初めてTempalayを知ったのが、ちょうどデビューEP『Instant Hawaii』のリリース日。タワレコに行き、たまたま視聴したらその場ですぐ彼らの虜になってしまった。「ここは渋谷のど真ん中なんかではなくハワイなんじゃないか!?」と思うような、脱力したサイケで夢見心地な音楽が詰まったそのCDを握りしめてレジまで行った。しばらくしてそのEPは完売し、なかなか手に入らなくなる程、彼らの人気は広まってきている。
ある曲を取り上げて、そこから連想した様々な楽曲を紹介し、新たな音楽との出会いになってほしいというMUSIUMの特集企画、ライカ! 今回のインタヴューでは、1月6日にリリースされるTempalayの1stアルバム『from JAPAN』のライカ!を編集部であらかじめ考えていき、その答え合わせをするような形で、小原綾斗(Vo&Gt)、竹内祐也(Ba&Syn)、藤本夏樹(Dr)の3人にお話を聞かせていただいた。
今作は『Instant Hawaii』の持つ心地良さはもちろんのこと、3人それぞれの個性的なリズム、メロディが重なることによって生まれる、ダビーで酔いしれたようなトリップ感を一層深く味わうことができる。さらに、ブラックミュージックやダンスミュージックの本質を感じさせるリズムやグルーヴが加わり、ますます極彩色豊かなアルバムになっている。 ぜひ『from JAPAN』を聴きながら、この後のインタビューを読み進めていってほしい。
撮影/山吹彩野
──MUSIUMの特集ページで、ある1曲を取り上げてそこから連想した楽曲を紹介し、新たな音楽に出会って欲しいという、ライカ!という企画があるんですが、今回『from JAPAN』でライカ!を考えたので、その答え合わせをしながら、アルバムインタヴューをしていこうと思っています。 まず1曲目は、サザンオールスターズの“恋人は南風”という曲です。Tempalayの音楽を聴いていると、海に行きたくなるんですよ。アメリカ西海岸系とも言われてましたけど、浜辺を走るような開放的なエスケーピズムを感じて。そこにサザンオールスターズを思い浮かべました。
小原「正解です」
一同「(爆笑)」
小原「『from JAPAN』に収録されている“LOVE MY CAR”は、このPVみたいな情景を思い浮かべましたね」
──ちなみにサザンは聴かれたりするんですか?
小原「そんなに知らないですけど、“慕情”が入ってる『世に万葉の花が咲くなり』っていうアルバムは持ってました。全然海っぽいアルバムじゃないんですけど。“ニッポンのヒール”、あの曲はヤバいっすね。めっちゃ懐かしいな。唯一持ってるサザンの1枚です。韻をふむ感じとか、歌詞とか結構影響されてるかもしれないです。あと映画の『稲村ジェーン』のサントラも持ってたな」
──曲を作ってる時は、特に海を意識しているわけではないんですか?
小原「なんとなく景色はありますね。“LOVE MY CAR”は本当に海沿いのこの映像みたいな感じなんで、ライカ度、星5つです(笑)」
サザンオールスターズ 恋人は南風
──Tempalayの音楽の、いい感じで肩の力が抜けている心地よさや、晴れた休みの日に散歩をしながら聴きたくなる気持ちよさ、という共通点から、2曲目のライカ!をMac DeMarcoにしました。Mac DeMarcoのサポートギターを務めたことのあるHomeshakeのPeterさんもリリースパーティに出演してましたよね。一緒にラーメン食べてる写真をTwitterで見て、仲がいいんだなあと思って。
小原「前にHomeshakeが来日してて、僕ら観に行ってたんですよ。ノリでアドレスとか交換して。そしてリリースパーティに来てよってメールしてみたら、『行く行く!彼女と一緒に行くよ!』みたいなノリで。ほんまによう呼べたなっていう感じですけどね」
竹内「みんなで朝まで遊んだよね」
──人柄が音楽に現れている気がします。両者ともわざとテープの雑音とか、ローファイなものを取り入れようとしていますよね。
小原「僕らはほんまにあれなんですけどね、金がないから」
竹内「リアルローファイなんです(笑)あと、僕らローファイ推しじゃないですからね。結果、みたいな感じです。でも今回、オープンリール※(1)とかでも録りましたし」
※(1) オープンリールとは、テープを巻いたリールがカセットに覆われておらず、テープに直接触れて編集などの操作ができる再生・録音機器。1960年代のカセットテープ普及以前は、簡単な録音機器として家庭でも使われていたという。現在でも、当時のぬくもりを感じるアナログな音を再現すべく、レコーディングなどで使用されることもある。
──今回は、中村宗一郎さんがマスタリング※(2)をされていますが、何かお話しになったんですか?
※(2)ミックスダウンを終えた各曲を1つの作品として聴けるように、バラバラな『音量』『音質』『フェードイン・アウト』などを調整した後、曲間の調整などを行い、原盤を制作すること。
竹内「前作の『Instant Hawaii』からやってもらってるんですけど、僕がミックスしたのを持ってったら本当にボロクソ言われて。『ローが足りない』やら何やら言われました」
──職人肌の方なんですね。
竹内「だけど今回は割と機嫌が良かった(笑)何だろう、期待してくれてました。音に対してはああいう人はあんまり喋らなかったりするけど、僕らの今後や作品に対して期待してくれてましたね」
──なるほど。では、Mac DeMarcoは星いくつですか?
小原「Mac DeMarcoは、星5つです!」
Mac DeMarco – Another One (2015) [Full/Completo]
──次のライカ!はAlbert Hammondの”It Never Rains In Southern California”です。懐かしさを感じるメロディからそう感じました。彼は60年代のミュージシャンで、息子はThe Strokesのギタリスト、Hammond Jr.です。
竹内「全然知らない(笑)サザンよりこっちの方が”LOVE MY CAR”な気がする」
小原「俺も全然知らないっす。手、長っ!」
──Tempalayはどのように音楽を作っていくのですか?
藤本「綾斗の頭の中にあるものをざっくり組み立てて、一回みんな持ち帰ってって感じですかね」
竹内「なんか、風景とかで言ってきます。『このアレンジはちょっと街っぽいから、もうちょっと森っぽくして』とか言われて、僕達なりに森っぽくしていくとか」
──森(笑)デモトラックまで自分で完成させてメンバーに渡したりはしないんですか?
藤本「デモトラックで持ってきたのって何があったかな?だけど、声で持ってきてもらう方がやりやすいですね」
小原「基本的には全部頭で鳴ってるんですけど、それをパソコンで打つのがほんと面倒臭いんですよ。マジ面倒臭がり屋で、僕。だからもう、『ツッツッタッチ、ツッツッタッチ』だけ言って送ったり、アコギをボイスメモで送ったりして。この感じっていうのはスタジオで伝えて『はい、やって』って。でもね、リズムがないと、やっぱ全然解釈が違うんすよ。頭悪いなこいつみたいな」
一同「はははは(爆笑)」
──では、Albert Hamondは星いくつですか?
小原「星5つです!」
──ありがとうございます!
小原「そろそろケンカしましょうよ~!」
Albert Hammond – It never rains in Southern California
──次の曲なんですが、Flower Travellin’ Bandの”サトリ”です。Tempalayのギターの音階スケールって、普通のペンタトニック※(3)ではなく、東洋のスケール感を感じて。アルバム名にも『from JAPAN』って書いてあるように、日本から異国へ行こうとしている感じがサウンドから伝わったんですね。で、Flower Travellin’ Bandも70年代に活躍して、海外に向けて発信していこうっていうアーティストだったので、先輩に当たるんじゃないのかなという仮説を立てました。
※(3)ペンタトニック・スケールとは、通常は「ドレミソラ」の5音からなる音階のことをいう。半音の違いで隣接する音が省かれているので、コードサウンドやメロディがはっきりと明確に伝わる。
小原「違います」
一同「(爆笑)」
小原「でも知らなかったです。あと東洋ってどこですか?Tempalayにこんなフレーズありますかね?そういうコンピアルバムとかは聴きますけど」
──インド音楽ですね。例えば“Oh.My.God!!”のイントロとか───。
小原「あーあれはさすがに意識しました。あれは東洋っていうか、Unknown Mortal Orchestraっていうバンドが好きで、彼らもサイケデリックなインド音楽にめちゃめちゃ影響受けてるんで」
──多国籍な音楽に影響を受けながらも、アルバム名は『from JAPAN』だったり、“This is TOKYO”というタイトルの曲があったりとか、歌詞にも<織りなすネオンズ東京/きっとここから抜け出せない>という言葉がありますよね。日本にアイデンティティを持とうとしているように感じました。
小原「歌詞にも書いてますけど、ここにいるしかないっていうか、ここでやるしかないというか。日本のアイデンティティとか全くないっすね。アメリカ大好きだし、アメリカ人になりたい。だから逆に皮肉っすよね」
──諦念感ですかね。Tempalayは海外で売れたいんでしょうか?それとも、日本で?『from JAPAN』のFromがあるならToは海外なのかな、と考えたのですが。
小原「どっちもですね。アメリカで成功するのと日本で成功するのってどっちでもいいじゃないですか。結局同じ分のお金が入るから。だけど、勝った気になるのはアメリカですよ。だけど『日本だっせー』みたいな感じでもなくって。日本のことめっちゃ好きですからね。何なんすかね、この感覚。自分でもわかんないんです」
──大陸横断を数年に1回しながら、日本にも戻って活動したりとか。
竹内「いいですね。その感じ」
──では、Flower Travellin’ Bandは星いくつでしょうか?
小原「星5つです!」
Flower Travellin’ Band – Satori – 6 -Map -
──では、最後のライカ!に参ります。今まで昔の曲を挙げていたんですが、現在進行形でブレイクしているMiguelを聴いてみようと思います。彼の音楽は、マッチョ過ぎない、ちょっと脱力系のサウンドなんですよ。ダンスミュージックっぽい曲だけれども、けだるい。その兼ね合いがTempalayの雰囲気にマッチしました。
藤本「めちゃめちゃカッコイイですね」
竹内「全然知らなかった。海外のR&Bって、PVで脱ぎがちですよね(笑)」
──Tempalayの皆さんは、最近の洋楽をお聴きになりますか?
小原「全然聴きますよ。USインディーももちろん聴きますし。アーティストだと、King Kruleとか。友達にKing Kruleの友達がいて。売れ出す前の音源とかも貰ってたんすよ」
King Krule – Easy Easy (Official Video)
藤本「あとは、EYEDRESSとかも聴くよね」
EYEDRESS
──そういった洋楽の情報源はどこで仕入れますか?こういうのを扱う音専誌ってほとんどないじゃないですか。
小原「ネットですかね。THE STONE RECORDSとか、インディーネイティブとかかな。あと、TwitterとかでめっちゃSoundCloudを掘っている奴とかいるじゃないですか。ああいう人をフォローして収集したり。最近の洋楽ロック専門誌とか本当につまんないじゃないですか。そういうのじゃなくって、こういう今の洋楽を伝える雑誌やってくださいよ、そして日本人の耳を変えていってほしいっす、ホンマに」
──そうですよね、私達も頑張りたいです。
小原「ってかマジでヤバイやつは僕らの周りでもいるんですけど。でも、みんな知らないですもんね。もっと音楽業界が頑張って推せばいいのに。リスナーもリスナーっすよ。耳ちょん切ったろかって思いますけどね(笑)」
──使わせていただきます(笑)
小原「って夏樹がよく言ってます」
──責任転嫁はやめてください(笑)では、こちらのMiguelのライカ!は星いくつでしょうか?
小原「今の自分が興味ある方向と合っていたので、星5つです」
Miguel – waves
──ありがとうございます。以上でライカ!は終わりですが、いかがでしたか?『〜〜っぽい』って言われるのは嫌かなぁと思ったんですが。
藤本「すげぇ嬉しいっす。ここまでちゃんと聴いてくれているのが伝わってきた。考察してくれてるなって」
小原「5点満点しかなかったけど、ホンマ大丈夫?(笑)皆さんライカ!当て過ぎですよ、ぶっ飛んだヤツ欲しかったのに」
──最後に1曲、Tempalayご自身が選ぶライカ!教えて頂けませんか?
小原「じゃ、Homeshakeのこの曲を。これ、Peterにギター教えて貰って一緒にやったんですよ。Peterはマジで天才ですよ、グルーヴとかギターフレーズとか、かなり秀逸なんすよね。だけど、気づいたことがあって、実はギターが下手なんですよ。(腕をストロークしながら)こういう風に弾いてると思ったら、(ダウンピッキングで撫でるように)こういう風に弾いてるんです」
──リズム感は出にくそうですよね。
小原「絶対出ないですよ(笑)」
藤本「だけど絶対上手いはずだよ。元々JAZZのピアノやってたから。これで歌いながら弾くって凄いよね」
──Homeshakeの音楽は、気持ちいいけど気持ち悪い、心が揺らぎますね。
HOMESHAKE – She Can’t Leave Me Here Alone Tonight
──これからの目標とか具体的にありますか?例えば、CDの売り上げ枚数であったりとか、リキッドルームや日比谷野音を埋めたいだとか。
竹内「『ここを満員にしてやったるぜ!』みたいな団結力ないんですよね。明日のことしか考えられない」
──でも、その辺りを決めないところが、Tempalayの良さっていうか、サウンドにもある、あまり『頑張りすぎない脱力感』に繋がっている気がしました。
小原「そう言って頂けると救われますけど(笑)だけど明日の予定なんだっけ?って思うくらい本当に考えてない。何か予定を決めるのがすげー嫌なんすよ。(LINEとか)大抵既読無視してます(笑)働いて稼ぐとか性に合ってないですよ、ホンマに」
──日本のフェスシーンにはあまり興味がない?
竹内「誘われるなら何でも出たいです。VI VA LA ROCKにも出たいし。埼玉出身なんで」
──売れたい?
小原「売れたいっす。めっちゃ売れたいっす(笑)」
予想以上に楽しいインタヴューをさせて頂きました。Tempalayの音楽を聴いていて、寡黙な方々なのかな、と勝手に人物予想をしていたのですが、実際に会うと全く違いました。「今日も二日酔いなんすよ」と冗談交じりに笑顔で気さくに挨拶してくださる小原さんや、「お茶、飲みます?」と気遣ってくださる竹内さん、はにかんだ笑顔がイケメンな藤本さん達との会話は、笑顔に溢れるインタヴューでした。時に、毒舌を「ホンマ、耳ちょん切ってやろうかと思ってますよ」と、狂気的かつユニークに表現する一面は、彼らの音楽に対する思いを実感する瞬間でもありました。 ライカ!の音源を聴いている時の、メンバーが全員固唾を飲んで聴いている真剣な姿勢が印象的で、1曲1曲流すことなく真剣に聴き、じっとたたずむ姿は音楽をこよなく愛する音楽家であるからでしょう。ちなみに、今回教えて頂いたKing Kruleは私のフェイバリット・アーティストに。お互いの好きな音楽を共有し合える、楽しく純粋な音楽対談ができました。Tempalayの音楽が私たちリスナーに届けられるのを、これからも楽しみにしております。
Tempalay 公式HP
made in Japan(Official Video)
sea side motel(Official Video)
【今後のライヴスケジュール】
PA PA PA PA PAELLAS -“Remember” RELEASE PARTY-
1月8日(金)渋谷O-nest
出演:PAELLAS/Tempalay/Far Farm etc……
RESAMPLES -winter-
1月9日(土)Heaven’s rock 宇都宮
出演:in FAM step/TENDOUJI/Tempalay etc……
1月30日(土)タワーレコード横浜ビブレ店(インストアライヴ)
LIVE Connection×FREE THROW pre「half step ahead Vol.1」
2月18日(木)新宿MARZ
Tempalay 「from JAPAN ーWE ARE THE WORLDー TOUR!!!」
2月26日(金)名古屋 CLUB ROCK’N’ROLL
2月27日(土)大阪 地下一階
2月28日(日)静岡 FREAKY SHOW
3月6日(日)新宿 MARZ
SXSW2016
3月11日〜3月20日 アメリカ・テキサス州オースティン
Amazon
発売中/レーベル:P-VINE RECORDS