韓国検察庁は27日、朴槿恵(パク・クンヘ)前大統領の逮捕状を請求した。韓国で大統領経験者に対する逮捕状が請求されるのは今回が3回目。全斗煥(チョン・ドゥファン)・盧泰愚(ノ・テウ)両元大統領は1995年に収賄と軍事クーデターに絡む内乱の容疑で逮捕された。ちなみに盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領は収賄容疑の捜査中に自殺したため逮捕はされていない。検察は朴前大統領の逮捕状請求について「企業から金品を受け取った容疑などは非常に重大であるにもかかわらず、自らの容疑を否認しているため証拠隠滅の恐れがあり、また他の関係者がすでに逮捕されていることから考えても、逮捕状を請求しなければ公平性に問題が出てくる」と説明した。裁判所は30日に審査を行い、今回の請求を認めるかについて決定を下す。
今回の逮捕状請求はある程度予想はされていた。朴前大統領とその周辺に賄賂を贈った容疑でサムスン電子の李在鎔(イ・ジェヨン)副会長がすでに拘束されており、また朴前大統領の指示を受けた大統領府の元主席や閣僚、次官らもすでに逮捕され裁判を受けている。このような状況で全ての問題の根源でもある朴前大統領だけを例外として逮捕しなければ、公平性という観点から問題が出てくるのは当然のことだからだ。
本来、身柄の拘束は被疑者が逃亡あるいは証拠隠滅の恐れがあると認められる場合に請求されるのが原則だ。ところが朴前大統領はすでに数カ月にわたる捜査で関係者全員が拘束され、証拠隠滅の可能性は低いと考えられるし、また逃亡の可能性に至ってはなきに等しい。罪があれば有罪判決が確定してから刑を執行すればよいはずで、今回あえて逮捕して捜査を行うべき理由があるのかは疑問だ。韓国において史上初めて大統領職を罷免された元大統領が縄で縛り上げられ、法廷に出てくる姿を目にする国民も内心は穏やかではないはずだ。
いずれにしても朴前大統領が逮捕されるかどうかは今や専門の裁判官による判断に委ねられたため、今後は裁判所が賢明な判断を下すことを願うばかりだ。事態がここに至るまで韓国社会は多くの混乱と試練を経てきたが、とにもかくにも一定の制度の枠の中で問題の解決に向かっているのは確かだ。これからは朴前大統領を支持するかどうかに関係なく、全ての国民が裁判所の決定を厳粛に受け止め、国全体が法治の原則に従っていかねばならない。