ヤマト運輸(東京)の長野県内の営業所で、従業員の男性=当時(46)=が上司に暴行や暴言などのパワハラを受け自殺したとして、男性の妻ら遺族が、同社と当時の上司に計約9500万円の損害賠償を求める訴訟を長野地裁に起こした。遺族側代理人の鏡味聖善(かがみ・まさよし)弁護士が31日、長野市内で記者会見を開き、発表した。
鏡味弁護士によると、男性は平成元年に入社。県内の営業所でドライバーとして勤務を始め、同15年に同営業所のセンター長に就任した。その後、23年に被告が男性に代わってセンター長に着任し、24年秋ごろから暴言や暴力がなされたという。男性は「いつか殺されるかも」などと周囲に話していたといい、26年9月ごろに鬱病を発症したとみられる。27年1月に自殺した。
男性が残した録音には、被告である当時の上司が「半身不随にでもしてやろうか」「その場で叩き殺すぞ」「組合でも何でも泣きつけ」などと暴言を浴びせる音声が記録されていたという。
遺族は27年8月に労働基準監督署に労災を申請し、昨年3月に認定された。遺族側は労災給付では不十分として今年2月28日付で提訴した。録音のほか、暴行された傷跡を撮影した写真や医師による診断書が証拠として地裁に提出された。
鏡味弁護士は記者会見で「当時の上司が行ったことが不法行為であることは明らかだ。社会を支える重要な企業で、過重労働以外にパワハラなどの悪質な労働環境があることを知ってもらいたい。同じことが二度と起こらないようにしたい」と述べた。
第1回口頭弁論は4月28日に長野地裁で行われる。裁判では、暴言や暴力といったパワーハラスメントの事実、内容の程度、病気や自殺との間に因果関係が認められるかなどが争点になるとみられる。
ヤマト運輸の広報担当者は「係争中のためコメントできない。弁護士と相談して対応する」としている。
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