INTERVIEW
喜多村英梨
2017.03.17UPDATE
2017年03月号掲載
インタビュアー:荒金 良介
喜多村英梨が移籍第1弾ミニ・アルバム『Revolution【re:i】』を完成させた。声優としての活動はあったものの、2014年以降はアーティスト活動がなかったが、今作は約2年間に彼女が溜め込んできたものが一気に噴出した凄まじい作品に仕上がっている。表題曲はPENICILLINのHAKUEIをプロデューサーに迎え、ドラマチックなシンフォニック・メタルが炸裂。ほかにも和の要素やライヴを意識したエンターテイメント性に富む楽曲を収録するなど、バラエティ豊かな全5曲が揃っている。表立ったアーティスト活動がなかった期間を含め、彼女はどんな心境だったのだろうか。自分のやりたいことを詰め込んだという今作について、彼女にいろいろと話を訊いた。
-今回は"おかえりなさい"という言葉が相応しいですかね?
はい、そう言っていただけると光栄です。声優を基軸にしながら、役者や、喜多村英梨の表現のひとつとしてアーティスト活動も前からやらせていただいているもので。少しブランクはできましたが、喜多村英梨の音楽人生は消えてないぞと。今回トムス・ミュージックにご協力いただく際に、喜多村を相変わらず愛していただけるような、これまでの喜多村像にプラス、これからの可能性というか、さらにブラッシュ・アップできたらいいなと。
-えぇ。
もう何度もデビューしてますからね(笑)。今回、私的には最初はシングルからと考えていたので、ミニ・アルバムという単語が出てくると思わなくて。トムス・ミュージックで自分の代表曲が5曲も作れるなんて......よっしゃ! と思いました。
-前回のインタビュー記事にも目を通しましたが、喜多村さんは音楽に対してマジメというか、ものすごく考えてますよね。今日も果たしていくつ質問を挟めるかなと(笑)。
私、話が長いんですよねぇ(笑)。マジメでありたいけど、堅すぎると、折れちゃうことも経験しました。今年8月にいよいよ30歳を迎えるんですが、自分の中で三十路というと自立した落ち着いた女性像があったけど、未だに22、23歳ぐらいのメンタルで止まってるんですよ。やりたいことやるぞー! という気持ちで。どうしよう、背伸びしなきゃと思ったけど、いい意味でこのままでいいのかなと。自分的にはターニング・ポイントになる年齢と環境なんでしょうね。緊張よりも、今は感動の方が強くて。待ってくれるお客さんに対して、自分が受けた感動を、そのままお返しする年にしたいなと。
-音楽活動休止中の2年間はどんな期間でした?
正直言うと、私は生き急ぐタイプで。課題や目標を立てて、自分を追いつめるというか、ストイックな状態のまま立ち止まらない。そうしないと、安心できないタイプなんですよ。止まったら負けみたいな。
-止まったら死んじゃうぐらいの?
そうですね。声優のお仕事はやってましたけど、声優で歌う機会はあっても、自分の気持ちを吐き出す表現は死んでましたからね。焦りというより、疼きですかね? 何かしたいんだけど、それを出す場所がない。歌いたいけど、歌えないんだよ、という2年間でした。
-それはかなり苦しくないですか? そのモヤモヤ感はどやって解消したんですか?
その気持ちはこの作品に成就できました。いつか活動できる日のために、使いたい単語やテーマ、着たい衣装、作りたいMVをメモ書きしてフォルダに入れてました。そのストックを作りながら、声優の方たちから刺激を受けてましたからね。あと、私を待ってくれてる人から手紙をもらって、"次はいつ出すんですか?"と聞かれたときに、何も言えない。待ってる人がいるのに、何もできないのが悔しくて。ただ、チャンスが訪れたときに、自分が意見できない状態は良くないから、ネタだけは集めてました。
-今作はこの2年間がなければできなかった内容だと。で、昨年10月に上海で行われた音楽フェス"Amazing Soul Fes 2016"で久しぶりにパフォーマンスを行いましたけど、感触はいかがでした?
日本ではないけど、私はいたよ! 歌えるよ! という挨拶をして。ただ、昨年の11月1日に世の中に文面が出たときに(※トムス・ミュージック移籍とミニ・アルバムのリリース発表)、私の中では再スタートした気持ちが強くて。そのときのライヴはソロじゃなかったし、フェスの中のエンターテイメントのひとつで歌いに行きました、という感覚でしたからね。
-あぁ、そうなんですね。
でも日本から来てくれたファンの方もいて、もう一度足を運んでくれるんだなと。その行動力に驚きました。こんなにいるとは思わなかった! というくらい顔馴染みの方もいたので。早く新曲を歌いたい! と思いましたね。アーティスト活動ができなくて、悪いなと思ったし、賞味期限切れしてなかったんだなと。私を待ってくれた人のことを尊く感じましたね。
-では、今作を作る際には自分がやりたいことを伝える作業から始まったんですか?
そうですね。私はやれるやれないは別で、言うだけ言うんですよ。正直、言ったことはほぼ叶いました。
-それはすごいです。
聴き心地がいいものとかは無視して、テーマは"私の好きなものを詰め込む"だったので、聴きたい人はついて来い! って感じです(笑)。音楽面で牙は折れてないぞって。だから、自分が書きたい歌詞、着たい衣装とかを全部箇条書きにして、音楽はこういうものを聴くので、これを超えるものをって(笑)。メタル、ヴィジュアル系、海外アーティスト、打ち込み系とか、私が好きなものをとりあえず受け取ってもらおうと。そしたらスススッと進んで。あと、自分は中二病のところがあるので、ここのフォントだけは小文字にしましょうとか。
-マキシマム ザ ホルモンのマキシマムザ亮君(歌と6弦と弟)と話が合いそうですね(笑)。
はい、私はホルモン中で通ってますからね。漫画や絵を描くのも好きなので。"エアマスター"のアニメのエンディング曲を聴いたときに、ホルモンさんはすごいなと。
-「ROLLING1000tOON」(2003年リリースのシングル『延髄突き割る』収録曲)ですね。
そうです! 私のカラオケ発散曲ですからね。それからいろいろ探して聴くようになりました。歌詞や言葉のチョイス、見た目を含めたこだわり......トリックアートみたいにじっと見つめると、何かそこに意味があるんじゃないかって。それを形にするアーティストがホルモンさんですからね。