国民投票法案・教基法改悪案などの上程を阻止しよう
かけはし2006.1.30号 |
小泉内閣の改憲暴走を院内外の闘いで止めろ
一月二十日、第164通常国会が召集された。「小泉改革の総仕上げ」というキャッチフレーズで、「行革推進法案」を第一の主要課題に設定した小泉内閣最後の通常国会は、同時に首相の所信表明演説にも見られる通り、教育基本法の改悪、「米軍再編」の推進とグローバルな日米軍事一体化、防衛庁の防衛省への昇格など、「戦争ができる国家」体制構築への新たな攻撃の点でも際立っている。そしてその集約として憲法改悪をいっそう政治日程に手繰り寄せる改憲のための「国民投票法案」の上程・可決がもくろまれている。
小泉首相は所信表明演説の中で「憲法改正のための国民投票の手続きを定める法案については、憲法の定めに沿って整備されるべきものと考えます」と、その意思を示した。
国会召集のこの日、衆院第1議員会館で5・3憲法集会実行委員会の主催で「小泉内閣の改憲暴走を許すな!緊急院内集会」が開催され、会場を埋めつくす百七十人が参加した。
院内集会では忙しい国会審議の合間をぬって、共産党、社民党、無所属の国会議員十四人が参加し、市民とともに闘う決意を語った。共産、社民両党を代表して笠井亮衆院議員(共産党)と福島みずほ参院議員(社民党)があいさつした。
笠井さんは「憲法制定六十周年の今年、世界から日本国憲法への期待が高まっている」と訴え、「中山太郎衆院憲法調査特別委員長をはじめ公明、民主両党の改憲国民投票法案の成立を合意した。しかし河野洋平衆院議長が改憲には賛成しない、と述べたことに示されるように保守層の間でも異論が広がっている。小泉政治の破綻が耐震強度偽装問題やライブドア問題でも明らかになっているいま、国民の本当の多数派をめざす改憲反対の運動を作り出そう」と訴えた。福島さんは「国民投票法案と教育基本法改悪案の上程阻止を合言葉に、皆さんとともに闘いたい」と元気良く語った。
両党を代表した二人の発言以外に、辻元清美衆院議員(社民党)、佐々木憲昭衆院議員(共産党)、高橋千鶴子衆院議員(共産党)、赤嶺政賢衆院議員(共産党)、日森文尋衆院議員(社民党)、塩川鉄也衆院議員(共産党)、吉井英勝衆院議員(共産党)、保坂展人衆院議員(社民党)、糸数慶子参院議員(無所属)、紙智子参院議員(共産党)、吉川春子参院議員(共産党)、仁比惣平参院議員(共産党)が、それぞれ連帯あいさつを行った。名護市長選の応援からかけつけた糸数慶子参院議員は、「地元無視・頭ごなし」の米軍基地押しつけに反対する沖縄の闘いを報告した。
憲法9条は世界か
ら求められている
連帯発言はGPPAC(武力紛争予防のためのグローバルパートナーシップ)の川崎哲さんと日本青年団協議会の田中潮さん。川崎さんは、「昨年二月に東京でGPPACの東北アジア地域会議が開かれ、七月には国連本部で世界会議が開かれたが、いずれも地域的紛争予防において日本の憲法九条が重要だということが確認された。アジアと世界のNGOは九条に期待している」と述べた。田中さんは「青年は憲法に関心がないと言われているが、そうではない。青年たちの中に平和憲法の改悪に対する危機感が広がっている。先日行った網走では、若者が徴兵制の敷かれた日本をテーマにした劇を書いて上演した」と紹介した。
「5・3憲法集会実行委員会」を構成する団体から、憲法を愛する女性ネット、キリスト者平和ネット、憲法を生かす会、憲法会議、許すな!憲法改悪・市民連絡会、平和憲法21世紀の会、女性の憲法年連絡会がそれぞれ発言し、日本山妙法寺の武田隆雄さんもともに憲法改悪に反対する決意を表明した。
改憲のための国民投票法案の上程を阻止するために、ともに闘おう。 (K)
東京からの派兵を許すな
降雪をついて防衛庁に抗議のデモと申し入れ
東京一円に十センチ近くの積雪が予想される激しい雪の降る中、一月二十一日午後二時三十分、市ケ谷外濠公園で「自衛隊はイラクへ行くな! すぐかえれ!殺すな!殺されるな! 東京からの派兵を許すな!1・21防衛庁抗議」集会を新しい反安保行動をつくる実行委員会・第10期が主催し、その後防衛庁への申し入れ、デモ行動を五十人の参加で行った。
最初に、主催者を代表して天野恵一さんが次のように提起した。
「私は前回の熊本からの第8次自衛隊派兵反対行動にも参加した。私たちはこうした全国での派兵反対運動をつなげて、その度に全国各地からの反対の声を防衛庁に届け、抗議行動を行ってきた。今度自衛隊は東京の練馬、埼玉の朝霞、千葉の習志野から出兵しようとしている。これに断固抗議しよう」。
「今後、アメリカの補助軍として自衛隊に役割を担わせるように変質させようとする安保同盟の根幹にかかわる再編が進められようとしている。9条を改憲しなければ日米同盟再編が進まない事態にはいってしまった。そして、いよいよ自民党から憲法の明文改憲案が出された。自衛隊の海外派兵には反対だが、専守防衛ならよいと自衛隊の存在そのものを認めるようになっている議論もある。われわれは9条の精神の基本に立ち返り、平和的生存権の尊重に基づく、基地も軍隊を拒否していく反戦運動の原則をきちっと主張していかなければならない。こうした観点からイラク反戦運動を作り出していこう」。
続いて、自衛隊をイラクへ送るな!もどせ!2・12練馬集会実行委員会の池田五律さんがこの間の行動の報告をした。
「昨年12・18に朝霞自衛隊駐屯地へイラクへ行くなと四団体二十三人で申し入れをした。一月六日、池袋情宣、一月十五日には、1・15実行委の百五十人で自衛隊北町駐屯地への申し入れとデモを行った。一月二十九日に、練馬の自衛隊北町駐屯地から第一波の部隊が出て行く。今までなかったことだが、首都圏防衛隊の自衛隊が海外に派兵できるように自衛隊の再編が進んでいる。首都圏での『大規模テロ』に備える名目で北海道の部隊が首都圏にきて訓練をするようになった」
「昨年十二月十五日にイラクで国会選挙があったがいまだ議席が確定せず、新政府もできていない。サマワの住民の六〇%が自衛隊の撤退を要求しているという情報もある。自衛隊が孤立してイラク民衆に発砲することもあるかもしれない。ただちに自衛隊はイラクから撤退すべきだ」。
集会を三時に終えて、だんだん激しくなる雪の中、大きなシュプレヒコールをあげながら、防衛庁前に到着した。防衛庁には、新しい反安保行動をつくる実行委・第10期、自衛隊・東部方面隊をイラクに行かせるな!実行委、NO!AWACSの会(浜松)、有事法制反対ピースアクション(名古屋)、関西共同行動、ピースリンク広島・呉・岩国の申し入れ書を手渡した。降りしきる雪の中、その後四ツ谷までデモを貫徹した。 (M)
練馬からイラクに行くな
陸自第1師団司令部に派兵反対デモ
一月十五日、東京・板橋区の徳丸第2公園で「練馬から自衛隊はイラクに行くな! 1・15集会」が行われた。主催は反戦運動を着実に積み重ねてきた東京北部地域の団体が都内の仲間に呼びかけて作られた自衛隊・東部方面隊をイラクに行かせるな!実行委員会で、百五十人が集まった。
集会では、実行委員会を代表して「戦争に協力しない!させない!練馬アクション」の池田五律さんが報告した。池田さんは習志野空挺団の二百人が「警備」任務で派兵されること、自衛隊の「中央即応集団」司令部が朝霞基地内に設置される動きがあることなどを報告し、「対テロ」戦争参戦を任務とする態勢を本格的に取り出した自衛隊の動向に注意を促した。
次に、参加した各団体からのあいさつが行われ、立川自衛隊監視テント村、反安保実、埼玉の仲間、2・12練馬集会実行委員会、北部労協、沖縄・一坪反戦地主会関東ブロック、戦争抵抗者の会などが発言した。
集会の後、陸自練馬駐屯地向けたデモに出発。基地正門ではイラク派兵に反対する申し入れ書を読み上げて自衛隊の担当官に手渡した。陸自第九次派兵に反対する取り組みは、一月二十八日の朝霞行動、二月十二日の練馬集会と連続して行われる。(K)
寄稿
アイヌ民族共有財産裁判で12・11〜12連日行動
グループ`シサムaをめざして(首都圏) 加藤 登
十二月十一日昼、厳冬のなか、豊島区民センター前の中池袋公園において、上告人をはじめとする北海道と関東在住のアイヌ民族によって、カムイノミ・イチャルパが、厳粛に行われた。
この後、アイヌ民族の歌に先導されてのデモ行進がおこなわれた。五年間、地裁・高裁でたたかい、百年間の財産管理がいかにずさんであったかを明らかにしてきたこの裁判において、札幌高裁の判決は、道の管理に問題があったことを認めたものの、管理責任を免除するという不当なものであった。デモ参加者は、約五十人。「口頭弁論を開け!」「調査官面談を行え!」「ずさんな管理のまま、返還は無効だ!」などさまざまなプラカードを手に、池袋駅前を通行中の人々に訴えた。
午後六時、豊島区民センターにおいて開催された「ひらけ!最高裁」の集会は、ひらけ!実行委、アイヌ民族共有財産裁判上告人団、アイヌ民族共有財産裁判を支援する全国連絡会の共催によるものだ。八十人をこえる人たちが、この集会に参加した。司会は、狩野雄一さんと広瀬健一郎さん。共有財産のずさんな管理のまま返還は無効だと訴える上告人のアイヌ民族が、北海道から来京し、最高裁において、「口頭弁論」「調査官面談」の開催要求を訴えるための集会である。
集会では、上告人の川村兼一さんがあいさつに立ち、高裁でも証人台にたった瀧澤正さんが、概要説明をした。弁護団の佐藤昭彦弁護士より「上告理由書」と「上告受理申立て理由書」についてわかりやすい説明があった。通常最高裁は、地裁、高裁の内容を文書のみで検討し、判決を覆す時のみ口頭弁論を開くので、なかなか見える裁判にはならない。それでも「調査官面談」を要求していくことができる。高裁の判決において、裁判所は、「北海道知事において指定後の管理の経緯を詳細に把握し切れていないものがあることは否めない」と原告の主張を一部認めたものの、「アイヌ文化振興法の際、現に管理する財産に限る」として原告の訴えを退けた。「現に」の意味は、法律の世界では、本来管理すべき財産も含まれるという弁護士の説明があった。しかし、民法での判例はあるが、公法での判例はなく、このことを裁判所に認めさせてゆくには困難があるとのことであった。また、判決文では、「現に管理する財産を発見した場合には、再度の返還手続きをすべきである」といっているが、アイヌ文化振興法附則第3条では、複数回の返還請求が予定されていないこと、その意味では、附則第3条の運用もしくは条文の違憲性が問われるということであった。この後、若干の質疑応答があり、集会参加者は、この裁判についての理解を深めていった。
上告人の青木悦子さん、鹿田川見さん、諏訪野和彦さんが、この裁判への思いを語った。関東在住のアイヌ民族の丸子美紀子さん(関東ウタリ会)、長谷川修さん(レラの会)の発言を受け、上告人の島崎直美さんが上告人アピールを読み上げた。上告人であり、ウタリ協会の副理事である秋辺得平さんが「要求書」の訴えの確認を行った。最後に、支援する会事務局次長の清水裕二さんが、十二月十二日の最高裁行動の提起を行った。
最高裁へ「要求
書」を提出した
十二月十二日、最高裁へ「要求書」提出行動を行った。中に入ったのは、十七人。北海道から上京してきた上告人、全国連絡会、そして関東のアイヌ民族と支援の和人だ。面談相手は、司法行政書記官の金沢正人さん。秋辺得平さんが要望書を読み上げ、上告人全員が発言した。発言内容は、十一日の発言と同様のものであった。金沢正人さんは、うなづける点もたくさんあるが、発言のすべてをうけとめることはできてない。裁判所は、原告、被告の言い分を聞くべき義務があり。皆さんには請願権がある。「できれば、ペーパーにしてほしい」ともいっていた。「最大限、一カ月に一度であれば、請願を受け付ける」ということであった。
「共有財産問題」は、地裁、高裁でその管理のずさんさが一定程度明らかになってはいるが、それは、原告側証言によって明らかになっているだけで被告にそのことを認めさせているわけではない。また、その全容を明らかにさせるには、なおいっそうの努力が求められる。この裁判は、直接的には、アイヌ民族の共有を問題としているけれど、土地権、財産権にかんしても、大きな位置を占める裁判であり、アイヌ民族が先住民族としてもっている当然の権利「先住権」がどのような権利であるかを明らかにするうえでも重要な位置を持っている。最高裁の扉を開けるには、まだまだこれからも困難な闘いが待ち受けているが、それを覚悟し、上告人は声を上げている。その声を受けとめ、この運動の前進に向けて歩んでいきたい。
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