「棋士の美学か」…森内九段フリークラス転出に
決断に、さまざまな思いが交錯
森内俊之九段の名人戦は、もう見られない--。羽生善治王位(46)と長年にわたり、棋界最高の舞台で名勝負を繰り広げてきた永世名人資格者のフリークラス転出の発表は、ライバル棋士や将棋ファンに衝撃を与えた。「もっと順位戦を戦ってほしかった」「棋士の美学では」。その決断に、さまざまな思いが交錯した。
森内九段は1988年、名人戦順位戦に初参加。以来、勝ち越しを続けたが、名人を失冠した直後の第73期(2014年度)に初めて4勝5敗と負け越した。その後も第74、第75期を負け越し、不振が続いていた。
森内九段のA級陥落が決まった2月の第75期最終戦で対局した稲葉陽(あきら)八段(28)は「終局直後、『また新たな気持ちでやっていきたい』などと話されていて、指し続けると思っていた」と驚きを隠せない様子。稲葉八段は、佐藤天彦名人(29)に続き2期連続で20代の挑戦者となった。森内九段の転出は世代交代をはっきり示す形になった。
同世代の1人、佐藤康光・日本将棋連盟会長(九段)は「大変驚きましたが、森内さん一流の流儀かなと感じました」とライバルの決断を受け止めた。
フリークラス制度は、順位戦を指さなくても現役棋士としての活動を認める制度。連盟の公務や普及に力を入れる棋士もいる。過去には、故米長邦雄永世棋聖がA級陥落後すぐの1998年に、中原誠十六世名人がA級陥落後にB級1組で2期対局した後の2002年に、フリークラスに転出した。ともに当時54歳だった。
46歳の若さで大きな決断をした森内九段は、「A級順位戦で降級となったことを受けて出した結論です。名人戦、順位戦では思い出深い経験をたくさんさせていただきました。感謝の気持ちでいっぱいです」とコメントした。【山村英樹、新土居仁昌】
同世代の先崎学九段の話 ただただびっくりしております。同年齢の仲間として潔い決断に敬意を表します。