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東芝の経営危機は「第2のココム事件」か

JBpress 3/31(金) 6:10配信

 ところが世界各国の規制当局が福島事故を受けて規制を強化し、アメリカでは4基の原発の工事が止まってしまった。それが東芝の巨額損失の原因だといわれているが、そこにはもっと大きな問題が隠されているのではないか。

■ ベストセラー原子炉「AP1000」をめぐる闘い

 この背景には、東芝が原子力部門の目玉商品と位置づけていた加圧水型(PWR)原子炉「AP1000」の問題がある、というのが関係者の一致した見方だ。東芝が最後までAP1000を手放そうとしなかったのには、それなりの理由があるはずだ。

 原発はビッグビジネスである。1基3000億~5000億円だから、3基受注すれば1兆円の売り上げが立つ。その後も保守や燃料で多くの利益が見込めるので、東芝がWHを手放さなかったのも無理はない。

 特に中国は大きな市場で、各国の企業がその争奪戦を繰り広げたが、フランス政府はアレバ(国営)の売り込みを禁止した。原子炉技術が核兵器に転用できるからだ。ところが東芝がWHを買収した直後の2006年12月に、中国政府はWHから原子炉を輸入することでアメリカ政府と合意した。

 中国の国営企業は2007年7月にWHからAP1000を4基、輸入する契約を結び、中国は今後10年で、AP1000を60基建設するといわれている。これだけで20兆円以上の巨大な市場だ。その後、WHと中国企業の業務提携は合弁事業に発展し、この契約は2009年にライセンス供与
に切り替えられた。 これによって中国の国営企業は原子力技術を「国産化」するばかりか、世界にAP1000を売り込み始めた。イラン政府は2015年に、中国企業がイランの原発2基を建設することを明らかにし、南アフリカやトルコでも中国企業とWHが原子炉を受注する見通しが強まっている。特にイランの原子炉は核兵器開発とからんでいる可能性があるが、東芝の経営陣はWHの動きをほとんど把握していなかったようだ。

 これは推測だが、今回の問題がこじれた原因はこう考えられる──WHは世界にAP1000を売り込む予定で、東芝はその将来性を見込んで買収したが、WHは中国の国営企業にライセンス供与して技術を渡してしまった。その結果、中国が世界にAP1000の技術を売り込み始めた。これに怒ったアメリカ政府がWHを東芝から切り離し、中国の暴走を止めようとしたのではないか。

 中国が原子炉をブラックボックスで輸入するのと、ライセンスを受けて「国産」で建設するのは大きな違いがある。中国政府は核武装を強化するために、プルトニウムを製造する軽水炉の技術が欲しいはずだ。東芝の「減損」のほとんどは規制当局の裁量によるもので、アメリカ政府の意向が働いていることは十分考えられる。

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最終更新:3/31(金) 6:10

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