活字は読む者の理性を刺激するが、映像は観る者の本能を刺激する。爆撃で幼い子供の皮膚がただれ、虐殺で捕虜の頭が撃ち抜かれる。これを映像で見たときの衝撃は強烈だ。
第二次世界大戦の終結から70年以上経った。世界では戦争が続いているが、日本はあと十数年すると戦争体験者がゼロになる。残された私たちは、活字や映像で戦争を知るしかない。
今回は、私がこれまで観た戦争映画の中で、心に残った作品を紹介したい。
プライベート・ライアン
スティーヴン・スピルバーグ監督による1998年のアメリカ映画。第二次世界大戦のノルマンディ上陸作戦で、一人の兵士を救出する物語。主演はトム・ハンクスで、救出されるライアン役はマット・デイモンが演じた。ハンディカメラで撮影された臨場感のある映像と、リアルな音響。そして、自分を犠牲にして他人を救う利他精神。戦争映画の名作を一つだけ上げるとしたら、私はこの作品を選ぶ。
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アメリカン・スナイパー
クリント・イーストウッド監督による2014年のアメリカ映画。イラク戦争で伝説になった実在の狙撃手、クリス・カイルを描いた作品。スコープから覗く映像、標的の母と子、クリスの息遣い、銃弾の音、そして砂ぼこり。監督が狙撃シーンにリアリティを追求したのは、クリスの苦悩を伝えるためだ。クリスは帰国しても妻や子供と心が通わず、なんとか平穏を取り戻すものの、最後は結末を迎える。戦争の犠牲者は戦死者だけではない。
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ハート・ロッカー
キャスリン・ビグロー監督による2008年のアメリカ映画。アメリカ同時多発テロ事件後のイラクを舞台に、爆弾を処理する兵士を描いた物語。中東特有の渇いた映像と、爆弾を解除する緊張感が見事に融合している。自爆テロは不条理だ。映画の中で体内に爆弾を埋められた子供が登場する。やり場のない憤りを感じるはずだ。
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カティンの森
アンジェイ・ワイダ監督による2013年のポーランド映画。第二次世界大戦で起こったソ連によるポーランド人虐殺事件を描く。シリアスなストーリーに伏線を絡め、最後にきっちり繋げる脚本は見事だ。この映画の衝撃はラストで訪れる。誰しもが憤り、誰しもが良心の存在を疑う。そんな事実に直面し、激しく胸を衝かれるはずだ。
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フルメタル・ジャケット
スタンリー・キューブリック監督による1987年のアメリカ映画。ベトナム戦争が題材で、前半と後半でストーリーが分かれている。前半は海兵隊訓練所のシーン。教官の強烈な罵倒により、訓練兵の精神が崩壊していく過程を描く。後半はベトナムでの戦闘シーン。狙撃兵のベトナム人少女と、アメリカ人の新兵の間で生まれるドラマを描く。人の心は柔らかい。メタルで覆っても崩れ落ちるのだ。
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こうして並べてみると、人の心に焦点を当てた作品を選んでいることに気づく。解像度の高い映像は要らない。臨場感のある映像に心を打つ物語が重なると、何度も観たくなる名作になるのだろう。
私が見逃している名作があればぜひ教えて欲しい。