一見したところ、スキャンダルまみれの幼稚園と、不正に水増しされた東芝の会計不祥事、クビになったニュースキャスター3人とを結びつけるものはほとんどない。だがめったに使われない日本語、「忖度(そんたく)、Sontaku」がすべてを解明し始めている。日常語彙とかけ離れたところから引っ張り出され、突如、表舞台に上がることを押しつけられた言葉だ。
忖度は、与えられていない命令を先取りし、穏便に従うことを指す。この言葉は日本人に広く使われていないかもしれないが、政府、民間部門でいろいろな形で普及していることは、すべての人が本能的に知っている。忖度の概念は日本特有ではないものの、安倍晋三首相時代の日本を説明するうえで、これほど強力に響く言葉はそう多くない。
忖度が日常会話に入り込んだタイミングは、政治スキャンダルと重なった。これは安倍氏と首相夫人を個人的に巻き込み、安倍氏のリーダーシップにとって、4年前の首相就任以来最大の長丁場になる脅威となっている。問題の根幹にあるのは、安倍昭恵首相夫人が名誉校長を務めていた学校の国家主義的な民間幼稚園が、評価額の数分の1という安値で国有地を払い下げられた取引だ。スキャンダルを受けて支持率が低下している安倍首相は、自分か夫人を取引と結びつける証拠があれば辞任すると約束し、反撃した。
この発言は、首相が以下を完全に理解していることを示唆する。忖度が働く仕組みと、そして安倍氏自身の明確な権力掌握が――7人の首相が次々誕生した後だけに、なおのこと目を引く――政府、官僚機構の間で忖度をよみがえらせていった点だ。
忖度論者らは、土地を安く払い下げる命令の証拠が一つでも見つかる可能性は低いと話している。というのも、命令は、首相夫妻が優遇するかもしれない事案について一連の迎合的な臆測としてしか存在しないからだ。
忖度が突如、新聞の見出しを独占し、推量による統治を通して腐敗した制度を暗示する中、安倍氏自身がこの言葉を使った。幼稚園のスキャンダルがなかなかおさまらない中で、同氏は27日、「忖度の働く余地は全くなかった」と断言している。
忖度という言葉が一気に広まった今、人々はほかのところでも忖度が働いていることに気づき始めた。