「少数派が発言する組織」が強い本質的な理由
P&Gが実践する「受容と活用」の凄み
昨年からダイバーシティ&インクルージョンの取り組みについて、無償で研修やセミナーの形で提供し、注目を集めるP&Gジャパン。日本での取り組みは25年にもなり、昨今、女性活躍の取り組みをスタートした多くの企業が直面する課題にもいち早く向き合ってきた歴史がある。
前回記事では、女性活躍に詳しいジャーナリストの治部れんげ氏が、同社ヒューマンリソーシス アソシエイトディレクターの臼田美樹氏にダイバーシティの取り組みの実際について聞いた。続く今回の記事では、アフリカなど世界各国でダイバーシティを経営課題として取り組んできたスタニスラブ・べセラ社長に話を聞く。
イノベーティブは「違い」が生み出す
――ダイバーシティは経営課題というお考えです。なぜですか。
従業員のダイバーシティが重要な理由は、何といっても多様な発想を生かすことができるため、です。いくつか例を挙げてお話ししていきましょう。まずは日本市場における外国人社員の発想が生かされた例です。
「ファブリーズ」という製品があります。室内のにおいを取り、いい香りにする製品です。日本市場では「玄関置き」のファブリーズのアイデアが生まれてヒットしました。当社では消費者のご家庭を訪問し、潜在ニーズを探る試みの蓄積があります。あるとき、外国籍の社員が、日本のご家庭を訪問させていただきました。ドアを開けてまず驚いたのは、靴を脱ぐことです。
私の故郷・チェコでも玄関で靴を脱ぎますが、米国など他国では通常、靴を履いたまま家に入ります。違う慣習に触れたことで、気づいたのは「脱いだ靴が発する独特の匂いを取り、いい香りを玄関に漂わせる、というニーズが日本にあるかもしれない」ということでした。これは玄関で靴を脱ぐのは当たり前と思っている人は気づかなかったかもしれません。「違い」が生み出すイノベーティブな発想の一例といえます。