私が地域おこし協力隊を辞めた理由

昨年の10月より、ここ和歌山の本宮で田舎暮らしを満喫していますが、3月末をもって地域おこし協力隊は辞めることにしました。

この約半年の間に、協力してくれる仲間や応援してくれるじいちゃん、ばあちゃん、都会では知り合えなかった人たちと知り合うことが出来ました。田舎っていいなって身をもって感じ、本当にここに来てよかったと思ってます。なので、結論から言うと、地域おこし協力隊は辞めますが、もうしばらく、ここ和歌山で生活していく予定です。

ところで、現在、2000人を越える地域おこし協力隊が全国にいます。この制度はとてもすばらしいものだと思っています。が、システムの運用側にたくさんの問題を抱えています。半年の地域おこし協力隊で何を思って、何で辞める選択をしたのかを書かせてもらうことで、少しでも運用側が改善してもらえたらと思ってます。

地域おこし協力隊というのは、地域により、2つのやり方があります。1つは、地域のミッションなどもなく、自ら見つけるやり方。もう一つは、地域の決められた仕事が前提にあり、それにプラスして生業を見つけていくやり方。私はこの仕事が決められた後者の地域おこし協力隊として派遣されました。

派遣されたのは、「田辺市行政局→本宮行政局→四村川活性化委員会」です。四村川活性化委員会は、朝市の運営、あまごの養殖、わさびの栽培を行っている団体と聞いていました。が、実際は、特に朝市の作業のほとんどは行政が行っており、団体のみでこの3つを運用できているわけではありませんでした。

例えば、私が一番関わった朝市の運用業務を下記に明記します。
1,野菜の集荷 → 行政で実施
2,野菜の一部パッキングと値札付け → 行政
3,朝市前日の野菜の運搬およびのぼりなどの準備 → 行政
4,朝市のオープン → (行政)&活性化委員会
5,朝市のクローズド作業 → (行政)&活性化委員会
6,売れ残り野菜の運搬 → 行政
7,売上の集計作業&会計 → 行政
8,売上金の配布作業 → 行政
上記を見ていただければわかると思いますが、ほぼ、行政が実施しています。
これは、団体が甘えていることもありますが、私は行政が地域を甘やかしていることが大きな原因だと思います。この朝市はいずれ行政から団体に引き継がなければなりません。しかし、その引き継ぎを考えられておらず、団体独自での運用が可能な仕組みになっていません。お互いがお互いに頼り切ってしまっていることから、今後、行政の支援がなくなったらどうなるかは、もう、おわかりかと思います。

私は朝市の業務を行いながら業務の改善を話してきました。最初の半月は、業務を主に実施している地域支援員(行政内での人員)さんと一緒に作業をし、これを変えたらいいんじゃないかと話したりしてました。しかし、地域支援員さんは作業員であり、ビジネスとしての視点を見ることはできず、今までのやり方や業務を変える気がないということに気づきました。それで、本宮行政局の課長・係長と話をしましたが、そこで言われたことは「一切、何も変える必要はない」と言うことでした。地域おこし協力隊で、地域を変える必要はないと言うのです。

私には、仕事が用意されていました。その多くが朝市運用に関する業務です。その依頼されたことに関しては1度も断ることなく、実施してきました。それでも、仕事がない日があったりします。

日曜日 → 休み
月曜日 → 休み
火曜日 → 売上金の配布
水曜日 → 何かあれば言われた業務をするもしくは視察としていろいろまわる
木曜日 → 何かあれば言われた業務をするもしくは視察としていろいろまわる
金曜日 → 野菜の集荷作業&値付け&野菜の運搬
土曜日 → 朝市オープン作業
基本的には、水曜日と木曜日に関しては業務が特にない日となります。

この空いてる日や時間で自分ができることをやってしまおう!とはじめたのが「熊野野菜セレクトボックスのネット販売」でした。これを実施した目的は下記の2つです。
1,ばあちゃん、じいちゃんたちが自分の野菜に誇りを持ってもらうこと
よく「残ったら捨ててくれていいよ」と言うのです。とっても美味しい野菜を作ってます。そこに自信を持ってほしいし、それが素晴らしいことだと気づいてほしかった。
2,朝市で残りがちな野菜(クレソンなど)を違った販路で売る方法を見つけたい
田舎では売れない野菜というのがあります。でも、都会では高く販売されていたりする野菜です。それを都会に知ってもらうことで売れないかと思いました。

この「熊野野菜セレクトボックス」は、四村活性化委員会から朝市で残りがちな野菜を買って私がボックスに詰めて発送する流れにしました。私だけが儲かるのではなく、野菜を販売するルートをこうやって作っておけば、今後、委員会にもメリットになるからです。

販売された野菜については、SNSにアップしてもらったり、イベントで食べてもらったり、コメントや写真を投稿してもらいました。これをじいちゃんやばあちゃんにプリントして持っていったりしました。これが野菜づくりの原動力になってくれたら。都会と田舎を繋げることって素晴らしいですよね!実際、下記のようなコメントや写真がアップされました。

しかし、行政内では、これは地域おこしの仕事ではないと言われました。それは、本宮行政局だけではなく、田辺市からもです。正式な文章で下記、もらいました。

ちなみに、正式な文章には書かれていませんが、この業務を認めるには、野菜の仕入れ値を今の1,5倍や2倍で購入するのであれば認めるってことも言われ、それは違うなと。w

もう1つ。野菜を販売していて、「野菜を買いたいけど、食べ切れる自信がない」というコメントをもらったこともあり「熊野野菜 孫思いすーぷ」を作って、野菜の消費を手軽にできるようにしてみました。

四村川活性化委員会には、ほぼ使われていない加工所がありました。惣菜許可も取られており、ここでお惣菜などを作って販売することが可能です。これを活用しよう!ここには、真空パックの機械もあり、十分な設備になります。

実際に2017年1月からスープを販売開始しました。
現在までに250食以上、ご購入いただきました。
販路もいろいろ伸ばしてみました。和歌山市内にある「クルトン」さんや、田辺市の駅前の「梅酒で乾杯」さんでも野菜販売とともに。あさりやさん、ゲストハウスのikkyu。また、新聞を見たといって問い合わせてくれた人たち。

上記のような取り組みを実施したことで、新聞にも多く取り上げてもらいました。

が、しかし、このスープの販売も禁止しろと行政からお達しがきました。
同じ加工所で作っているあまごの加工品は販売してもいいのに、スープは販売してはいけないのだそうです。

ちなみに、スープの菌検査も実施しました。基準値以下の菌数との判定書もいただき、行政が言うような食中毒の心配もありません。

上記のようなことが、私は地域おこしだと思うんです。地域にはたくさんのいいものが眠っています。都会の人たちには知られていないものがたくさんあります。これを今までとは違うアプローチで実施することが私の業務ではないのであれば、地域おこし協力隊でいる必要はないので、3月末で辞めさせてもらうことにしました。

また、田辺市の地域おこし協力隊として、もう1つ問題があると思います。

それは予算の問題です。地域おこし協力隊には、国から400万円の補助金がつきます。しかし、この400万は国へ後請求ということで、田辺市の予算を圧迫してしまいます。その為、田辺市では、400万円すべてを使うことができないんです。
今年度は年間の給料約200万、公用車36万、住居36万、ガソリン、その他雑費月1万円となります。この他に必要なものを申請すれば出るのかというと、出ないんです。

上記を見て、おかしくないですか?400万になってませんよね?

例えば、東京で地域おこし協力隊の会合などがあります。上記予算に含まれておらず、お金が出ないと言われてしまいます。そして「じゃ、自分でお金を出して行く」と話をすると、それは問題になるので行かないでくれと言われてしまいます。

担当者から言われたのは、400万円がまるっと出るのではありませんとのこと。
国からはそのお金が市に降りるはずなのに、田辺市の予算の中に入っているので、残りの約50万円ほどが使えないのだそうです。

田辺市には残り4人の地域おこし協力隊がいます。彼らは、私のように、何かを地域と一緒に作ろうとしています。しかし、各地域の組織に派遣され、その組織が研修費とかを払ってくれないと、研修に行くことさえできません。それって、何かおかしいなって思うんです。例えば、何かものを作る時に、作っているところに研修に行きたい!商品の販路を広げるために広告費を使いたい!和歌山県でも他の市ではきちんと出ているところはありますが、田辺市はこれが出ません。彼らが地域おこし協力隊として活動できる費用がまったくないんです。私はこれで地域おこしができるって考えている田辺市に疑問を持ってしまいます。

と、いろいろありましたが、せっかく自分で選択して来たわけで、たくさんの人が協力してくれているわけで。これからは、「熊野野菜 孫思いすーぷ」や「熊野野菜 FriBar」、それらを活用したイベントなどをもう少しやっていこうかと思います。

あなたがちょっとでも「おかしいな?」と思ったのならば、あなたの言葉と一緒に、シェアしてください。これから、まだまだ地域おこし協力隊が増える予定です。彼らが地域に来て地域と一緒に目指すことを、もうちょっとやりやすくできる一歩になれたらと思ってます。

「私が地域おこし協力隊を辞めた理由」への4件のフィードバック

  1. この先僕も故郷の特産物をなんとかより多くの人に美味しさを知って欲しいのでそういった活動をすることを夢見てます。

    今回和歌山へお邪魔ささせてもらった時も話聞きましたが小さな町から村から、行政含め新しい動きがあってもいいと思います。

    老害は滅んでもらいましょ。

    1. 河野さん〜。まぁ、田舎も都会もいろいろな人がいますよね。決まったことを決まったようにやっていく人生を、私は生きたくないなと思います。そういうことを言うと、たくさんの人が共感してくれて、何かをしよう!と言ってくれます。それは、河野さんも!
      じいちゃんもばあちゃんも若いも若くないも関係なく、良いことを、楽しいことをしようと言う人は、世の中、たくさん居ますね。あらためて、そういうことを感じてます。ありがたいことです!

  2. はじめまして。
    はじめてコメントさせていただきます。
    地域起こしとは何か、私も以前、行政とぶつかりました。行政は、地域起こしをうたいますが、自分達が管理できる範囲で活動されることを望みます。その範疇を出て初めて我が足で歩く地域となるにもかかわらず、それを認めません。

    1. コメント、ありがとうございます。そうですねー。行政でくくってしまうとあれなんですが、変化を好まない人たちは多いですね。加工所とかも利権で、使われていないのに使いたい人が使えないってこととか、もったいないがたくさんありますよね。もう少し広い視野でみたら、結果、いいことだったりするんですけどね。

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