スキー場雪崩事故で思ったいろいろなこと
数日前こんな事件がありました。
栃木県のスキー場で雪崩が発生し、春山登山講習会に参加していた高校生が巻き込まれて8人もの生徒が犠牲になったこと。責任が、とかビーコンが、とか救助方法がとか空白の時間が、とかが問題ではなくて。
「絶対安全だと思っていた」--。栃木県那須町の那須温泉ファミリースキー場付近で起きた雪崩で県立高校生ら8人が死亡した事故で、現場責任者だった教諭が29日、公の場で初めて当時の状況を語った。安全と判断した根拠については自らの「経験則」という言葉を繰り返す一方、教え子を失った事実に声を震わせ、頭を下げて記者会見場を後にした。
「絶対」なんて言葉につられて8人もの高校生が亡くなるとは。雪山のどこに「絶対の安全」なんてあるんだろう。
那須雪崩:「取り返しつかない」講習会責任者、会見で釈明 - 毎日新聞
“ 「絶対安全だと思っていた」”経験則からくる絶対安全ってなんだ?あなたは死ななかったからたまたま生きてるだけじゃないか。そんな人に生命を預けた子供たちが不憫でならない
2017/03/30 00:16
「絶対」なんていう言葉が彼らの中にあったことが恐ろしい。登山はたくさんの喜びがある反面、大きな責任や危険と隣合わせだということを理解している人だけが登山する資格があると思っているのに。ましてや主催者側。
そこにはゴミやたばこのポイ捨て、樹木を折ったり石を蹴飛ばしたり、立入禁止のところに入り込んで写真を撮影したりするようなマナーも含みますよ。一人のそういった安易な行動が他人を怪我させたりするんだから。自分が怪我するだけなら勝手にやればいいんですけど。
スキー中、ガスで視界がほぼ0になったときのこと
大学生の頃とある山で山スキーをしていたことがあります。宿泊している山荘から歩いて斜面を登り、ただ滑り降りるだけ。歩いて登るくらいだから距離にしたら数百メートル、斜面を滑り降りたら山荘に着くはずの簡単な山スキーです。それも大学1回生初めての山スキー。
ところが。
天気が良かったのに本当の一瞬でガスがたちこめてきました。かなりの高地なので雲の中でスキーをしている状態。霧の濃い状態で視界がどんどんなくなっていきます。気がつけば視界は3mもありません。よく見えるのは足元だけ。
山を見ればどっちが山でどっちが谷かわかりますが、真っ白な地面だけを見ていると高低差や方向などがまったくわからなくなります。ただ、なんとなくスキー板が谷方向に滑っていく感じ。まっすぐ滑ってるのか斜めに滑ってるのかもわかりません。
周りに沢山いたはずの先輩や同期の仲間たちは見えず、ただ先輩方が「動くな!!」と大声で叫んでくださっていたんですが、どこから声がしてるのかもわからないくらい。
「死ぬかもしれない」と本気で思い立ち止まりじっとしていました。数分後ガスが消えたときに自分がいたのは山荘のすぐそば。しかし同期の一人は山荘を通り過ぎてはるか下の方まで滑り降りていていました。
スキーも自然を相手に楽しむスポーツなので、雪質などには十分に注意することやゲレンデではない斜面は滑らないこと、雪崩が起きたら下に逃げるのではなく横や斜めに逃げること(滑り降りるスピードより雪崩のほうが早いのです)を学びました。
走って逃げられるスピードではない雪崩
政府広報オンラインにこんなページを見つけました。
最大で時速200㎞ものスピードに!雪崩(なだれ)から身を守るために:政府広報オンライン
雪崩には新雪だけが滑り落ちる「表層なだれ」と積雪全てが滑る「全層なだれ」があります。新雪が滑る表層なだれは雪の上を滑るのでスピードが早く、時速100キロを超えるのだとか。
走って逃げられるものではなく、もちろん滑って逃げられるものでもないです。アルペンスキーの滑降の選手で100キロを超えるあたり。
雪崩に遭遇した場合の注意点などはこの政府広報に載っているので雪山に行くことがある人は一度でも眺めておいたほうが良さそうです。
山に「絶対安全」なんてない
山は楽しいこともたくさんありますが危険も伴います。半袖短パンにクロックスで夏の富士山の頂上を目指す人もいるとかいないとか。天候の変化や気温差、酸素濃度、いろんなことが普通の陸上とは違うし、山は気の緩みが事故の元。
たとえ実技講習が「悪天候のため中止」になったとしても「こういう天候、こういう雪質、こういう地形は危険だ、だから中止する」という座学講習が行えたと思うのに残念でなりません。二度とこういうことが無いことを祈りたい。
ウチの子も高校生なんですけど、体も心も本当に大人に近づいてきて「対等に話せる楽しさ」が出て来るところなんですよ。そんな子供を奪われる辛さは計り知れません。