性がある。ロシア通信は、容疑者が「ロシアのイスラム過激派と密に連絡を取っていた」とする治安当局者の話を報じた。

     南部チェチェン共和国などを拠点とする武装勢力によるテロ攻撃に悩まされてきたロシア。最近は大型テロ事件は起きていなかったが、プーチン政権は2015年9月からシリアで「IS掃討」目的の空爆を継続している。ISは「報復」を呼びかけており、その攻撃がロシアの主要都市に及んだ可能性がある。

     サンクトペテルブルクはプーチン大統領の出身地。事件はプーチン氏の現地訪問中に起きており、ペスコフ氏は「首脳が滞在中に実行されたという事実が注意を引く点だ」と述べた。シリア空爆をやめない大統領に揺さぶりをかける狙いも指摘されている。

     露主要紙コメルサントによると、治安当局は、ISのメンバーでシリアからロシアに帰還後に当局に拘束された人物を通じ、事前にサンクトペテルブルクでのテロ攻撃の可能性を察知していたが、具体的な日時などの情報は得ることができず防げなかったという。

     ロシア政府の国家テロ対策委員会によると、昨年1年間に国内で治安当局が殺害した武装勢力の戦闘員らは140人以上に上った。これとは別に武装勢力の指導者24人を殺害し、テロ容疑などで約900人を拘束したという。多くは、イスラム過激派が多い南部ダゲスタン共和国などでの戦闘で殺害され、ISの旗なども押収されていた。

     国家テロ対策委中央事務局のクリャーギン次長は1月の記者会見で、モスクワやサンクトペテルブルクでも昨年、手投げ弾や地雷が武装勢力から押収されたことを明らかにし、「実際にテロ攻撃があれば、数千人の犠牲者が出る可能性があった」と述べていた。

    プーチン氏、野党弾圧強化も

     プーチン政権によるシリア空爆は、強力な軍事力で、ISなどの武装勢力を劣勢に追い込み、新たなシリア和平協議の開始を実現させた。ロシアの軍事・外交力を示してきただけに、今回のテロをきっかけにこうした政策を変更する可能性は低いとみられる。仮に軍事作戦を縮小すれば、「テロに屈した」との印象を持たれかねないからだ。

     プーチン氏は3日、トランプ米大統領から弔意を伝える電話をもらった際、「テロとの戦いで共闘すべきだ」との認識で一致した。プーチン氏は以前から、世界各国が参加する「対テロ大連合」の結成を訴えており、今回の事件をその実現へ向けた「支え」にしていく可能性がある。

     今回の爆発事件は、3月末以降、反政府デモがモスクワやサンクトペテルブルクなどで広がる中で発生した。メドベージェフ首相の「腐敗」に抗議するデモだが、主導した野党指導者のナワリヌイ氏について、メドベージェフ氏は4日、「自己本位な政治活動に未成年者を扇動し犯罪だ」と批判した。また「テロとの戦いは最後まで続けなければならない」と訴えた。今後、「テロ阻止」を理由に当局が野党への弾圧を強める可能性がある。

     一方、タス通信によると、ロシア南部アストラハンで事件の翌日の4日未明、交通事故現場に警察が駆けつけたところ、その場にいた複数の男が発砲し、警官2人を殺害。男らは車で逃走した。アストラハン州のジルキン知事は「イスラム過激派による攻撃だ」と述べた。また同日、サンクトペテルブルクの爆破事件現場近くのセンナヤ広場駅に「爆弾を仕掛けた」との匿名電話が警察に入り、駅を一時封鎖して不審物を探す騒ぎも起きた。地下鉄爆破事件との関連などは不明だが、不穏な動きが続き、市民生活への不安が高まる可能性もある。

    関連記事

    毎日新聞のアカウント

    話題の記事

    アクセスランキング

    毎時01分更新

    1. 道徳教科書検定 「パン屋」怒り収まらず
    2. ORICON NEWS ぺこ、今後はファッションの仕事中心「大人が苦手になった」
    3. 時代の風 森友問題の本質=中島京子・作家
    4. 森友学園 小学校開校予定地の隣に公園オープン
    5. 女子トイレ侵入 「腹痛認める」男性に無罪 静岡地裁支部

    編集部のオススメ記事

    のマークについて

    毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです

    [PR]