エクアドル大統領選 開票開始 アサンジ容疑者の処遇に影響か

南米エクアドルで大統領選挙の決選投票が行われ、開票作業が続けられています。10年間続く左派政権が今後も維持されるのか、それとも右派政権に変わるのかが焦点となっているほか、現政権が4年以上保護してきたウィキリークスのアサンジ容疑者の処遇が変わって逮捕につながるかどうかも注目されています。
エクアドルの大統領選挙はことし2月、8人が立候補して投開票が行われましたが、当選に必要な過半数の得票に達した候補者がおらず、1位だったモレノ前副大統領と、2位のラソ元経済・エネルギー相が決選投票に進みました。

決選投票は2日に行われ、日本時間の3日午前7時で締め切られて、開票作業が続けられています。モレノ氏は反米左派のコレア大統領の後継候補で福祉の充実を訴えているのに対し、右派のラソ氏は自由貿易の推進を掲げています。
南米各国で経済政策の行き詰まりなどにより左派政権から右派政権への転換が相次ぐ中、エクアドルでは10年間続く左派政権が今後も維持されるのか、それとも右派政権に変わるのかが焦点です。

また、選挙戦では、国際手配されているウィキリークス代表のアサンジ容疑者を、反米左派政権がロンドンにあるエクアドル大使館内で4年以上保護してきたことの是非も争点となりました。アサンジ容疑者に立ち退きを求める考えのラソ氏が当選すれば、アサンジ容疑者の処遇が変わって逮捕につながる可能性もあり、選挙の結果が注目されます。

エクアドル大統領選挙は、日本時間の3日中にも大勢が判明する見通しです。

欧米各紙「アサンジ氏の命運握る選挙」

ジュリアン・アサンジ氏が代表を務めるウィキリークスは内部告発によって提供された機密文書をインターネット上で次々に公表してきましたが、2010年に、アメリカのアフガニスタンでの軍事作戦に関する機密情報や、アメリカ国務省の内部文書を公開すると、世界に衝撃が走り、アメリカ政府はアサンジ氏の刑事責任を問う方法を模索し始めます。

そうした中、アサンジ氏に対しては、スウェーデンで女性に乱暴した疑いで現地の当局から逮捕状が出されるとともに国際手配され、2010年12月に滞在先のロンドンで逮捕されます。その後、イギリスの裁判所がスウェーデンへの身柄の引き渡しを認めると、保釈されていたアサンジ容疑者は、最終的にアメリカへ身柄が移されることをおそれ、2012年6月、ロンドンにあるエクアドル大使館に駆け込み、亡命を申請しました。

アサンジ容疑者が「逮捕には政治的な狙いがある」と主張したのに対し、エクアドルの反米左派のコレア政権は「人権の侵害が懸念される」などとして8月に亡命を認めました。しかし、イギリス政府は出国を認めず、大使館の外に一歩でも出れば逮捕する構えを崩さなかったためアサンジ容疑者は大使館から出られなくなり、滞在期間は4年半を超えています。

アサンジ容疑者を今後も保護し続けるべきか、という点はエクアドル大統領選挙の争点の1つにもなり、左派のモレノ候補が保護を継続するとしているのに対し、右派のラソ候補は大使館から立ち退くよう求めるとしています。

このためラソ候補が当選すれば、アサンジ容疑者が大使館から出されて逮捕される可能性があり、欧米メディアは「アサンジ氏の命運はエクアドルの選挙にかかっている」とか、「アサンジ氏は自身の未来を決めるエクアドルの選挙の結果を待っている」などという見出しで、今回の選挙を報じています。

有権者は

エクアドルの首都キトにある投票所では2日、次々と有権者が訪れて1票を投じていました。このうち、10年にわたって反米左派政権を率いたコレア大統領の後継候補のモレノ氏に投票したという45歳の建設業の男性は、「この10年間でこんなに公共事業をつくり出した政府はない。それを国民は認識しなければならない。これからも、さらに前進させてほしい」と話していました。
また、アサンジ容疑者については、「保護されるべきだと思う」と述べて、引き続き、ロンドンにあるエクアドル大使館への滞在を認めるべきだと話していました。

一方、右派の候補のラソ氏に投票したという48歳の自営業の男性は、「この10年間、経済の状況が芳しくないので政権交代して状況が改善することを望む」と話していました。
また、アサンジ容疑者については、「彼は自身の潔白を証明すべきだ。エクアドルはこの問題と全く関係がないので、大使館にとどまるべきではないと思う」と述べて、アサンジ容疑者を大使館から立ち退かせるべきだと話していました。