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【鹿間孝一のなにわ逍遙】だまって3年は勤めなさい

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だまって3年は勤めなさい

鹿間孝一のなにわ逍遙更新
パナソニックの入社式。新入社員は、津賀一宏社長(前列左から3人目)と気勢を上げた=3日午前、大阪府枚方市 1/1枚

 初々しいスーツ姿に春を感じる。遅れていた桜の開花も追いついて、企業や官公庁の入社・入庁式が行われた。

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 毎年、新入社員の特徴を発表している公益法人日本生産性本部によると、今年は「キャラクター捕獲ゲーム型」だそうだ。ちなみに昨年は「ドローン型」だった。

 「ポケモンGO」世代と言った方がわかりやすいだろうか。

 売り手市場で、キャラクター(就職先)は数多くあり、比較的容易に捕獲(内定)できたようだ。一方でレアキャラ(優良企業)を捕まえるのはやはり難しい。

 ネット・SNSを駆使して情報収集し、スマホを片手に東奔西走しなければならない。必死になりすぎて、うっかり危険地帯(ブラック企業)に入らぬよう注意が必要だ。

 この世代は、はじめは熱中して取り組むが、飽きやすい傾向(早期退職)ある。企業は、モチベーションを維持するためにも、新しいイベントを準備して、飽きさせぬような注意(やりがい、目標の提供)が必要だ。

 的を射た、なかなか面白い分析である。

 政府は「働き方改革」に取り組み、電通の女性社員の過労自殺で社会問題になった長時間労働対策として、残業時間に上限を設ける。他にも不当な低賃金、パワハラなども是正するという。

 新入社員にとっては、働きやすい環境が整いつつあるといえる。

 ただ、残業=悪とする風潮には異論がある。残業とは時間だけで計れないものだからだ。

 作家の山口瞳さんは「新入社員に関する十二章」でこう書いた。

 〈残業をいやがってはいけない。残業をいやがるのは自分を侮辱することだ。私たちは時間で飼われているのではない。質的によい仕事をするため、仕事にきっぱりしたケジメをつけるために、規定の時間をオーバーして残業になるのである。自分の仕事を立派に完成するために時間外勤務の必要が生じたのである。〉

 山口さんは、

 〈だまって三年間は勤めなさい。それがエチケットというものである。〉

 とも言う。

 〈新入社員をいれるために、会社は厖大(ぼうだい)な費用をつかっているのである。どんなことがあっても三年はつとめて、そういう金の借りはきれいにしておく必要がある。〉

 意味は違うが、先輩から似たような言葉を聞いたことがある。

 「3日3月3年」

 職場や仕事に習熟する時間を指したもので、3日やれば3月もち、3月もてば3年続く。そうやってだんだん仕事になれていく、なじんでいく。

 そして知らず知らず、自分の仕事に生き甲斐を見出していく。それが「天職」なのである。

 「天職」になるか、それとも途中で「転職」するか。

 新入社員諸君! まずは3年やってみることである。

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鹿間孝一 鹿間孝一 産経新聞特別記者兼論説委員(平成25年9月まで大阪特派員を兼務)。北海道生まれの大阪人。生涯一記者を自任していたが、なぜか社命によりサンケイリビング新聞社、日本工業新聞社で経営にタッチして、産経新聞に復帰した。記者歴30余年のうち大半が社会部遊軍。これといった専門分野はないが、その分、広く浅く、何にでも興味を持つ。とくに阪神タイガースとゴルフが好き。夕刊一面コラム「湊町365」(「産経ニュースWEST」では「浪速風」)を担当。共著に「新聞記者 司馬遼太郎」「20世紀かく語りき」「ブランドはなぜ墜ちたか」「なにが幼い命を奪ったのか 池田小児童殺傷事件」など。司馬遼太郎に憧れるも、いうまでもなく遼に及ばず。