幾度かのメンバーチェンジを繰り返しながらも、美意識の徹底したアーバンなサウンドで他のアイドルやガールズグループとは一線を画す個性を打ち出し続けてきたEspecia。2016年6月からはオリジナルメンバーの冨永悠香と森絵莉加に、新メンバーのミア・ナシメントを加えた3人体制で活動していたが、今年1月、グループの解散がアナウンスされた。ラストツアーは福岡、大阪、名古屋、東京の4都市で行われ、この公演が彼女たちにとって最後のステージとなった。
最終公演はバックバンドを従えてのライブとなったが、「3人のハーモニーも楽器の一部に」という意図から、今回はパーカッションや複数のホーンを加えた大編成ではなく、平岡タカノリ(Dr)、角谷光敏(B)、後藤英見(Key)、Daioh(G)、早川一平(Sax)、Rillsoul(Cho)によるシンプルな編成が組まれた。ステージセットの左右には、Especiaのアーバンでラグジュアリーなムードを象徴するヤシの木が。バンドが奏でる短いインストに乗せて登場したEspeciaの3人は、アカペラから始まる「アビス」でラストステージの幕を開けた。続いて「No1 Sweeper」のイントロが流れると、満員の客席から大きな歓声が上がる。「ナイトライダー」では3声のハーモニーにメロウなサックスが絡み、ラストシングルとなった「Danger」ではバンドのファンキーなサウンドが心地よくフロアを揺らした。さらに、森がメインボーカルの「オレンジ・ファストレーン」、ぺシスト&ペシスタ(Especiaファンの総称)もサビを合唱した「アバンチュールは銀色に」と一気に6曲を歌い終えたところで、3人はこの日最初のMCへ。
3月11日より福岡、大阪、愛知と3都市を回り、東京でツアーファイナルを迎えた彼女たち。冨永は「大阪公演のときに『人間は忘れちゃう生き物だから、解散したらみんなEspeciaは忘れちゃうんでしょ?』って言ったんですけど、今日は絶対忘れられない夜にしてみせます!」と宣言した。加えて「私たちはサヨナラは言いません。ここにいる皆さんに伝えたいことは、いつでも“Gracias”、ありがとうという言葉です」と伝えると、「Saga」でライブを再開。中盤にはミアのボーカルをメインに据えた「Affair」をはじめ、「雨のパーラー」「Mistake」「FOOLISH」などミドル&スローテンポで3人のハーモニーをじっくり聴かせる楽曲が多く並ぶ。そして後半は「皆さんのコーラスも聴かせていただきたいと思います」と、新曲とリアレンジ音源のみで構成された3月22日発売のベストアルバム「Wizard」から、新曲「Ternary」のサビのフレーズをメンバー自らぺシスト&ペシスタにレクチャー。ゆったりとした横揺れのビートに乗せてフロアいっぱいに歌声がこだました。
ぺシスト&ペシスタとの一体感を作り上げたEspeciaは、最後にアップテンポな「YA・ME・TE!」を歌い、バンドメンバーを1人ひとり紹介。各プレイヤーのソロ回しで大盛り上がりの中、本編は終了した。ほどなく「Especia!」コールが上がり、メンバーとバンドは再びステージへ。「Aviator」では森が、「Boogie Aroma」ではミアが、「きらめきシーサイド」では冨永がメインボーカルを務め、それぞれの個性を際立たせながらも息の合ったコーラスとダンスパフォーマンスで観客を魅了した。3人は改めてバンドメンバーを紹介し、9人全員で手をつないで挨拶。これにて大団円かと思われたが、アンコールを求める声は鳴り止まない。これを受け、メンバーは3人のみでステージに上がり、1人ずつ最後のメッセージを伝えた。
昨年6月に新メンバーとして加入したミアは「私がEspeciaに入って、昨日でちょうど9カ月だったんですよ。たったの9カ月ですよ?」と解散を惜しみつつ、「不安に思うこともあったけど、Especiaに入れてとてもよかったです」とコメント。2012年の結成時からおよそ4年9カ月にわたりEspeciaに青春を捧げてきた森は「ふと振り返ると……結成当初は何もかもが初心者で、歌もダンスも初めてだったし、できるだけ皆さんに聴いてもらえる歌、見てもらえるダンスを日々レッスンしてがんばっていたのが、昨日のようにも思えて」とこれまでを振り返った。森と冨永は現体制に移行する際に活動拠点だった大阪を離れ、現在は東京で暮らしている。森は「新しい生活を始めたけど、親元も離れて友達もいなくなって……がんばる源がなくなって毎日つらくて、関西に帰ろうかなと思ったことが何度もありました」と胸の内を明かしたが、「でも、3人で初めてやったライブでファンの方の顔を見たとき、何かが見えた気がして、今日ここまでがんばってきました。Especiaは青春を捧げたグループだったので、解散にはやっぱり寂しさがありますけど、後悔はありません」ときっぱりと、しかし涙ながらに語った。
Especiaをリーダーとして牽引し続けてきた冨永は「私は子供の頃から歌手に憧れていて、歌を聴いてもらうのが大好きでした。Especiaとして5年間活動してきて、苦しいこともたくさんあったけど、それがどうでもよくなるくらい皆さんに観てもらえる機会がたくさんあって。本当に皆さんのおかげで活動して来れたんだと思います」と感謝の言葉を述べ、「Especiaには夢中になりすぎたというか、自分のすべてを捧げすぎていて……こんな悔しい思いをするならもう夢中になることはしたくないと思う反面、これだけ幸せな時間を費やす夢をまた見つけていけたらと思います」と涙ぐむ。冨永はさらに続け、「Especiaは10人から始まり、たくさんの歴史があって。どの時代がいいとか各々思ってらっしゃると思うんですけど、私はどの時代も最高だと思ってるし、今は絵莉加とミアと声を重ねられることが本当に楽しかったです。Especiaを生活の一部にしてくださった皆さん、一緒にがんばってくれたメンバー……過去のメンバーも合わせて11人の“Spice”、私をEspeciaとして活動させてくださったスタッフの皆さん、Especiaを作ってくれた清水(大充 / つばさレコーズ)さん、本当にありがとうございました!」と、共に歴史を作ってきた仲間への感謝でコメントを締めくくった。
冨永、森、ミアは最後に3人だけで「くるかな」「ミッドナイト Confusion(PWE)」「No1 Sweeper(Necio Edit)」をパフォーマンスし、さらに「これがラストダンスです!」と、この日3バージョン目となる「No1 Sweeper」でフィニッシュ。「Especiaは解散しますけど、皆さんの中でEspeciaが生き続けることを願っています。これから先もEspeciaをよろしくお願いします!」という冨永の挨拶でEspeciaは最後のステージを終えた。3人が去り、バンドセットとヤシの木のみが残ったステージにはエンドロール映像が流れ、井上江玲奈、今井明香里、上坂みずき、井立田優香、杉本暁音、三ノ宮ちか、三瀬ちひろ、脇田もなりといった歴代メンバー、多数のスタッフや関係者、そしてメンバー3人の名が並ぶ。映像は「Les agradezco mucho a Pecisto & Pecista.」のメッセージを残して止まり、Especiaの歴史は幕を下ろした。
なおEspecia公式ファンクラブ「クラブ ロイヤルリゾート堀江」のオフィシャルサイトでは、ラストツアーの模様を追った写真が続々と公開中。また4月7日(金)放送のテレビ朝日系「アイドルお宝くじ」ではEspeciaのラストライブが紹介される。