3月20日号の日経ビジネスの特集は衝撃的タイトルがついています。「マイナス首都 東京、地方の自立が日本を救う」とあります。地方の時代を促進させたい意図もあるのでしょうけれど東京都がこのままでは沈没してしまう恐れすら感じさせる内容です。

私が東京に生まれ育ち、現在はカナダと東京を行き来している中で変化を感じることあります。それは「この街、歳、取ったな」であります。多くの方々は東京をビジネスやショッピング、娯楽の場所として捉えていることでしょう。駅前やビジネス街は人であふれ、活気があります。外国人が闊歩し、日経ビジネスがなぜそんな特集を組んだか、意味合いすら捉えにくいでしょう。

しかし、東京の住宅街は極めて保守的なところであります。「かつてのあの賑わい」を知っている方にとっては華やかなあの時代を知っている故に変化できない状態にあるのです。駅前の繁華街を抜ければほとんど数十年前と変らない住宅街の景色が再現されます。そこにいるのは数十年前には大いに元気だった高齢者であり、動かない自家用車が家の駐車場に鎮座しています。

そしてこれが最大のポイントですが、若い人が駅近くのマンションに住むことで住宅地における人口分布の分断化が起きたことで刺激がなくなってしまったのです。いわゆる過疎化する東京であります。これが不動産事業をする私の目から見る東京の最大の弱点であります。

東京都の人口は2025年に1398万人をピークに減少に転じると予想されています。と言っても現在1368万人ほどになっています。人口予想の統計は出入者数、出生者、死亡者の予想の組み合わせですが、5年前の人口予想に比べてピークが5年ほど繰り下がっています。理由は高齢者の余命が伸びているのが主因だと思われます。

では、経済はどうなのでしょうか?名目GDPは2015年が95.4兆円で前年比0.5%増、ですが、16年予想は94.4兆円でマイナス1.0%成長となります。実質で見ると2014年にマイナス0.7%になってから16年予想分を含め、3年連続マイナスで徐々に悪化していく傾向にあります。特に気になるのは東京都のGDPは近年、全国平均と同調してきたのですが、2015年実績、16年予想は全国平均が共にプラス0.9%なのに、東京都はマイナスとなり乖離してしまっているのです。日経ビジネスはここに注目したものと思われます。

さて、この衰退原因を作ったのは日本の歩みであり、都政であって、どの都知事がどうこうという話ではないでしょう。日本がバブル崩壊後に失われた15年とか20年を経験したように東京都はこれからもう少しシビアな停滞期がやってくる可能性があります。

理由は一言で述べれば、都民が夢をもって強い上昇志向にないからだろうとみています。日経ビジネスによると北海道猿払村、新潟市、会津若松市など一部の地方都市には元気の良いところがあるとされています。ただ、これは町の規模が比較的小さいため、ある特定の特徴を生かせば統計的に大きく反映されやすいマジックがあります。ところが東京都のような巨大都市ですと地盤そのものから大変革させるほどのパワーが必要で10年、20年単位の都市計画が重要な意味を持ってきます。

このところ都知事は3人途中で辞めているほか、地球規模のポピュリズムによる政策推進の困難性が見受けられます。東京の例を断面的に捉えてしまうのならば魚市場一つ、出来ないわけです。そんな中、小池知事がいくら国際金融都市を目指すといっても誰も本気にしません。それよりももっと現実的な待機児童の問題や高齢化対策に都民の声が集中し、それに対応するのが精いっぱいになってしまっています。

これは逆に言えば新しいことを踏み出すのが非常に難しくなった都市が東京である、とも言えないでしょうか?

私としては衝撃的な事実であり、こうすればよい、と簡単に答えが出ないところが悩ましいところであります。特区を使って外国人を増やすというのも極めて限定されるでしょう。但し、外から見ると思ったより足りないと思うのが大衆文化で立派な施設ばかりでいわゆる「町人文化」を勃興させたほうが良い気はします。

では今日はこのぐらいで。

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また明日お会いしましょう。