B2D(Developer向け)ビジネスがアツイ
突然だが、私はB2D(Developer向け)ビジネスが大好きだ。愛していると言っても過言では無い。B2Dのことを考えると悶える。ああ!!!投資したい!!!!!
いきなり取り乱しているが、まずは表を見てほしい。ユニコーンと呼ばれる、評価額$1Bn(約1,000億円)以上の企業数はグローバルで既に12社もあり、うち半数は気づかぬうちにちゃっかり上場してしまっている。ユニコーンと言わずとも数百US$Mn(数百億円)規模のM&A Exitも散見される。そしてどのスタートアップにも、ピカピカな投資家がこぞってちゃっかり投資している。評価額は不明だが、CoreOSやRealmの本気度も、その顔ぶれからひしひしと伝わってくる。
ハッキリ言ってこれはヤバイ。かなりヤバイ。指を咥えて見ている場合ではない。今すぐB2Dスタートアップに投資したい!!!あるいは、もし起業することがあるのなら、B2Dスタートアップで起業したい!!!!!
いや、わかっている。ここに上がっている企業が簡単に成功したわけではないということは、心の底からわかっている。
少なくとも、国内スタートアップシーンでB2Dを考える場合、マーケットがあまりに小さいことは明白だ。年間1,000万円支払ってくれるような企業は100社も無い。これだとどんなにうまくいっても売上10億円で天井だ。これではちょっとイケてない。イケてないではないか!
そうすると自然、これはもうグローバルでやっていくしかない。ああ、国内の投資家はみなお手上げだ。無論、ほとんどのスタートアップも、みんな揃って仲良くお手上げである。内気でギークでちょっと良いヤツ、そんな感じのDeveloper領域なのに、それに似つかわしくないパーリーピーポー、プチャヘンザッ!状態である。
しかし、ディスプレイの前で両手を上げながらも、せっかくなのでB2Dでグローバルで勝つための方法についてもう少し理解してみたい。真面目にきちんと理解したい。下記の表では、製品の特徴別に、B2Dビジネスを3つのタイプに分けてみた。
- Aタイプは製品そのもので何らかの顧客課題を解決してあげているもので、代表的な例はAPMやログ管理、CI系のサービスが特に多く、平均顧客単価が数百万円〜数千万円と非常に高い。利用回数や、顧客企業のサービス数 / サービスのユーザー数に応じて課金することが多い。日本では、Deploygate、アクトキャット等がここに該当。
- Bタイプは、DeveloperがAPIやSDKと言った形で接触するものだが、TwilioやZendeskと見てわかる通り、Developerのためのソフトウェア製品か?と言われると、そうとも言い切れない系のグループである。利用料に応じた従量制課金となる場合が多い。日本では、SORACOMやselfree等が該当。
- Cタイプは非エンジニアでもわりかし馴染みのある、業務効率化のためのコラボレーション系ソフトウェアを提供する企業群である。客単価は数百円〜と低めであり、ユーザー数、チーム数ごとでの課金体系となりやすい。日本では、Increments, Goodpatch, esa.io, NOTA等が該当。
B2Dビジネスを語る際にそれぞれ混同してしまいがちだが、例えばAの場合であれば営業のディールフローはB2B SaaSにごくごく近くなったり、Cのタイプは口コミでのバイラルが極めて重要になる等、それぞれ区別して考える必要があるだろう。一方で、全てのタイプに共通して言える重要な点をここでは覚書的に記しておきたい。ここからもまだ長いので、上げていた手はそろそろ降ろしてほしい。
1. コミュニティで認知を広げる
- グローバルにまともにマーケティングをぶっ放すと、顧客獲得コストが大変なことになってしまう
- これを避けるため、Developerがウヨウヨ居るコミュニティベースで草の根活動を行っていくことが基本
- 具体的には、勉強会の主催やイベントの協賛、Hacker NewsやStackOverflow等のオンラインコミュニティでの露出、Tech系ブログへの寄稿等が一般的
2. フリーミアムでバラまく
- 1.の施策により認知が上がっても、個人に有料でガンガン使ってもらったり、法人に有償版を売りつけるには手間も時間もかかる
- 個人利用のDeveloperに無償提供することで、彼らが勝手に所属する企業内で導入のための営業をしてくれることになる
- そうすることで、通常のB2B営業で発生するような営業コストが大幅に削減できる
3. エンタープライズに対応する
- 1.2.で利用が広がったとしても、法人での使用には耐えられず導入が進まないということにならないよう、意識して機能開発を行っていく必要がある
- 具体的には、セキュリティ要件、アカウントの権限管理、他サービスからの移行ツール等を整備する必要がある
さてでは国内のB2Dスタートアップの実態はというと、1.に至る前にまずはきちんとした製品を作ろうということで結構な準備期間がかかり、Seed〜Series Aラウンドの資金の殆どはプロダクトローンチまでに費やしてしまう。その後1〜2を進めるがここでもすぐにはカネにならず、並行して3の追加開発でまた資金が必要となり、ユーザーが増えたとしてもきちんと稼げるようになるには時間もかかってしまう。加えて、冒頭も書いた「マーケットが小さい」という判断を投資家側にされてしまうため、食いつなぐ資金もなかなか調達できない。
これを乗り越える方法は大きく2つある。
1つは、Slackのようにありえないスケールで1〜3のプロセスを普通に回し、ファイナンスで引っ張る(13年8月にローンチしてから、16年12月にエンタープライズ版を出すまでに$500mn以上を集めた)方法である。これは実現できればキレイなのだが、再現性を持たせることは非常に難しいだろう。
2つ目は、AtlassianがAudiと行ったように、はじめから大企業との成功事例をがっつり作りに行く(言わば、金をもらいながら3の開発をまず始める)方法である。これで当面の開発資金は確保され、またその成功事例を持って他社への展開もしやすい。
国内のB2Dスタートアップにおいては、まずは大手企業とがっつり組みながら最低限法人に売れるモノとしての開発を終え、その後グローバルに舞台を移して大勝負、というのが現実的かつ夢のあるやり方であるように思う。とにかく言えるのは、良いモノさえ作ることができれば、それを広めて儲けるためにやるべきことはある程度決まっているということだ。本当に、こんなにチャンスに恵まれた領域はなかなか無いと思うので、日本発のB2Dスタートアップが今後益々増えてほしいし、そういう会社に死ぬほどガンガン投資したい!!!!!と思う。