2017-03-29

てるみくらぶが「詐欺だ!」と思ってると、他でヒッカカルよ

てるみくらぶは、状況だけ見ると典型的な「ギリギリまで金策してコケた」パターンですよね。

んで、これを「計画倒産では?」とか「詐欺だ!」とか判断してると、自分代理店使うときに、悲惨なことになるヨ。

角が立たないようにチョットした昔話をします。

まず用語説明から読んでね。

COD(Cash On Delivery)

商売においては、信用がモノを言います

信用できない相手商売するには?

ニコニコ現金払いが一番。

「おうオマエは信用できねえから現金のみだ」

さて、旅行業者や、旅行業者代理業は、いろんな相手といろんな約束します。

代金を支払わなければクーポンチケット)がもらえない。

弱小のちっちゃな代理店だと、お客さんに全額前入金してもらうのが大前提

だって、手持ち資金がないか飛行機代の建て替えとか無理ですモノ。

そしてコレを阻むのが、クレジットカード現金化です。

クレカ決済後、実際の現金が手元に来るのに一ヶ月くらいかかる。

コレ大事ことなんでもう一回言いますね。

正しく払うつもりで正しくクレカ決済が切られても、現金振込まで時間かかる。

IATA(国際航空運送協会)他

ご存知かとは思いますが、航空会社はすんごくたくさんあります

旅行代理店がいちいち「えーと次はキャセイパシフィックに連絡して、戻りが中国南方で、エアアジアダメだったらエチオピア航空担当者を……」とかやってるとどうにかなりますね。

そこでIATAって航空会社業界団体が、窓口になって便宜を図ってくれるわけです。

カルテルっぽいよねって嫌がって加盟してない航空会社もある)

「カネを積んでうちの公認代理店になる?じゃあ発券させてやろう」

IATA公認代理店になると、IATA加盟航空会社航空券の発券ができます

CRSとかGDSとか言うんだけど、まあ予約発券システムで、航空券バンバン切れると思ってね。

さらに、この予約システムにBSPと呼ばれる国・地域ごとの請求決済システムが載ってて、電子決済できる。

はるか昔には、旅行会社印が組込まれ機械に、航空会社ロゴ名前の載った板(キャリアプレート)を嵌め込んで、白紙航空券差し込んで、セイヤッと押すと航空券が出来上がってたわけです。

(今は電子化されてるからインクで汚れることもなくなって便利ですね)

プレートが引き上げられたって報道は、「旅行代理店から航空券発券の権限を取り上げた」ってことです。

今まで予約発券してた航空券の支払いが滞ったら、そりゃ止められるよね。

KB(ここだけ昭和です)

航空運賃は、過去政府が決めていました。

勝手に変えられないの。規制されていたの。

(いまは、認可制から届出制になって、国内運賃はわりと自由になりましたね)

さて、政府だのIATAだのが正規運賃を定めて、勝手な値下げを制限されるとどうなるか。

航空会社正規運賃販売する。旅行会社正規運賃で購入する。

携帯電話販売で報奨金制度って話題になったの覚えてます

旅行業界でKBと言えばキックバックを指します。

ある種の飛行機座席を「売ってくれたら」報奨金を払うよ。

さらに、ある期間を通じて「何席以上売ってくれたら」さらに報奨金を払うよ。

古き良き昭和時代旅行代理店彼氏彼女からゴッツイ割引航空券3月とか9月とかの期末に出回ったのは、この報奨金のおかげなんですね。

ニギリだのシバリだの呼ばれとりましたが、限りなく黒に近いグレーだったりする営業のバチバチの結果は、自転車操業に向いた手法だったことは間違いありません。

社員業界回転率が高いと、「いやー無理っスわ。来期調整で一つ」という口約束が、気がつくと有価証券報告書売掛金として載ってたりするので、怖いですね。

少しだけニギリの具体例

正規運賃20万円の航空券10席分ありますね。

  • 20万円x10席=200万円 (額面)

正規コミッション手数料)が9%で、KBが3万円としましょうか。

  • 20万円x91%10席=182万円 (払う)
  • 3万円x10席=30万円 (3ヶ月ぐらい後に振込)
  • 182万円-30万円=152万円

さらに、半期のニギリ(リベートとも言う)を2000席で、4万上乗せと調整した。

  • 20万円x91%10席=182万円 (払う)
  • 3万円x10席=30万円 (3ヶ月ぐらい後に振込)
  • 4万円x席数=8000万円(2000席を超えたときだけ)
  • (152万円x200回) - 8000万円=3億400万円 - 8000万円=2億2千400万円
  • 2億2千400万円÷2000席=11万2千円

これで、往復運賃40万円の航空券を、25万円(なんと15万円も安い!)として売り出すと、

25万円-22万4千円(11万2千円の往復)=往復で2万6千円が、旅行会社の儲けになるわけです。

往復1000席で、2600万円の儲けですね。

1998席だとこうなります

  • 20万円x91%x1998席=3億6千363万6千円
  • 3万円x1998席=5994万円
  • ニギリ不達成のため、無し
  • 3億6千363万6千円 - 5994万円=3億369万6千円
  • 3億369万6千円÷1998席=15万2千円

往復30万4千円の航空券を、往復25万円で売り出してましたね。

ハイ、5394万6千円の赤字ですね。怖いですね。ニギリ怖いですね。

しかも、約束した営業部員は既に3ヶ月前には転職してたりすると……

とは言え、信用がなければ借金はできない

さて、平成も29年にもなってニギリで仕事する旅行会社は無いハズです。

ウッスーイ利ざやで稼いでおいて、繁忙期のブロック席を確保して儲ける。

ホテルや現地の案内人と上手いこと調整して、みんなで幸せになろうよと稼ぐ。

最初に言いましたが、三流の弱小旅行業者代理業とか、現金決済以外できないワケです。

信用がないから。いつ逃げるか判んないから。

逆に言えば、いわゆる買掛金を積んで取引が続くっていうのは、信用の証なわけです。

まり、誠実で真面目で信用できると感じる人ほど巨大な借金で回ってしまう。

評判が良い会社ほど、ギリギリまで粘って、自転車止まっちゃうのです。

(予約が入り続けて客が居れば居るほど、銀行は金貸してくれるからね)

まとめに代えて「プロにカネを払おう」

飛行機従業員の誠意で飛ぶわけではありません。マネーで飛ぶんです。

自分が何時間も命を預ける乗り物を、値切って叩いて怖くは無いですか。

給料を満足に払ってもらえないプロフェッショナルの誠意を当てにするのは、正しいでしょうか。

同じように、正規運賃正規宿泊料金、正規ガイド料金から、明らかに安い場合は、立ち止まって下さい。

閑散期だから団体客だから、次があるから知名度を上げたいから。

様々な理由言い訳はありますが、利幅が薄い赤字キツイ、それはそのままブラック労働に繋がるんです。

タダよりマシが本当なら、キャベツを押しつぶすトラクター存在しません。マシじゃダメなんです。

ゼロよりは時給100円で仕事がある方がマシだろうってのはブラック労働なんです。

正規料金に上乗せして、手数料を払う」って国もあるんですよ。

手配業ってのは本来そうしたもんです。旅行企画だってそうです。

自分でやると面倒な手配・企画をお願いする代わりに、手数料を払う。

旅行計画を立てているとき楽しいものです。

是非、何も考えずに正規料金を払ったらどうなるか試算してみて下さい。

そして、代わりに手配してもらう人を何時間雇えば計画完了するか考えてみて下さい。

1割2割はコネや手配技術で安くなるかもしれません。4割5割の割引、ホント大丈夫ですか?

選択肢は大量にあります最安値しか存在しないワケじゃないんです。選んで買えるんです。

客が悪くないのは当然でしょう。そして「削った金額努力で補うんだろう?」と精神論で買うのも客です。

息の根が止まってから死体蹴りするよりも、息も絶え絶えの業界の足元見て買い叩くのをまず止めましょうよ。

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