こんばんは。ウェールズ歴史研究家の、たなかあきらです。
9世紀のウェールズは多くの小国に分断されていた。小国間では領土争いの戦争が絶えず、国力は落ち、外国の侵略を容易にしていた(ヴァイキング、マーシア)。
この時立ち上がった男がいた。
ロドリ・アプ・メルヴァンという人物である。
ロドリが成し得たことは
・初めて、小国に分かれたウェールズ大部分を統一
・長いウェールズの歴史の中で、
初めてグレート(大王)の称号を得た
ロドリはなぜ、偉業をおこなった、初めての人物になる事が出来たのか?
兜を脱いだ王
中世ウェールズの小国たち。
家臣:「ロドリさん、あなたは父メルヴァン王からウェールズの一小国を受け継ぎましたが、この先どうされるのですか?」
ロドリ:「過去の例を見ると、戦争に勝利しても負けた側が必ずリベンジし、争いがまた次の争いを呼び起こす無限ループに陥っている」
ロドリ:「この悪循環を断ち切らねばならぬ」
家臣:「なるほど、なるほど。じゃあ、悪循環をやめる方法はお考えですか?」
ロドリ:「小国に分かれて続けているウェールズをワシは統一する必要があると思ってるんだ。そうすれば争いは減るだろう」
家臣:「そりゃそうでしょうが、戦争を止めりゃしませんよ~」
ロドリ:「ワシは兜を脱ごうと思ってな。剣も置こうと思うんだ」
家臣:「そんなことしちゃ、逆にブスリと刺されますよ」
ロドリ:「無防備という防備をするんだ!」
家臣:「一見、強そうで弱そうですね」
ロドリは同じケルト系の民族は話し合いによって手を結ぶべき、と考えた。
隣国ポウィス、遠方のマン島、それにアイルランドと手を組んで、ヴァイキングやマーシアといった他民族の脅威に備えた。
東側の隣国ポウィスはカンゲンと呼ばれる男が王であった。
カンゲンはロドリには頭が下がらない人物であった。
カンゲン:「ロドリ殿、喜んで同盟を結ぼう」
カンゲン:「ワシにはロドリの父メルヴァンには大いに借りがある。マーシアに攻められたとき、わざわざ遠方より来て助けてくれた。同盟だけでなく、その時の恩返しをしたい。ワシの後、ポウィス国はロドリ殿に継いでもらいたい」
西側の隣国セイサルウィグはグウゴンと呼ばれる男が王であった。グウゴンはこの先、国の将来を考えていた。
グウゴン:「ロドリという男、これまでの王たちとは一味違うぞ。戦いに明け暮れることなく、国を広げている」
グウゴン:「なんと不思議な力を持った男なんだ。妹を任せるのも面白いかもしれない」
グウゴン:「ロドリ殿、ワシは決めたぞ。セイサルウィグ国はお主に任せた」
こうして、ロドリはこれまでのウェールズ王とは異なり武力を使うことしなかった。
しかし、ウェールズの大部分を初めて統一することに成功したのであった。
しかし刃を抜いたこともあった
家臣:「ロドリ王、は兜を着ず、剣も振ることは全くないのでしょうか」
ロドリ:「そうできれば良いが、兜を着て刃を向けざるを得ないこともある」
当時のブリテン島は、デンマークやスカンジナヴィア半島から、ヴァイキングが侵略し、領土を広げていた。特にデンマーク出身の頭領ゴレムに率いられたヴァイキングに荒らしまわられていた。
ウェールズも例外ではなく、ヴァイキングが再三にわたり無残な攻撃を仕掛けてきた。
ロドリ:「ウェールズ内では戦いは起こさないが、ウェールズをおびやかす脅威には断固立ち向かうぞ!」
ゴレムのヴァイキングは854年と856年に激しく北ウェールズを攻撃した。
ロドリ:「今こそわれらウェールズは団結して国を守るときだ。ヴァイキングの侵入を許すな」
ロドリ率いるウェールズ軍は果敢に戦い、ヴァイキング軍を壊滅させゴレムは戦死した。ここまでヴァイキングが大敗北した例も少ないだろう。
こうして、ウェールズを内側からも外側からも守ったロドリは、大王の称号を得たのであった。
ハゲ、ちび、手長、ノッポなど失礼なあだ名を平気で王に付けるウェールズであるが、ロドリに対しては、ロドリ・ザ・グレートと敬意をこめてそう呼んだのだろうと思う。
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