4日帰任…3カ月ぶり 少女像は未撤去
岸田文雄外相は3日、一時帰国させている長嶺安政駐韓大使と森本康敬釜山総領事を4日に帰任させると発表した。韓国・釜山の日本総領事館前に慰安婦を象徴する少女像が設置されたことへの対抗措置として大使らを帰国させたのは1月9日。政府はソウルの日本大使館前の少女像とともに撤去を求めてきたが、撤去の見通しは立たないまま、約3カ月ぶりに帰任させることになった。
韓国では朴槿恵(パク・クネ)前大統領が罷免、逮捕され、5月9日に大統領選の投票が予定されている。岸田外相は「政権移行期の中で、情報収集に一層力を入れ、次期政権の誕生に十分備える必要がある」と説明した。次期大統領の有力候補とされる「共に民主党」の文在寅(ムン・ジェイン)氏らは日韓合意に批判的な立場をとっており、日本政府は帰任時期を探っていた。
岸田氏はまた「北朝鮮問題に対処する上で、日韓間の高いレベルでの緊密な情報交換を行い、連携をはかる必要がある」とも述べ、弾道ミサイル発射や核実験を繰り返す北朝鮮に対応するためにも早期帰任が必要との認識を示した。
慰安婦問題を巡っては、朴前大統領時代の2015年12月の日韓合意で、日本政府が韓国側に10億円を拠出することなどによる「最終的かつ不可逆的な解決」を確認。韓国側が日本大使館前の少女像移転に「努力する」ことで一致している。
岸田外相は少女像の撤去について「韓国側からさまざまな説明を受けてきたが、結果に結びつくものではない」と見通しが立っていないことを認め、「長嶺大使から黄教安(ファン・ギョアン)大統領代行に直接、(日韓)合意の順守を強く働きかけ、次の政権に継承してもらう必要があると判断した」と述べた。
菅義偉官房長官は記者会見で、帰任まで3カ月かかった理由について「韓国側の政治状況を踏まえた中で、総合的な判断をした」と繰り返した。外務省幹部は3日、韓国大統領選について「文氏が候補に決まり、一両日中に選挙戦が本格化することも勘案した」と語った。【加藤明子】