規制緩和は不要だが、
今のままの「解雇規制」で良いのか
これまで見てきたように、雇用とは契約であり、解雇規制とは「契約をしたら、その内容は守りましょう」というだけのことである。労働契約法第16条に定められているのも、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」ということであり、これを緩和するのは難しい。契約を守らなくても良いとか、合理的な理由がなくても、また社会通念上相当でなくても解雇できるとすることは不可能なはずだ。これが解雇規制の緩和は不要だと筆者が考える理由である。
ただし、解雇についてのルールが今のままで良いと考えているわけではない。まず世間では、解雇は難しい、または実質的には解雇できないなどと誤解されている。したがって規制内容を周知することが必要だろう。
また、裁判になってみないと解雇が有効か無効かが分かりにくいという予見可能性の低さも指摘されている。これに対しては、規制内容のさらなる明確化が必要だろう。もちろん労使関係は、個別のケースにより異なるため、明確な基準を定めるということは不可能だ。しかし、どのようなケースでは解雇が認められるのかという具体的な事例を紹介することや、どのような手続きを踏めば良いのかというガイドラインを定めることなどは有効だと思われる。
さらに、特に中小企業では、乱暴な解雇が行われている実態もある。そのような行為が知識の欠如により行われているとしたら、やはり正確な知識を周知することが必要だろう。また、正確な知識を踏まえた上で乱暴な解雇が行われているのであれば、必要なのは規制に実効性を持たせるための取り組みである。
今回のシリーズにおいて八代尚宏氏(第2回参照)は、解雇の金銭補償についての議論を行っている。本来は、仕事ができなくなった場合や仕事がなくなった場合には解雇はできる。その意味では、解雇を行う際にどのような金銭支払をするかは、労使が契約で定めれば良いことであり、政府が義務付ける必要はない。ただし法制度の運用や契約の履行にかかる費用面に注目すると、中小企業などにおいて解雇規制に実効性を持たせるための次善の策として考えるのであれば、金銭補償のルール化は、十分に検討に値する施策であると言えよう。
限定正社員と無限定正社員の違い
次に、解雇規制の緩和とともに議論されている「限定正社員の活用」について考える。
まず、限定正社員とはどのような働き方なのか。それを理解するためには、限定正社員ではない正社員(いわゆる無限定正社員)について知ることが有益だ。
正社員とは、「無期雇用・直接雇用・フルタイム」という3つの条件を満たす働き方のことを指す。これに加えて、仕事の内容や勤務地などを契約では特定せずに、使用者側の裁量で決定できる契約になっていることも多い。これを「無限定」という。これに対して、正社員の3条件を満たしていても、仕事の内容や勤務地などが契約で特定されていれば、限定正社員となる。
限定正社員という雇い方・働き方はこれまでも可能であった。特に新しい働き方というわけではない。例えば大企業などでは、転勤がない準総合職のような雇用形態がこれまでも用いられている。