米サンフランシスコのベイエリアと英ロンドンのショーディッチでは、事業を立ち上げるために大学を中退することは、名誉の印だ。もし規模が大きい著名ハイテク企業で働きたいなら、話は別だ。
米アマゾン・ドット・コムは今、米グーグル、米アップルと並び、世界中の一流ビジネススクールから人材を採用する最大級の企業となっており、投資銀行などの旧来の大量採用企業と肩を並べている。昨年、ロンドン・ビジネス・スクール(LBS)とカリフォルニア大学バークレー校ハース・スクール・オブ・ビジネスでアマゾン以上に経営学修士(MBA)取得者を採用したのは、コンサルティング会社だけだった。ミシガン大学ロス・スクール・オブ・ビジネスでは、2016年のMBA取得者の採用数はアマゾンが一番だった。
■1000人近くのMBA取得者を採用
マサチューセッツ工科大学スローン経営大学院の経営修士号を持つミリアム・パク氏は、アマゾンの大学プログラム採用担当ディレクターだ。彼女の率いるチームは昨年、全世界で「数百人台の後半」を数えるMBA取得者を採用した。正確な数字を挙げるのは拒むが、MBAレベルの新規採用者の数はその前の12カ月間より約3割多かったという。パク氏は「この伸び率が近く鈍ることは予測していない」と話している。
MBAを最近取得した卒業生から最初に就いた仕事の給与(自己申告ベース)を収集しているトランスパレント・キャリアによれば、アマゾンの初任給は契約ボーナスを含め、プログラムマネジャーの13万7000ドル(約1500万円)からシニアプロダクトマネジャーの18万ドル(約1980万円)まで幅がある。これに対し、コンサルティング会社の初任給は平均16万5000ドル(約1820万円)、投資銀行では17万ドル(約1870万円)だ。
「MBA取得者から分かるのは、彼らは創造したがっており、何かを築き、リスクを取りたがっていることだ」。パク氏はこう言う。「かなり順応性があり、私が見るところ『曖昧さに対処する能力』のレベルが高い。ここに分析的な傾向が非常に強いMBA取得者を加えると、完璧な供給線になる」
パク氏によると、アマゾンで称賛されるのはこうしたスキルだ。「私たちは、『顧客からさかのぼって取り組む』。これには、分析を得意とし、深く掘り下げ、データは実際に何を物語っているのかと問題提起する人材が必要になる」
アマゾンは、ロス・スクールのMBA課程の中核を成す「マルチディシプリナリー(学際的)アクションプログラム」のパートナー企業だ。学生チームが7週間アマゾンで研修するもので、ロスのキャリア支援部長を務めるデイミアン・ズィカキス氏によれば、これによって学生と企業の双方が互いに一緒に働きたいかどうか決められるという。
パク氏によると、MBA取得者にとってアマゾンがほかの採用企業よりも魅力があるのは、世界11カ国で電子商取引(EC)事業を展開し、世界185カ国・地域に顧客を擁するグローバルな事業展開をしているからだ。