記事詳細
【主張】
文科省天下り 法無視して教育語れるか
文部科学省が天下り斡旋(あっせん)問題の最終報告書をまとめ、不正に関わった歴代事務次官を含む43人の処分を発表した。
組織ぐるみで法を無視してきた実態にはあきれる。不正を生んだ土壌を含め、さらなる検証と再発防止を求めたい。
平成20年施行の改正国家公務員法で、現職職員による再就職の斡旋や利害関係のある企業・団体への在職時の求職行為が規制された。
文科省の天下り斡旋システムはこれを契機に導入され、22年から62件の違法行為が確認された。
人事課OBを介して始まったことから、違法性はないとの認識が続いていた。法令順守への意識の低さは深刻だ。当時の人事課長が直接関与した違法行為も見つかった。歴代3次官が停職相当とされるほど幹部の関与も大きい。
ブルガリア大使に就いていた元次官が大使を辞職し、対外的にも信頼を失う事態である。
改正法は一律に天下りを悪いというのではなく、官と民の癒着を疑われないよう透明性を持った再就職のルールを定めたものだ。
官僚が「裏口」を設けてかいくぐるやり方は、国民の信頼を根底から損なう。
大学などへの天下り斡旋が目立つ。外務省OBの元大使の人事情報を提供するなど他省庁OBの再就職に関わった事案もあった。個人の能力を生かすとしても、ルールを守るのは当たり前だ。
大学など学校法人には国から多額の助成金が支払われ、文科省は学部新増設など多くの許認可権を持つ。利害関係にあることへの緊張感が足りない。大学側も、天下りを受け入れた場合のメリットを計算していなかったか。
松野博一文科相は「失われた信頼を取り戻し、新生文科省をつくり上げる取り組みを進める」という。同時に、文科省と大学の関係も問い直してもらいたい。
政府は他の省庁の調査も進めている。天下りはみんなやっている、という疑念を残さぬよう、徹底して行う必要がある。
天下り規制強化と合わせた省庁縦割りや年功序列人事の見直しはどうなったか。同期が次官に就くと、定年前の局長らが天下る慣行はなくなっていない。
定年の延長も検討課題だろう。適材適所で官僚の能力を生かす改革がなければ、天下り根絶は図れない。