ゲームは命を守る”浮き輪”
学校に行かず、家で生活するようになった子どもが、ゲームばかりしている姿を心配する親がよくいます。学校で勉強せずに学力はつくのだろうか、遊んでばかりいて将来は大丈夫かという不安です。加えて、近年は長時間ゲームをしていると「ゲーム脳」になるという仮説が流布して、親の不安を煽ります。
まず、学力に関しては心配ないと思います。子どもは学校の外で、教科書という硬い枠組みから自由になり、最新の知識や情報を手にします。ゲームばかりしているように見えても、新聞や雑誌を読みテレビを観て、世界情勢や政治経済の動向、スポーツや音楽など、貪欲に吸収していきます。こうした営みは人間形成に欠かせない大切なことですが、多くの親は「何もしていない」と言います。一日も早く学校に復帰させることを優先し、学校と連携して登校圧力を加えます。このため、いじめや教師の人権侵害、部活での過労などで心身ともに傷ついている子どもたちは必要な休養がとれません。欠席しても心は休まらず、「何もしていない」自分を責めます。毎日のようにゲームをしていても所在なく、周囲の目を気にしながらやるため楽しめないし、クリアしたソフトをくり返しやることも多く、退屈でつまらないと、子どもたちは言います。学校へ復帰することが求められているあいだは、自分の好きなこと、やりたいことをするのは封じられているのと同じでなにも手につかない状態なのです。誰もわかってくれない孤独な世界では、ゲームをしているあいだだけがつらい現実から意識をそらすことのできる時間なのです。子どもにとってゲームは不安の海に溺れて、命が沈んでしまわないための浮き輪やビート板の役割をはたしてくれているのです。
親が学校へのこだわりを捨て、家を居場所に学校の外で学び育つことを、心から認められるようになると、子どもがゲームに費やす時間はぐんと減ります。あれこれやりたいことが次々に出てきて、充実した時間をすごせるようになります。
(心理カウンセラー・内田良子)