理化工業ホーム > 技術解説ホームページ > カスケード制御と外乱応答の改善
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1.フィードバック制御による外乱応答の改善 | ||||||||||||||||||||||||||
調節計を用いた計装の目的は、所望する目標値(温度の設定など)にプラントの状態(測定温度)を素早く収束させ、いかなる外乱に対しても目標値とプラントの状態の差を常に"0"にする事にあります。 では、フィードバック制御において外乱による制御状態の乱れをどのようにして抑制しているのか、図1に示す温度調節計(温調計)を用いた薬液の温度制御を例に考えてみます。 |
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図1:薬液の温度制御 |
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この制御系は、弁の開度でスチーム流量を可変し薬液温度を制御するもので、外乱の要因としてはスチームの温度変化、スチームの圧力変化などが想定されます。 もしこの系にこれらの外乱が生じた場合、フィードバック制御ではその影響が薬液温度の変化として現れるまでは調節計による修正動作を行えないため、外乱による応答の乱れを迅速に収束させるには限界があります。 図2にスチーム温度が低下した場合の応答例を示します。 |
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図2:スチーム温度が低下した場合の応答例 |
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2.フィードフォワード制御併用による外乱応答の改善 |
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前記図1の制御系において、スチーム温度の変化が測定可能であり、かつ、スチーム温度の変化に対する適切な修正量(開度出力:MV)が明らかになっていれば、フィードフォワード制御を併用することでフィードバック制御のみの場合よりもスチーム温度変動に対しては制御結果の改善をはかることが可能です。(図3) |
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図3:スチーム温度のフィードフォワード併用制御の例 |
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図3に示したフィードフォワード制御系は、スチームの温度を検出しスチーム温度の変動が生じた場合にいち早くこの変動に対する修正を行うため、スチーム温度が変化するという外乱に対しては薬液温度の変動を最小限に抑えることが可能になります。 しかし、スチーム温度の変化に対して薬液温度が影響を受けないスチーム流量の決定(外乱とプロセスの状態変化の関係)を正確に把握することは一般的に困難なため、フィードフォワード制御の併用により制御結果が改善できる場合は限定されます。 (参考:フィードバック制御とフィードフォワード制御) また、図3のフィードフォワード制御系はスチーム温度に対してのみ補償しているため、スチームの圧力変動に対しては有効に働きません。 |
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3.カスケード制御による外乱応答の改善 | ||||||||||||||||||||||||||
図1に示す制御系で想定される外乱は、「スチーム温度の変化」と「スチーム圧力の変化」であり、どちらの場合もそれぞれの変化により薬液に供給されるエネルギー量に変化が現れ、その結果として薬液温度の変化が生じています。 このことから、スチームの温度や圧力が変動したとしてもスチームにより薬液に供給されるエネ ルギー量が一定に保たれていれば薬液温度は一定値に保たれるはずです。 このような観点から、薬液に供給されるエネルギー量を薬液槽下部の温度として検出し制御するループを付加した制御系が考えられます。(図4) 図4のような多重ループ構成の制御方式を「カスケード制御」といい、以下のように動作します。
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図4:カスケード制御ループ |
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また、ブロック図を用いて表すと図5のようになります。 |
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図5:カスケード制御ループのブロック図 |
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カスケード制御では、スチームの温度や圧力の変化が生じると、<SLAVE>調節計がこの変化を薬液槽下部の温度変化として検出し、<MASTER>調節計から出力された薬液槽設定温度との温度差を"0"にするように弁の開度を調節するため、図1の単純なフィードバック制御系よりも外乱による温度の乱れを迅速に抑制できることがわかります。(図6) |
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図6:カスケード制御の応答(フィードバック制御との比較) |
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4.カスケード制御のまとめ |
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カスケード制御による外乱応答特性の改善のしくみをご理解いただけたでしょうか? 図5に示しましたが、カスケード制御では制御ループが2重になっており、本来の目的である制御量(薬液温度)をフィードバックしているループを「マスターループ」もしくは「メジャーループ」、マスターループの内側に構成されるループを「スレーブループ」もしくは「マイナーループ」と呼んでいます。(図7) |
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図7:カスケード制御ループのブロック図 |
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今回ご紹介した例のように、カスケード制御によって外乱に対する応答を効果的に改善するためには、
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カスケード制御の例 |
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