病院で大暴れする6歳の長男。注射の前に言った、驚きの言葉とは

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「びょういん」という言葉を聞くだけでパニックを起こす長男。院内で暴れる長男は手に負えず、私はいつしか病院に連れていくことを躊躇していました。しかしいよいよ小学校進学を前に【予防接種】の壁が立ちはだかるのです。

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発達障害の息子の天敵…それは「病院」

もうすぐ小学生になる長男は大の病院ギライ。風邪で「きょうは病院に行こう」と伝えただけで大パニックを起こします。

ようやく病院に連れて行っても、ロビーでは大暴れ。「順番を飛ばしてください」とお願いし続け、気づけば最初に呼ばれてから1時間経っていることもザラでした。

そして診察室でも脱走を繰り返し、なかなか指示に従えず時間を取り、しまいには先生に叱られてしまうことも。

長男が病院を嫌う理由に「押さえつけられるから」というものがあるようです。

ただ、暴れる長男を押さえなくては処置ができない。押さえられるから更に暴れるという負のスパイラル。

長男も辛いが、私も辛い。そしていつしか、ちょっとやそっとでは病院には行かなくなりました。

ついに来てしまった…!「予防接種のお知らせ」

幸い、通院が必要なほどの病気にかかることもなく、最後に病院に行ってから数ヶ月が経ったときのこと。区からある通知が来ました。

【予防接種のお知らせ】

年度末までに受けなければいけない予防接種があるというのです。

ついにきてしまったか…そう思いましたが、こればかりは仕方ありません。

それから時々、「◯◯くん、今度病院で注射をしに行こうね。」と注射を匂わせる会話をしてみるものの、

「いやだ!!びょういんはいかない!ちゅうしゃはしない!!」

と絶叫…。予想はしていましたが、「病院にはあした電話しよう」「やっぱり週明けにしよう」と予約すらためらってしまうのでした。

とは言え、期日は刻一刻と迫っています。主人にも同伴をお願いできる日に予約をとることにしました。

恥ずかしながらそのときの私には、「夫婦で長男の両脇を羽交い締めにして、泣き叫ぶ長男を”押さえ込む”」という方法しか思いつかなかったのです。

予防接種の前日。泣かれることを覚悟で長男に注射のことを伝えると、思いもよらぬ言葉が

いよいよ明日は予防接種。

「いやだー!いかない!ちゅうしゃはしない!!!」…と毎度のごとく言われることを覚悟しながらも、私は長男に伝えました。

「明日は病院で注射をするんだよ。病気にならないように、元気でいられるために注射するんだよ。」

すると、長男は小さい声でこう言ったのです。

「なかないようにする。」

私はこれまで長男に、「泣くことは恥ずかしい」とか「格好悪い」「やめなさい」などと言ったことは一度もありません。

彼が「なかないようにする」と言った背景に何があるのかはわかりませんでしたが、驚きと頼もしさで涙が出る思いでした。

いよいよXデー。さて、息子の様子は…?

いざ予防接種へ!息子が暴れても大丈夫なように、動きやすい服装とコンパクトな荷物で出かけます。

私「今日は何をする日?」
長男「びょういんいって、ちゅうしゃ」

意外や意外、パニックを起こすことなく答える長男。病院に着いてからも、

私「ドキドキしてるんだね。一人で行く?抱っこでいく?」
長男「だっこしない、ひとりでいく」

と落ち着いた様子でした。

私「どこに注射するの?」
長男「(腕をまくって)ここにする」

そんなやりとりでできるだけ見通しをつけ、自分の言葉で次の行動を宣言してもらいます。

そしてついに「◯◯さ〜〜ん、診察室へ」と、名前が呼ばれました。
長男は診察室に入るや否や、「パパとママはそとにいて」と私たちの入室を拒みました。押さえられる予感がしたのでしょう。

三歩進んでは二歩下がりながらも、長男はひとりで先生の前の椅子に座りました。

ところが両サイドを固めるナースさんが腕を押さえようとした瞬間、「いやだ!!やめろ!!あっちいへいけ!!」と払いのけました。

これはいよいよマズい予感…やっぱり大暴れしちゃうかな?ヒヤヒヤしながらも、私と夫は遠巻きに見つめていました。

そのとき先生がこうおっしゃいました。

「わかったわ。先生が一人で注射します。誰も押さえない。代わりに、あなたじっとしててよ。先生、あなたを信じるわ。

そのあと、なんと長男は本当に少しも動かずに、自分でしっかりと椅子に座り、予防接種を受けたのです。

一滴の涙もこぼさずに。

子どもはいつの間にか成長している。「信じる」「待つ」という選択を大切にしたい。

もちろん、毎回このようにうまく行くことばかりではないと思います。

病院が混んでいたら、このようにじっくりと対応していただくのも難しかったかもしれません。何より、私がついつい周囲の目を気にして、長男のタイミングを「待つ」ことができなかったでしょう。

それでも今回の注射のあと、長男はとっても嬉しそうにナースさんや先生方、事務の方全員に挨拶をしていました。

「嬉しいね、今嬉しいんだね」と、先生もナースさんもみんなが長男の姿を喜んでくれました。

今回の一件で、私が知っている姿が子どもの全てではないこと、子どもは親も知らぬ間に小さな胸の中に自分のポリシーを育てているということを思い知りました。

親はついつい子どもの考えや行動を「それは無理だ」と先回りしてしまいがちです。でも「なかないようにする」と言った彼の言葉を、気持ちをもっと信じよう。大切にしよう。そう思えたのでした。

反省とともに、小学校進学へ向けてまた新しい希望が見えた気がしました。
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