音楽とこどもの関わり方を考える、「音楽=おと」+「こども=チャイルド=ちゃ」=「おとちゃ」!
2015年。日本でも音楽ストリーミングサービスが始まり、「音楽の聴き方が変わるのか?それとも変わらないのか?」なんて話題で持ちきりだった音楽業界。しかし、まだまだCDが主流なのは事実であるし、国民的バンドのMr.Childrenがハイレゾ音源付きのCDを発売しても、「ハイレゾ?よくわからない(笑)とりあえず、ミスチルの曲が全部聴ければいいかな」などの声もよく聞かれた。
そんな中、MUSIUM編集部の中で持ち上がった話題は、「最近のこども達って、カセットテープとかさわったことあるのかな?」ということ。筆者が幼稚園の頃はカセットはまだ主流で、母親が車で聴くBGM用に曲を編集してた──ということで、カセットテープが主流だった時代はとうの昔。今のこども達はカセットにどんな反応を示すのか。どうせなら、今まで主流だった色んな音楽デバイスをさわってもらって、どのような工程を経たら音楽を聴くことができるのかを体験してもらおう! と始動したこの企画。
今回協力してくれたのは、筆者のいとこ違いである小学2年生のひなちゃん。そのひなちゃんのお友達3人にも遊びにきてもらい、カセット、MD、iPod、レコードをさわって体験してもらいました。今回はできるだけヒントを与えずに行ったので、筆者とひなちゃんのお母さんはヒヤヒヤしっぱなし(特にレコード……!)。でも、音楽を聴くまでの工程を楽しみ、音楽自体も楽しんでくれたようなのでよしとしましょう。ということで、ぜひ寛大な温かい目で読み進めていただければと思います(笑)
全4回でお届けする、こどもデバイスシリーズ。
最終回は、「レコードさわったことある?」
■レコード
レコードとは、厳密には「record=記録」という意味ですが、音楽デバイスにとっていえば、音などを記録する円盤型の記録媒体のことをいいます。円盤に溝があり、針を落として振幅の情報を読み取り音に変換します。レコードも人気は低迷していましたが、デジタル配信が猛威をふるい、CDの売り上げが落ちると、カセットと同様に、アナログな音と面倒臭さが逆に良いと人気を取り戻しています。
Hちゃん わ、木だ。
母 やばくない?何これ。
Yちゃん なんだこれ。
──これ、何か知ってる?
Yちゃん なんか、聴いたこ……なんか見たことある。
Hちゃん わかったわかった!はいはいはい!わかったーあのね、CDみたいな穴あきのやつをここに置いてここをこうやってして動かしてうーつって音楽が聴けるやつ。
──おっ!じゃあ私この電源をコンセントに挿すまでやるので、そのあとはみんなで協力して、音楽を聴いてみてください!
みんな はーい!
Hちゃん でも難しいよ、これ。
──じゃまず……これがレコードです。これは7インチ。
──で、最初に見せたのがレコードプレーヤーね。
みんな ……(黙々とレコードをセットし、プレーヤーに置いて聴き始めるが、針のキャップをつけたまま流そうとして、雑音が流れる)
Hちゃん ふふふふ。
Yちゃん これなにー!
──ぶー。じゃあヒント!レコードの仕組みを伝えると、レコードには溝が入っていて、ここに針を置いてその振動が音になって聴こえるの。ってことはここに針がないといけないけど……今見えないよね?ってことは今これ、キャップがついてます。
みんな えー‼︎‼︎‼︎(笑)
Hちゃん じゃあこの白いキャップを取って……
(キャップをはずし、針をレコード盤にのせる。)
Hちゃん おどろおどろ!(みんな叫んで喜び手拍子をして笑いチークダンスのような踊りを踊り始めるが、設定速度が違い、音楽は遅く流れている。)
──今流れてるのは、Yogee New Wavesの”CLIMAX NIGHT”っていう曲。
Yogee New Waves / CLIMAX NIGHT (New Version)
──でもね、これもぶーなんですよ。
みんな え!?がーん。
──ヒント(レコードの盤面に記載されている45を指さす)。ここになんて書いてある?
みんな 45。
──今これ何になってる?(そしてプレーヤーの回転速度を変更するタブを指さす)
みんな 33。
──で、レコードに「45」って書いてあるってことは、ここも「45」にしなきゃいけないの。
Hちゃん あっ。
Sちゃん よし!(タブをいじる)
Hちゃん あっ、音が変わった!
Sちゃん なんで?
──このレコードは45回転用のレコードだから、回転速度が違う33回転で流すと音楽が遅くなっちゃう。45回転用に溝が刻まれてるからだよ。だから聴く時は、こことここの数字は合わせなくちゃ、このレコードが持っている一番の音は聴けません。じゃあ、このレコードを一番最初から聴きたいんだけど、どうやればいいでしょうか。
Sちゃん この裏じゃない?
──違うよー。
Hちゃん これじゃないの?(レコードの盤を直接さわる)
みんな ははははは!
Sちゃん さわっちゃったー!
──乱暴に扱いすぎちゃうと、溝が傷ついたりすると、それだけで聴けなくなっちゃう。だからキャップは必ずはずさなくちゃいけないし、乱暴にさわったり押し付けてもいけないの。
Sちゃん そっか。ここに音楽が入ってるんだもんね。
──そう。じゃあ問題の続き!一番最初から聴くにはどうすればいいでしょうか?またヒントをあげると、レコードって外から中に音楽が録音されているのね。だから、一番──
みんな はじっこ。
──このはじっこ色が違ってるのわかる?
みんな うん。
──だから、上から見て、白っぽくなってる場所にぽんって乗せる。ここを持ってはじっこっぽいなーってところにぽんって。
みんな (のせる。そしてまた踊りだす)
──えーちょっと!まじうけるんだけど!!(爆笑)
母 いいねーレコード。(チークダンスのような踊りを見て)そういう感じの歌?
Hちゃん うん。巻き戻してみる?(鮮やかな手さばきで操作する)
──じゃあ次こっち聴く?(LP盤を取り出す)星野源知ってる?
Hちゃん 大きい!
Yちゃん 知らなーい
Sちゃん ほしのげ?
──ほーしーのーげーんー!
Hちゃん ほしのげんてしらなーい。
母 俳優なの?
──俳優。歌手。
母 なんかドラマで観た。
──この人知らない?
みんな 知らなーい。見たことなーい。
──え?私が大好きな人じゃん。
みんな えー知らないよー!(笑)(とりだして)でかっ!!入るの?これ。
母 この人こんなのまで出してるんだ。
──さっきのは片面に一曲しか入ってなかったんだけど、これは片方に何曲も入ってるの。
Sちゃん 何から聴く?
Yちゃん ”キッチン”がいい。
Hちゃん いいよー。でも”さよならのうみ”がいい。
Sちゃん ”さよならのうみ”、いいねー。(セットする)
──”さよならのうみ”ってことはBね。何番?
Yちゃん ”さよならのうみ”は11番。
──11番ってことは──?
Yちゃん どうすればいいんだ?
──あ、それで、さっき注意したことに気づいた?これは……
Sちゃん 33(回転)!だね!
──そう!でもさ、曲知らないよね。
みんな うん(笑) じゃいくよ、せーの!……これ何?
──えっとこれはね……12番の”穴を掘る”
みんな えー‼︎‼︎‼︎
Yちゃん いや、あの、私達ー、11番なんですけどー。
──(笑)これさ、溝があるでしょ?
Yちゃん 溝ない。あ、あるね。
──これ今B面を聴こうとしてて。じゃあこの一番はじっこは何番?
Yちゃん 9!
みんな 9,10,11。11!
Yちゃん さんばんめー、さんばんめー。
──10と11の間の溝に針をおとしてみて
みんな あー。できた?
──できた!
みんな (またゆったりしたダンスを踊り出す)
母 子守唄みたい。
──次は何番聴く?
みんな キッチン!
Hちゃん 3番!だから……1、2、3。
母 それ、だいぶ2じゃない?(笑)
──2と3の間の線にあわせて。
Hちゃん うん、ここに音楽が、歌がはいってるんだよね?
──うん。
母 レコードいいね。なんか味があって深くていい感じ。なんか、全体に広がって聴こえる感じがするんだよね。
Hちゃん (レコード盤みてたら)なんか目ー回った(笑)
母 これ、プレーヤーは高いんだよね?
──いや、1万円ちょっとで買えるのもあるよ。
母 へー!でも買ったとしてもすぐ針つぶしちゃいそう(笑)
Hちゃん 15番の”ばかのうた”。(ぴったり曲のはじめから流すことができた)
──ぴったり!!!
Hちゃん やったー!歌あった。<ばかでそめよう>だってー!(笑)
──これで今日の音楽デバイスクイズ、達成だね!今までのでどれが好き?
Hちゃん どれも好き。
──1番面白かったのはどれ?
Hちゃん う〜ん。レコード。
母 そうかもしれないね。
Hちゃん でも、全部面白かったぁ!
──それならよかった!みんな今日は、ありがとうございました!
みんな ありがとうございましたー!
Hちゃん 最後にカセット。これ聴きたい。
──あ、録音できるよ!録音する?(マイクを取り出す)
Hちゃん マイク!
──「今日は今日は本当にありがとうございました」
母 しゃべりなよ?好きでしょ?こういうの。
Hちゃん (照れながら)んーわかったよー。
──今日の感想をお願いします!
Hちゃん 「今日は色んな歌の道具がいっぱいあって、ラジオとか、カセットとか、MDとか、レコードとかiPodがありました。とても楽しかったです」
ひなちゃんとそのお友達に「音楽の機械を色々さわってみて」とお願いしてから、なんと約1時間半もの間、みんなには音楽デバイスで音楽を聴くまでの工程を試してもらいました。正直途中で飽きちゃうかなと覚悟もしていたのですが、やはり初めて見るもの・さわるものばかりだったようで、最後まで楽しんでもらえたみたいでほっとしました。
誰もが当たり前に知っていると思い込んでいたEXILEを、そこにいたみんなが誰も知らない状況には驚きましたが、みんなが習っているダンスで使われる曲の懐かしさにもびっくりしました。同時に、Yogee New Wavesや星野源ではチークダンスのようなゆったりしたダンスを踊り、EXILEでは激しいダンスを踊るのもとても興味深かったです。
そして、「こどもの頃に聴く音楽」=「お母さんが聴く音楽」なんだなと改めて感じました。自分の意思で行動をするというより、限られた行動範囲の中で聴くことができる音楽が、お母さんが聴く音楽というのは当たり前のことですよね。
私自身で考えてみても、小さい頃ドライブ中に聴く音楽は、母親がカセットに「マイリスト」のように曲を並べて録音していました。今でもその中の一曲を聴くと、ある意味アルバムの曲順を覚えてしまっているように脳裏に浮かんできます。
少しずつ大人になって行動範囲も人との交流も広がった時、みんなが出会う音楽が生活を豊かにするものになればいいなと、今回の取材で感じました。それと同時に、今回さわってみた音楽デバイスや聴いた音楽が、みんなのどこかに少しでも残っていたらと、淡い期待も持っています。
……と思っていたら、後日、ひなちゃんからお手紙が届きましたので、このお手紙で今回の取材は大成功だったかなと感じました。皆さんも、周りのこども達が何気なく聴いている音楽を改めて確認したり、たまには違う音楽を一緒に聴いてみてどんな反応を示すのか試してみると、こども達と音楽をさらに楽しむことができるかもしれませんね。
▼今回ひなちゃん達がさわってみたレコードプレーヤーはこちら! 今では1万円ほどで買えるプレーヤーも増えているので、初めて買う人も入りやすくオススメです!
■第1回 【おとちゃ】こども達に音楽デバイスをさわってもらった〜カセット編〜
■第2回 【おとちゃ】こども達に音楽デバイスをさわってもらった〜MD編〜
■第3回【おとちゃ】こども達に音楽デバイスをさわってもらった〜iPod編〜
(山吹 彩野)