第137回 東京都指定の不健全図書、昨年度は○%がBL本! 全作品の不健全指定理由まとめ
まきむらよ。
毎週金曜、世界のニュースから性を考える時事コラム「まきむぅの虹色NEWSサテライト」をお送りしております。
今回のテーマは、「東京都に不健全図書として指定されたBL本まとめ」です。
東京都の条例に基づき、昨年度に“不健全図書”として指定されたBL全作品を一覧にし、各作品がなぜ不健全とされたのかを議会資料と議事録から考えます。
★ 平成27年度の東京都指定“不健全図書”、○%がBL本でした
「今回諮問する図書類は3誌でございます。(中略)『IZUMI COMICS 16 お色気人妻ヤリヤリ日記』、平成27年7月27日、株式会社一水社の発行でございます……」
こんな感じの会議が、東京都では毎月ガチで行われているんです。(引用元:第663回 東京都青少年健全育成審議会議事録)
東京都の青少年・治安対策本部では、毎月、都条例に基づいて青少年に有害と判断した本を“不健全図書”と指定しています。
★そこで、平成27年度に不健全図書指定された本を調べてみると……
実は、4割近くがBL本だったんです!
調査方法は次の通りです。
・東京都公式ホームページより、平成27年度に不健全図書指定された全29作品をリストアップ
・全29作品のタイトルを、BL情報サイト「ちるちる」および電子書籍ストアのBLカテゴリ内で検索し、2件以上のサイトでヒットしたものをBLとして分類
・上記の方法でBLにあてはまらなかった作品タイトルを東京都公式ホームページで検索し、議事録を元に不健全図書指定理由となった表現を推測、非BL作品を「グロ・残虐/人妻/ロリ/近親相姦/無修正」に分類
以上の方法で分類してみたところ、全29作品のうち11作品がBL本であったということがわかりました。
「同性愛だから不健全」みたいな審査基準に、まさかなってないわよね……?
ということで以下、不健全図書指定されたBL11作品に、審議員や自主規制団体の皆さんがつけたコメントをまとめて見ていきましょう。
★ 不健全図書指定されたBLと、それに対するコメントまとめ
(1)「PET契約」
「同性の行為でマニアックな趣向であるから保留もしくは非該当というご意見があるように存じますが、同性の行為であっても性行為であれば性的感情が刺激されると私は考えます」
「暴力的な性行為や人格否定があるところを見ても、やはり青少年にはよくないことですので指定でお願いします」
「ボーイズラブというほど優しい感じではなくて、非常に暴力的なセックスというような感じがして、これがどうして女の子に読まれるような対象になるのか、私はよくわかりませんけれども、これも性的表現としては行き過ぎだと思います」
(2)「女装クロギャルママ男子」
「コミカルな内容ではあるが、性描写での性器部分の修正が甘い」
「性器の消し等がいささか甘く、女性にしか見えない裸体の男が多数描かれている」
(3)「淫夢教師、飼育解禁。」
「BLものの表現というのは非常に自制して配慮すべきだと思います」
「帯のところに、「体育教師、数学教師」と書いてあるのですけれども、余計、中高生の女子とかが手を出しやすいのではないかなと感じました」
(4)「眠り男と恋男」
「BL物ということでマニアックなものかもしれませんけれども、あえて子供が手にとりやすいところに置くこともないかと思います。また、小説のような表紙ということで、逆に興味が湧くような感じがしますので、指定でお願いいたします。」
「グロテスクで、ここまで極端な形での縛りだとか、強姦に近いような形でのものを、ある程度修正してはあるのですけれども、非常に生々しく描写していますので、やはりこれは指定やむなしというところですね」
(5)「性癖BL」
「一番問題なのは、強姦シーンを描きっ放しにし、無批判な点である。『死姦』のシーンも問題」
「今までずっとそうなのですが、BL物というとちょっと何か甘くなるような感じがいつもするのです」
「BL物というものが男同士のものなので、この性描写がどうかと思うのですけれども、ちょっとエスカレートしてきていますので、発行元といいますか、発行業者を変えて出したりしておりますが、この辺はやはり業界内部
でもちょっと注意しておきたいところです」
(6)「教師玩具」
「やはりBL物が最近すごく多くなってきていますし、青少年に与える影響というものが多いのではないかなと思うのです。先ほど言っていましたように、人格否定と強姦シーンというものが必ずそういったところについてきているような気がしますので、これも指定でお願いいたします」
(7)「好物はいちばんさいごに腹のなか」
「一見すると見過ごしそうな感じなのですけれども、やはり修整も甘いですし、擬音がすごく細かく書いてあるのです。そういったところが青少年にとってはよくない」
「いわゆるBLものなのですけれども、猫を擬人化したりして作者との間の話し合いでどうしたら工夫していけるかという点がかいま見えます。やはり作者と編集者が話し合って、性器の修整とか性描写のところでどのように描写すればいいのかを話し合った形跡はわかるのです」
(8)「はれもの水風船」
「BLものであるが、男性器の描き方が露骨であり、成人向けとすべきである。」
「BLもので常に思うことだが、「グジュグジュ」等の擬音が多いが、それが卑わい感より、グロテスクに思われる程度である。」
(9)「ドS執事とヤンキー坊ちゃま」
(※議事録、資料ともに、東京都公式サイト上では見つからず。指定理由は「著しく性的感情を刺激し、青少年の健全な成長を阻害するおそれがある」こととされている)
(10)「マクマクラン博士の危険なお遊戯」
「BL風でBLではないファンタジーコメディ。全体的にコメディで卑わい感はないが、性器の修整が甘すぎる」
「BLとは違う作品だと思うが、修整がなく、絵も気持ち悪さが先に立つ」
「コミカルなBLで、性器の消しが甘いが、卑わいな感じはしない。判断に迷う」
(11)「イノセント the perfect innocent」
(※議事録、資料ともに、東京都公式サイト上では見つからず。指定理由は「著しく性的感情を刺激し、青少年の健全な成長を阻害するおそれがある」こととされている)
以上、11作品のリストをお送りしました。
あなたは、どうお感じになったでしょうか?
私は、議事録や資料を通して、「絵が上手いか下手か」「気持ち悪いかどうか」というような主観的要素にふれる発言がちらほら見られたことが気になりました。
審議員さんや自主規制団体の皆さんも、もちろん人間です。なので、多少なりとも個人の主観が入ってしまうことはしかたがないのかもしれません。
けれども、「同性の行為でマニアックな趣向」「どうして女の子に読まれるような対象になるのか」などといったコメントは、あまりにも主観的すぎ、条例原文を見てもいったいどこに該当するのかわかりません。
強いて言うなら第八条第一項第二号にある「強姦等の著しく社会規範に反する性交又は性交類似行為」が同性愛だとお考えでいらっしゃるのかもしれませんが、もしそうならば、ちょっと注意して見ていかなければいけない流れよね、って思いました。なぜか東京都公式サイト内の検索にヒットしない作品についても、ぜひ議事録を拝見したいところです。
ということで、読んでくださってありがとうございました! また来週金曜日にね。まきむぅでした◎