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4水族館がJAZAを脱会 背景に国際圧力に屈しない“姿勢”とイルカ入手体系“確立”

4水族館がJAZAを脱会 背景に国際圧力に屈しない“姿勢”とイルカ入手体系“確立”

 日本動物園水族館協会(JAZA)が国際的圧力を受け加盟施設に日本伝統の追い込み漁でのイルカ入手を禁じた問題で、新江ノ島水族館(神奈川県)や下関市立しものせき水族館「海響館」(山口県)など4施設が、JAZAを退会したことが2日、分かった。少なくとも2施設は、漁での将来的な入手継続を決断し、退会に踏み切った。

 追い込み漁を続ける和歌山県太地(たいじ)町の町立くじらの博物館が平成27年9月に退会して以降、新たな退会が判明したのは初めて。

 JAZA退会について、新江ノ島水族館の担当者は「追い込み漁は国が認める合法的なもの」と説明した。しものせき水族館の担当者も「捕鯨文化を否定するようなJAZAの方針は容認できない」と話している。

 イルカの入手をめぐっては、世界動物園水族館協会(WAZA)が太地町の追い込み漁を残酷だと批判。27年4月にJAZAに対し、改善・除名通告を行った。

 これに対し、JAZAは同年5月、通告受け入れの是非を問う会員投票を実施。その結果、会員数の多い動物園を中心にWAZA残留の希望が多かったため、追い込み漁からのイルカの入手禁止を決定し、繁殖中心に切り替える方針を示した。

「追い込み漁」必要根強く

 今回の水族館のJAZA退会の背景には、国際的な反捕鯨の圧力に屈しないとする“抵抗”に加え、水族館の誘客の目玉とされるイルカの将来にわたる安定的な入手体系を構築しようとする意図がある。JAZAが示した繁殖を中心とした仕組みは、中小の水族館には技術や施設面でのハードルが高く、今後も退会が続く可能性がある。

 JAZAが国際的圧力に屈する形で漁からの入手を禁じた平成27年5月の決定には、日本伝統の捕鯨文化を自ら否定することへの根本的な嫌悪感を示す施設が少なくなかった。退会した、しものせき水族館の石橋敏章館長も「国が認める漁法をJAZAが禁止するのは納得がいかない」と訴える。静岡の施設関係者もJAZAへの反発を退会の理由の一つに挙げる。

 さらに、イルカを突破口として、あらゆる動物に保護の矛先が向くのではないかとする懸念も噴出。関係者によると、JAZAの決定後も、反捕鯨団体を中心とした動物愛護団体からのサイバー攻撃に苦しめられている加盟施設もあるという。

 退会を決めた蒲郡市竹島水族館(愛知県)の関係者は「イルカを飼育していないのにサイバー攻撃を受けた施設もあるという。JAZAに加盟するメリットはない」と言い切る。

 一方、イルカの安定的な入手には、和歌山県太地町などで実施の追い込み漁は欠かせないとの声もある。

 JAZAが示した繁殖には、一定の技術力が求められるほか、妊娠したイルカを保護するため専用の施設が必要になる。関係者は「施設間でイルカを融通しあうのも限界がある。今後、漁からの入手に踏み切らざるを得ない施設は一定程度あるのではないか」とみている。

 さらに施設での繁殖だけになれば、遺伝的多様性が失われるとの危惧もある。

 退会した新江ノ島水族館は繁殖に半世紀にわたり力を入れ、数世代目のイルカもいるという。その上で退会を選択した理由について担当者は「将来の繁殖に際し、太地など外部からの新たな個体の入手が必要だと判断した」と説明する。

 漁の地元以外の4施設の退会。関係者は「イルカをすぐに必要としていない施設の退会の意味は非常に大きい」と話している。

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