なんと…この日は全員キャンセルとのこと。
そんな恐ろしいことが起こるとは…
こういう日は「キャンセルハイエナ(私の造語)」として、加瀬さんのご好意に甘えて子連れでお邪魔した。
※キャンセルハイエナ:キャンセルによる食材ロス、人件費ロスを防ぐためなどと言いつつ、行きたいお店に、さも親切心を振りかざして予約を入れて、席を奪う人々のこと。
対義語・ドタキャン神
とりあえず子供用にノンアルコールの飲み物を伺ったところ、こんな素敵なスパークリングジュースが。
ドタキャンハイエナのポリシーの中に、他人様の席を奪う結果になったわけなので、その方々が食べる料理の代金を上回る酒を飲んでやるという、自分の財布を苦しめつつも、意地に近いハイエナ精神を誇示すべし、というものがある。
とはいえ、この日はそんなに高額のシャンパーニュを開けるよりも、お手頃なのに美味しそうなものばかりに目がいってしまい…こちらを。
エグリ・ウーリエのミレジメ。
これは、'04。
ピノ70:シャルドネ30で、熟成を経て香ばしく、コクのある果実味。
余韻も長いが料理の邪魔をせず、酸の落ち着きがあり料理と素晴らしく合った。
2本目はシャルル・エドシックの'99ロゼをいただいた。
1本で酔いが回ってきたのに全く懲りずに2本目。
泥酔するまで飲むのをやめない、これこそキャンセルハイエナ。
ちなみにこちらはソムリエさんのお勧めもあったのだが、熟成が進み燻んだ色味。
料理に寄り添う素晴らしいシャンパーニュだった。
ハイエナ、死にかけになりながら赤ワインもグラスで。
無理やり、コトー・シャンプノワを開けて頂く。
実はこの日、初対面のソムリエさんがいらっしゃった。
この安藤さんという男性、飲むものによって最適なグラスを用意し、温度管理も完璧、またお試しで違うグラスも…というお心遣いまで出来、ワインの造詣も深く、勉強熱心、イケメン、そしてお人柄も最高という、スーパーヒーロー並みのソムリエさんだった。
以前からお料理はもちろん素晴らしかったのだが、こういうソムリエさんがいらっしゃるとなるとワイン好きにとっては強烈な魅力のお店となる。
ワイン好きにとって、加瀬さんのお料理を楽しむことはもちろんのこと、このソムリエさんに会えるということでも価値を見出せると思う。
カブのピューレと剣先イカが乗ったタルトフランベ。
ブラックオリーブに見えるものはグリーンオリーブをイカスミで和えてある。
出来立てで提供されるので香ばしく、そして香り高い。
これは女性が可愛いと言って喜びそうな一皿。
くり抜いたトマトの中に、シェリービネガーであえた赤貝が。
アマランサスの葉がこんな色をしていたのにも驚いたが、エゴマの種など、食感も楽しく、紐と貝柱の部分はフリットしてあるという、細やかな工夫がされている。
京都のタケノコ。
マグロの生ハムとグリーンピース、葉わさび。
こういう、作り手が「何を食べて、どう感じてもらいたいか」がわかるお皿が出てくると、食べる側としては純粋に美味しさを感じることができる気がする。
これは子供も感激していた、オマール海老と里芋のグラタン。
豚トロがカリカリに焼かれていて食感の楽しさがある。
ソースも素晴らしく美味しかった。
西洋タンポポがほんのりとした苦味を、アスパラで野菜の甘みを加えてあり、統一感がある。
この日のお料理は、ヘルプとして近いうちに白金でお店を出すという、元カンテサンスにお勤めだった素晴らしい料理人がいらっしゃったこともあったのか、ソムリエさんの素晴らしいサービスがあったからなのか、キャンセルハイエナの白目でヨダレを垂らした形相が怖すぎたのかはわからないが、感動の連続だった。
決して気取らず、気軽に楽しめる一つ星のフレンチ。
サービス料もとっておらず、価格相応どころか、このお料理でこのお値段なら安すぎると思ってしまう。
サービス料に関しては、ソムリエさんが常駐したということもあり、近いうちにちゃんと取ってほしいと思う。
そうでないと、サービス料をとってないの?それはまずい、もっと飲んでなんとかサービス料的なものを支払いたい!という人々を泥酔に導くことになり、帰宅困難に陥らせるという二次災害が起こりうる。
ドタキャンをされても「いろいろとご事情があるでしょうから」と笑顔で許せる加瀬さんのお人柄に甘える礼儀知らずの人々ではなく、きっちりとマナーと常識のある常連さんが増えることを願う。
あ、でも、そうなるとキャンセルハイエナは予約が取れなくなってしまう…ということでほどほどにキャンセル神が出てきてくれるとありがたい(笑)