米ベンチャー企業 回収ロケット再打ち上げに初成功

米ベンチャー企業 回収ロケット再打ち上げに初成功
アメリカの宇宙開発のベンチャー企業が、1回打ち上げたあと回収したロケットを再び利用した打ち上げに初めて成功し、今後、ロケットの打ち上げコストの大幅な削減が実現するか注目されています。
アメリカの宇宙開発のベンチャー企業「スペースX」は、従来、使い捨てが常識とされてきたロケットを再利用してコストを下げようと、打ち上げたあと特定の場所にみずから飛行して戻ってくるロケットの実験を繰り返してきました。

そして、今回、去年4月に国際宇宙ステーションに物資を輸送するために打ち上げ回収したロケットを整備して、初めてとなる再利用のロケットを使った打ち上げに臨みました。

日本時間の31日午前7時半前、ロケットは南部フロリダ州にあるケネディ宇宙センターから飛び立ち、およそ30分後、搭載していた人工衛星が切り離されて打ち上げは成功しました。

また、打ち上げて上昇したロケットはおよそ65キロの上空で切り離されたあと大西洋上の無人の船の上に着地し、再び、回収することに成功しました。

スペースXは、今後も再利用のロケットによる打ち上げを繰り返す計画で、打ち上げコストの大幅な削減が実現するか注目されています。

イーロン・マスクCEOは「ここまで15年かかり、長い道のりだったが、きょうは宇宙産業全体にとって特別な日となった。ロケットの中で最も高価な部分を再利用でき、大きな革命となる」と話しています。

スペースシャトルに代わり宇宙への輸送担う

スペースXはアメリカ・カリフォルニア州に本社がある宇宙開発のベンチャー企業で、IT業界で成功したイーロン・マスク氏が2002年に設立しました。設立からわずか10年の2012年、民間の企業として初めて、無人のロケットで打ち上げた宇宙船と国際宇宙ステーションとのドッキングに成功し、現在、NASA=アメリカ航空宇宙局と国際宇宙ステーションに物資を輸送する契約を結ぶ民間企業の1つとして、財政難から6年前に引退したNASAのスペースシャトルに代わって宇宙への輸送を担っています。

スペースXは、人や物資を地球と宇宙の間で行き来する宇宙ビジネスを成り立たせるためには、ロケットを何度も再利用して打ち上げコストを大幅に下げることが欠かせないとして、ロケットを再利用する技術の開発に取り組んできました。

おととし12月には、打ち上げたロケットを地上に垂直に着陸させて回収することに成功したのに続き、去年4月にはより技術的に困難とされる、海上の無人の船の上に着地させるのに成功しました。そして、今回、回収したロケットを再利用した打ち上げに、初めて成功しました。

スペースXによりますと、現在、ロケットの打ち上げにはおよそ70億円かかりますが、再利用すると大きなコストの削減が可能になるとしています。

今回の成功の後、イーロン・マスクCEOは再利用したロケットの打ち上げを年内に、複数回、行うと明らかにし、「次の目標は24時間以内の再打ち上げだ」と話しています。

スペースXはこのほか、来年後半にも民間人2人を乗せて月を周回する旅行を行うため宇宙船を打ち上げるとしているほか、2024年に有人の宇宙船を打ち上げ、火星に着陸させる計画を発表しています。