【ストーリー】
事故でダンサーになることを諦めた蒼子(辻元舞)は統合失調症となった恋人の健太(原雅)を献身的に支えながら、昼は会社員として、夜はデートクラブで働きながら、都会の片隅でひっそりと暮らしていた。 そんな中、日本を再び大地震が襲う。 健太は、精神病院で親の遺産で放蕩の限りを尽くす狂気の発明家であり、テロリストでもある保岡(渋江譲二)と出会い、彼が率いるカルト集団アモクに巻き込まれていく。 一方、蒼子は、故郷の自然からの虫のしらせに導かれ、震災で破壊された故郷へと帰って行く。こうして蒼子と健太は、夢とも現実ともつかない非日常の世界に誘われるように、各々の冒険を始めるのだった。 蒼子は故郷の自然の中で、汚染された故郷の大地と海が再生していることを悟り、希望を取り戻す。一方、健太は旅の過程で、蒼子のデートクラブの客でもあった、謎めいた青年ジュンジ(北川瞬)、そして過去に蒼子の命を救った類人猿シバゴンとの出会いを経て、蒼子という存在を再認識していく。 旅を終えた二人は東京で再会を果たすのだが・・・。
【プラシーボについて】
東日本大震災は日本人の心に大きな動揺をもたらした。 「プラシーボ」は日本人の混沌とした心の内をファンタジーの形を取りながら、大胆にカリカチュアライズした映像詩だ。 撮影されたのは2014年。まだ地震の傷跡が残る福島県の原発10km圏内で敢行された。映画に登場する富岡駅は、現在では放射能を除染した土の袋で埋め尽くされ、海岸には巨大な防波堤が建設されている。 美しい海岸線はもう、映像の中でしか見ることはできない・・・