激レア車! 日本には輸入もされなかった『サーブ・ヴィゲン・コンバーチブル』

テーマ=『デジタル×価』

“最強のよそ者”として、数々の業界でビジネスに変革をもたらし続けてきた伊藤嘉明が、”趣味も仕事もフルスイングする価値”について考える連載コラム『伊藤嘉明の「人生万事振り切るが価値」』。無類のクルマ好き、しかも日本には20数台しか存在しないサーブ『9-3ヴィゲン』のうち2台を所有することでも知られる彼が、ついに3台目のヴィゲンに手を出す……しかもこれまた驚愕の激レア車なわけで……。

サーブ・ヴィゲン三たびあらわる
しかもコンバーチブル仕様!

子供の頃、『大どろぼうホッツェンプロッツ』という本が大好きだった。

ドイツの児童文学で『大どろぼうホッツェンプロッツふたたびあらわる』『大どろぼうホッツェンプロッツ三たびあらわる』と3冊からなる大どろぼうと少年二人の物語。詳しく知りたければいつものようにググって……ではなく、図書館に行って探していただきたい。このタイトルの“ふたたび”とか“三たび”とかいう語感の響きが、なぜかわからないがとても好きだった。

オトフリート・プロイスラーというドイツ人児童文学者の作品だが、彼の名作のタイトルのおかげで、私もまた一つ振り切ることができた。ここに天国にいるプロイスラーに感謝の意を表したい。そう。そうなのだ! “サーブ・ヴィゲン三たびあらわる”! 見つけてしまったのだ! 日本に20台弱しかないヴィゲン……ではなく、日本には輸入もされなかった『ヴィゲン・コンバーチブル』を!

そうなると、もう神様の私へのメッセージはただ一つ。「買いたまえ!」 えーと……今回も行ってみよう、人生、万事振り切るが価値!
 

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世の中では車好きの人のことを“カー・マニア”という。ただし、この呼び方は実は正確ではないらしい。ここではクルマ好きな友人から聞いたウンチクをみなさんにも共有しよう。

私は過去にアウディ『A4 1.8ターボクワトロ』(当然マニュアル)を2回、サーブ『9000エアロ』も2回、ポルシェ『カイエン』もV6とターボSで2回所有したことがある。ただし、これらは所有した時期がずれているので、かの友人曰く、“単なるクルマ好き”にすぎない。正確には、同時に同車種を2台所有するのを“カー・マニア”というのだそう。そして3台を同時所有する輩が“エンスー”。そしてそれ以上を所有する上級カテゴリーな変態たちを“フリーク”というらしい。

“フリーク”とは、怪物とか化け物とかイカれた輩をさす言葉。サーブ車は今回で7台目。やはりこのサーブ車がもつ独特な佇まい、ジェット機から生まれ、数々の世界初のテクノロジーを生み、そして悲哀に満ちた歴史を持つ、トナカイの国からやってきた妖精たちにはどうしても惹かれてしまう。すでに潰れてしまったメーカーのためか、日本では超絶不人気車カテゴリーに属する名車たち……。嗚呼……。

車高を落として下をガリガリ…
でもヴィゲン救出の旅は続く

話を戻そう。それはとある夜、弟からメッセージが入ったところから。「ヤフオクに珍しいのが出てるよ」と。いそいそとヤフオクを開くと、そこには赤く輝く(レーザーレッドね♪)『ヴィゲン・コンバーチブル』の姿が!

普通のヴィゲンでも滅多に市場に出てこないのに、日本には正規導入もされていないコンバーチブル。ヴィゲンだから当然5速マニュアル。しかもレーザーレッド……。コメントでは自動車修理工場を経営する社長さんが、自分で乗るために数年前にアメリカから個人輸入した個体、とのこと。海外ならば私のヴィゲン仲間たちがフェイスブック上で喜んで(買わないんだけど)コメントしまくるだろうに、ここ日本では期限が来ても誰も入札すらせず、結局そのまま流れてしまった。毎晩毎晩、「誰がヴィゲン・コンバーチブルを落札するんだろう?」とワクワクしながら見ていたのに。

まぁ予想通りの結果だったのだが……。

流れたらこの私が引き取るしかない、と決めていたので、結局は冒頭に書いたように神様の声に従ったのだ。ということで、私の元に3台目となる(前に処分したヴィゲンを入れると4台目だが)ヴィゲンがやってきた。

レーザーレッド色は2001年に97台、2002年に29台のみ、アメリカ・マーケット向けだけに生産されたレアカラー。もしまたアメリカに住むことがあれば、「いつかはレーザーレッドの『ヴィゲン・コンバーチブル』が欲しいなぁ」と思っていたくらい私にとっては、非現実的な夢のようなクルマなのだ。そんなお宝が日本に、しかも神様の命令で私が面倒を見ることになるなんて、人生わからないものである。

……って、そこまで大袈裟なものか?? と抜かす輩、黙っていなさい。

そして出張明けの朝に自分で車庫証明を申請し、数日後には車高を落としてもらったカッコいい『ヴィゲン・コンバーチブル』がやってきた。あまりに嬉しくて、まだかなり寒いのに屋根全開で乗り回し、自宅のガレージに入れる時にガリガリッと……。やってしまいました!

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ただでさえフロントバンパーのクリアランスがないのに、車高を落としてあるもんだから、かなり派手に下を擦ってしまったのだ。こうやって原稿書きながらもまだ落ち込んでいるのだが、そんな憂鬱な気持ちを吹っ飛ばしてしまいかねない、とんでもない事実を発見してしまったのだ。

日本にはヴィゲン、青と黄色がそれぞれ16台、5台と輸入されているのは知っていたのだが、なんとシルバーが1台入っている、というのを海外のデータで見つけてしまったのよね……。ということで、私のヴィゲン救出の旅はまだまだ続くようだ……。

妖怪人間ベムじゃないけど、“早く人間になりたい”ならぬ、“フリークになりたい”。誰か私と一緒にサーブ救出ファンクラブ立ち上げませんか? ご興味のある方はデジモノ編集部「サーブを救おう会」までご連絡を。では御機嫌よう!

文/伊藤嘉明

※『デジモノステーション』2017年5月号より抜粋

連載バックナンバー: 伊藤嘉明の「人生万事振り切るが価値」

いとうよしあき/X-TANKコンサルティング 代表取締役社長。数々の外資系企業での事業再生、マネージメント経験を生かし、可能性のある組織や人材を有機的に結合させたり、資金を投入することで、日本国内はもちろん、生まれ故郷である東南アジアでイノベーションと変革を巻き起こす。著作に『どんな業界でも記録的な成果を出す人の仕事力』(東洋経済新報社)など。

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    伊藤嘉明

    いとうよしあき/外資系ブランドのPCを自衛隊に納入し、日本一の大型案件を成立させる。マイケル・ジャクソンの名盤『THIS IS IT』を約230万枚売り上げ、社会現象に。『R2-D2型移動式冷蔵庫』『ハンディ洗濯機COTON』という世界初の家電を世に送り出したビジネスマン。著作に『どんな業界でも記録的な成果を出す人の仕事力』(東洋経済新報社)など。