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稀勢の里の奇跡 「感動した」で済ませていいのか 
編集委員 北川和徳

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2017/3/31 6:30
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 30歳以上の相撲好きなら、だれもが16年前の「鬼の形相」を思い出したことだろう。大相撲の春場所千秋楽。新横綱稀勢の里が奇跡のような大逆転で賜杯を手にした。2001年夏場所で、横綱貴乃花が右膝半月板損傷の大けがを負いながら、優勝決定戦で横綱武蔵丸を下したあの名場面の再現のようだった。

 13日目に左肩付近を負傷。14日目は何もできずに完敗。それでも千秋楽の土俵にあがり、本割、優勝決定戦と大関照ノ富士に連勝した。ドラマでもないような展開に、久しぶりに勝負の醍醐味を感じた。新横綱の昇進場所での優勝も、貴乃花以来22年ぶりのことだ。

稀勢の里の逆転優勝には勝負の醍醐味を感じた

稀勢の里の逆転優勝には勝負の醍醐味を感じた

 相撲協会でも横綱審議委員会でも、「語り継がれる逆転優勝だ」など、稀勢の里を絶賛する声が相次いだ。それはその通りだが、ただ「感動した」で済ませていいのかとも思う。稀勢の里は2カ月後の次の場所に万全の状態で臨めるだろうか。

 千秋楽の相撲は続けて勝ったとはいえ、左腕はほとんど使えていなかった。それでも勝てたのは、下半身はしっかり動いて、やったことがないという右小手投げをとっさに繰り出せるほどの稽古の蓄積があったからか。照ノ富士が万全でない相手に集中力を欠いたことも否定できないだろう。

貴乃花は「鬼の形相」後7場所全休

 16年前、総理大臣杯を手渡した当時の小泉純一郎首相に「感動した!」と言わしめた貴乃花は、22度目のそれが最後の優勝となった。

 気になったので当時の記録を調べてみた。14日目に大関武双山との対戦で右膝を痛めた時は、亜脱臼と報じられている。それが優勝した後に半月板損傷と判明。フランスに渡って手術するなどして次の名古屋場所から翌年7月の名古屋場所まで7場所連続で全休した。横綱の休場のワースト記録である。ようやく02年の秋場所で1年4カ月ぶりに復帰して12勝3敗の準優勝。再起もつかのま、九州場所はヒザの状態が悪化してまた休場。翌年の初場所途中で引退を決めた。

 「たられば」の話ではあるが、16年前の千秋楽の激闘がなければ、この大横綱の優勝回数は30回に迫っていたかもしれない。そして貴乃花の引退後、稀勢の里の昇進まで日本出身の横綱は不在となった。若貴ブームが終わって人気が下降線だった大相撲は、その後しばらく集客に苦戦した。

 優勝翌日の一夜明け会見さえしなかった当時の貴乃花と比べれば、稀勢の里は元気そうで、それほど深刻とは感じない。診断ではケガの程度は左上腕部の筋損傷で加療1カ月。時間をかけてしっかり直せば問題ないだろうが……。春場所の余韻が続く5月の国技館は稀勢の里目当てのファンが殺到する。不十分な体調で無理をして場所に臨めば、横綱として短命に終わる事態にもつながりかねない。

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