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シン・ゴジラ (2016)

SHIN GODZILLA

監督
庵野秀明
樋口真嗣
  • みたいムービー 3,235
  • みたログ 2.9万

3.86 / 評価:25,669件

ありのままの私たち、のための映画

  • saw***** さん
  • 2016年8月17日 23時53分
  • 閲覧数 2867
  • 役立ち度 89
    • 総合評価
    • ★★★★★

映画そのものは、ツッコミを入れながら半笑いで観る二流の怪獣映画としては、郡を抜いていると思います。
会議ばかりでテンポが悪いので、欧米に持っていく時には、30分ぐらいバッサリ切ると90分のホラー映画の尺になって、ちょうど良いかと。
特に主人公たち対策チームのシーンが要りません。
キャラが立っていないのに、立てようとするカットが多すぎです。
どのぐらい立ってないかと言うと、みんなオタクに見えて、紹介の時に言われた「オタク」が誰なのか分からないぐらい。
オタク族と一括りにしてモブにしてしまった方がスッキリしていいんじゃないかと思います。
無愛想な彼女の最後の笑顔と台詞も要りません。
「その後、ゴジラの放射性物質は半減期が短く影響は少ない事がわかった」辺りの、「タイムスクープハンター」式テロップで十分です。

一般の方は、なんで早口で喋るアニメキャラみたいなのばかりなのが、リアルだと熱狂的に言われてるのか分からないでしょう。
早口にしないと三時間近くなっちゃうので、とか、政治家は早口だと監督が言った、とか、そういう理由は確かにあるのでしょうが、それが熱烈に「リアル」と支持される理由は別にあります。
あの暗記した台詞をそらんじてるかのような、焦り以外の感情の見られない早口、そして会議室でのラップトップ見ながらのメンバーの会話の仕方、あれはオタクのコミュニティでの、会話のリアルなんですよ。
それは保守党の童顔メタボにしても、メガネのクール美形にしても一緒です。
つまり、この映画の「日本のために立ち上がる、若くはないけれども老てはいない人間」パートは、夏冬の東京ビッグサイトや、コミケ後の打ち上げや、路上での立ち話、ファミレスなどでよく見られる・見られてきた光景の再現で、それゆえにそう言う年頃のオタク・かつてのオタクたちの自尊心や劣等感をくすぐるのです。
つまり、この映画は、世間から石つぶてを投げられてきた記憶に苛まれる中年オタクの「ありのままの私」の肯定なんですね。
幾つになっても、総理や都知事が媚びを売って来るような現代でも、彼らは自分の存在理由に不安と劣等意識を抱えたままなんです。
物語の進行や設定を説明しているだけの台詞の応酬を「情報量が多い」と持ち上げて、考察だの補完だのをしだすのも、それが出来る頭の良い自分を確認して自分に自信を持つためだし、人間ドラマを過剰に嫌悪し嘲笑するのも、それがない自分に自信がなくなり不安になるからです。
だから、この程度の怪獣映画で国家の大事やら、日本映画の破壊やらを語ったり叫んだりしてしまう。
国家の大事については、なにをネタにしてでも語る人はこじつけて語るのでしょうがないですが、映画については、完全に時代遅れの認識です。
ガンダムで言えば酸素欠乏症にかかったお父さんです。ロートルになりかかっているんです。

今も富野や押井、ガンダムやパトレイバー映画の時代に生きている。この映画と一緒ですね。
社会システムとか理屈っぽいなんか凄そうな事を描いている風の作品が偉い=アニメすごい=オタクである自分すごい、と言う価値判断が絶対だった頃で頭の中が止まってしまい、それ以上に進歩していない。
だから、その価値判断をスクラップしないでビルドしているこの作品は中年オタクにウケるんです。
もっとも日本の中年オタク、50代・40代は数が多いので、的確に射抜けばリピートしてくれて儲かるのですから、商業的にはそれもありでしょう。
しかし彼らが今の現実を認識できているとは、とても思えません。

CGはアラが目立たないように夜と雨のシーンが多い?
いつの話ですか。
ジュラシックワールドもマーベルヒーローもトランスフォーマーも昼間にガンガン動きますよ。
ジャングルブックも、昼間で動物の毛並みの柔らかさまで表現できてます。確かに最後は暗すぎてよくわからなかった気もしますが。
破壊の様子が絶望的?
シカゴはロボット同士の戦いでボロボロになり、ロンドンには上海が落とされ、シドニーやエジプトは鉄材を抜かれて崩壊、スクリーンの中では一年だか何ヶ月だかおきにこんな感じですよ。
ロケ誘致後進国の日本が破壊されないのは寂しいですけれど、この映画での破壊の様子は低予算の中、頑張ってはいたもののまだまだ思い切りが足りません。

自分のレベルを誤認したまま、今後はこの映画を基準に判断すべし、などと他の製作者たちに明後日の方向への奮闘努力を促す、これが老害以外のなんだと言うのですか。
自分の親世代を老害と言って憚らなかった50代、40代が、老いを待たずに老害となり果てていくのは見るに堪えません。


福島の原発事故で奮闘した人たちの話なら、ナショジオの「衝撃の瞬間」でも先に見てください。
自動車のバッテリーで電源確保したと言う貴重な話を再現ビデオで見る事ができます。

詳細評価

物語
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