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県内ワサビ生産が激減 地下水減少が原因

自身のワサビ農園で地下水調査をする丸山組合長=安曇野市豊科で

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 北アルプスの麓、安曇野市の豊かな湧き水で育つワサビの生産量が激減している。地下水減少に伴うワサビ田の荒廃や生育不良などが原因とみられる。最近の十年で栽培面積、生産量とも半減しており、深刻な状況だ。市は、地下水保全に向けて水環境基本計画を策定中だが、地下水位の低下に神経をとがらせる栽培業者らの心配は消えない。

 県内ワサビの生産量は、同市が九割以上を占める。農林水産省の全県調査によると、二〇〇六年度に千八百八十八トンあった生産量は、一五年度は八百六十八トンに半減。栽培面積も、〇六年度は百ヘクタール余だったのが一五年度は四十一ヘクタールに減った。

 原因の一つとされるのが地下水の減少。信州大工学部の中屋真司教授が一月にまとめた市内の地下水調査結果では、一九八六年は五万五千七百五十億トンと推定された地下水が、二○一五年には五万四千五百四十五億トンと、二十九年間に千二百五億トン減少したことが分かった。

 降水(雪)量の減少、地下水形成に寄与する水田の減少、工場などの揚水量増加などが要因とされる。市は地下水の適正利用に向け、新規揚水計画の届け出と事前協議などを義務化した条例を設けるなどしている。

 信州わさび組合(組合員約百人)の丸山光弘組合長(69)は、同市豊科の農園約一ヘクタールでワサビを栽培する。十数年前から自分の農園で地下水調査を続けており、地下水減少を肌で感じる一人だ。「これ以上減れば、廃業に追い込まれる」と危機感を募らせる。

 市内の企業が進める地下水の揚水量を大幅に増やす計画には不信感も見せる。丸山組合長は「条例は地下水を守るためにつくったはず。ワサビ栽培者にとっては死活問題だ」と指摘。耕作放棄水田への湛水(たんすい)や地下水利用企業の資金提供など、実効性のある対策の推進を求めている。

 (野口宏)

 

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