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「地獄の扉」を開けてしまった東芝

2017年03月30日

「地獄の扉」を開けてしまった東芝


 東芝は本日(3月29日)、連結子会社・米ウェスティングハウス(以下、WH)など2社が米連邦破産法11条の適用をNY州連邦破産裁判所に申請したと発表しました。

 またこれに伴い2017年3月の連結最終損益が国内製造業としては過去最大の1兆100億円となり、3月末時点の債務超過額が6200億円になるとの予想も発表しました。2016年10~12月期の決算発表を延期した2月14日時点では、その債務超過額は1500億円と予想されていたため、今回の破産法申請などにより新たに4700億円の「自己資本棄損」となるようです。

 また東芝は明日(3月30日)に臨時株主総会を開き、半導体事業の分社化を決定する予定です。その分社化した新会社「東芝メモリ」の過半を(あるいは100%を)外部企業やファンドに売却する予定ですが、その入札の一次締め切りも本日でした。

 まさに東芝の命運を握るWHの破産法申請と半導体事業の分社化・売却が「もはや後戻りできない状況」となったわけですが、それで東芝は完全に「地獄の扉」を開けてしまったと感じます。

 なぜならWHを維持することが日米原子力協定に縛られる日本政府に対する(少しくらいは米国政府に対しても)東芝の「カード」であったはずです。それがあったから東芝はいくら粉飾決算をしても刑事事件化せず、決算発表がいくら遅れても上場廃止の恐れもなく、いろいろな意味で「過保護」に扱われていたはずです。

 また東芝は、これからも高収益が上がる(少なくともそう考えられている)半導体事業という「もう1枚のカード」もあったため、合わせて政府も官僚組織も金融機関も株式市場も「それなりに重要な存在」と考え扱ってきたはずです。

 つまり東芝はその曲がりなりにも保持していた「2枚のカード」を自ら放棄してしまったわけで、今後は過保護に扱われることも重要な存在と考えられることもなく、単なる「倒産寸前のボロ会社」となります。

 つまり今後は日本政府からも(少しくらいではあったものの)米国政府からも官僚組織からも金融機関からも株式市場からも見捨てられ、もちろんそこから盛り返せる経営陣もいるはずがなく、文字通り「消滅して」しまうだけとなります。

 東芝について最も失望したところは、このWHの破産法申請も半導体事業の過半以上の売却も(当初案だった20%未満の売却をあっさりと変更したことも)、すべてパニックとなった金融機関の主張をそのまま受け入れて進めてしまったところです。オール日本としての損得など全く考えていないだけでなく、東芝の今すら全く考えていない「まさにサラリーマン経営者の責任逃れ」で動いてしまいました。

 だから表題の「地獄の扉」を開けてしまった東芝となります。しかし今回のWHの破産法申請も半導体事業の過半以上の売却も、やはり大きな問題が残っています。

 WHの破産法申請は「これでWHは東芝の連結対象から外れるため、ここからの損失拡大に歯止めがかかる」と考えているようですが、そんな単純なものではありません。

 まず東芝がまだ計上しているWHの資産・3000億円、WHへの債権・1756億円、WHへの債務保証・6500億円(本日のIRによる)の計1兆1256億円がすべて新たな損失となるはずです。しかし会計上の相殺はあるはずですが、本日発表の新たな自己資本棄損は4700億円しかありません。

 さらに東芝は、WHの株式の3%をIHIから189億円で、10%をカザフスタンのカザトムプロムから(たぶん)5億4000万ドルで、それぞれ買い取って全額減損しなければなりませんが、それも計上していません。

 さらに米国で建設中の原発4基のうち、サザン電力の2基は工事の遅れによる損失を米国政府が83億ドル(9200億円)保証しており、また4基とも2020年までに稼働できなければ(できません)減税措置を受けられなくなるためその損失も5000億円ほどあり、すんなりと米国電力会社や米国政府がWHの破産で諦めてくれるとも思えません。

 そしてWHは、米国の4基よりもはるかに以前に中国で4基受注しており、工事の遅れによる損失は米国の4基よりも膨らんでいるはずです。

 また本日の破産法申請を受けて米国政府からは早くも「安全保障上の問題がある」との懸念が示されています。つまりどう考えても「ここからの損失拡大に歯止めがかかる」はずがなく、また米国側ともかなりのギクシャクがあるはずです。

 半導体事業の分社化・売却については、日本政府が外為法上の事前申請に該当するといい出しています(これは当然です)。

 つまり「2枚のカード」を自ら放棄した影響が早くも出てきていると感じます。

 もう遅いですが、3月16日付け「これだけは言っておきたい東芝のこれから」に書いたように、WHではなく東芝そのものの法的整理と、WH経営陣の刑事責任追及と、プライスウォーターハウスクーパース傘下のPwCあらた監査法人の解任などを「ブラフ」に徹底的に損失拡大を食い止め、誰にでも売却できる半導体事業は最後まで確保しておくべきだったはずです。

 もはや手遅れになってしまいました。

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経済産業省役人とか
東芝経営陣は民事刑事事件にならんのですか?
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